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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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お化け屋敷

【……それにしても、僕から尋ねておいてではありますが、少し意外でした。てっきり、屋台の方に赴くものかと】

「いやなんでですか。そんなに食い意地が張ってると思われているのでしょうか、私は」

【いえ、そういうわけでは。ただ、こちらを選択したのが少し意外と思っただけで】

「……ああ、なるほど」



 それから、10分ほど経て。

 いつもと違う華やかな廊下にて、他愛もない会話を交わしつつ歩みを進める。ほどなく到着したのは、三階に在する見慣れた教室――お化け屋敷が催される、二年E組の教室の近くで。



「まあ、確かに私自身、こういったホラーな場所はあまり得意ではありません。実際、昔テーマパークに訪れた時もお化け屋敷には足を踏み入れなかったと記憶していますし」

「……でしたら、どうして……」

「……まあ、それは……朝陽あさひ先輩と一緒だから、ですかね?」

【……へっ? ですが、僕はまだわずかしか陰陽道を身に付けていなくて】

「そんなの身に付けてたの!? あと、陰陽道そっちに関しちゃ何の期待もしてませんけど!!」



 その後、そんなやり取りを交わしつつ列にて順番を待つ僕ら。……えっ、違うの? 僕が呪術かなにかでお化けを退治するのを期待していたんじゃ……いや、例え出来てもしないけども。



 ともあれ、その後もほのぼのと会話を交わしつつ少しずつ進んでいく。そして――



「――次の方、お待たせしま……あっ、来てくれたんだ新里にいざとくん!」

「屋台お疲れ、新里! どうだった?」

【は、はい。ありがとうございます、福本ふくもとさん、石川いしかわくん。はい、西条さいじょうさんのお陰で、たくさんのお客さんが来てくださって】


 順番がきた僕らを見るやいなや、パッと笑顔を浮かべ迎えてくれる福本さんと石川くん。言わずもがな、お二人とも二年E組のクラスメイトで。……ただ、それはそうと――


「……しかし、それにしても……ほんと、見せつけてくれるよねぇお二人さん?」


 そう、何とも楽しそうな笑顔で告げる福本さん。いったい、何の話……なんて、流石に確認するまでもなく。間違いなく、メイド服を纏った後輩美少女が僕の腕を抱き抱えていることを言っているのだろう。……うん、ほんと恥ずかしい。



「――ふふっ、楽しみですね。朝陽先輩と、お化け屋敷デートなんて。どんなドキドキ展開が起こるか、今からもう待ちきれません」

【……あれ、得意じゃなかったのでは、お化け屋敷……まあ、楽しんでくださってるなら何よりですけど】


 その後、ほどなくして。

 そう、言葉の通り何とも楽しそうに話す織部おりべさん。催し物の性質上、ほぼ真っ暗なのでその表情は見えないけど、その声音からもおおかた想像イメージできる気がして。


 でも、彼女だけでなく僕も本当に楽しみで。当日のみんなの楽しみを増やす、という理由からお化け屋敷サイドの生徒は屋台の、屋台サイドの生徒はお化け屋敷の内容をそれぞれ知らない。つまりは、クラスメイトの催し物でありながら僕もその内容は全く知らないわけで。そして、福本さんも石川くんも自信作だと言っていたし本当に……まあ、そもそもクラスのみんなが頑張ってくれているんだし、それだけでも楽しめないはずないんだけども。




 ――それから、数十分経て。



「……あの、朝陽先輩。一つ、言いたいことがありまして」

【……はい、織部さん。何となく察してはいるつもりですけど、どうぞ】


 扉から出て少し歩いた後、比較的人のいない辺りでそう口にする織部さん。……うん、まあ何となく予想はついてるけども。ともあれ、僕の返答にそっと頷く織部さん。そして――



「――いやめちゃくちゃ怖いんですけど!?」



 そう、珍しく大声で放つ織部さん。間違いなく、頃合いを計っていたのだろう。流石に人の多いところでは叫びづらいだろうし。


 ともあれ、彼女の言葉には僕も全面的に同意で。……うん、ほんとに怖かった。これは自信作と言いたくなるよ。あの時は忙しそうだったから控えたけど、後でちゃんと感想を――



(……全く、作戦が台無しです。普通に怖すぎて、それどころじゃなかったですよ……)


「…………ん?」


 ふと、微かに届いた言葉。……作戦? いったい、何のこ……あっ、ひょっとして実は織部さんが僕を怖がらせようと画策を……うん、ありる。こう見えて、彼女は意外と子どもっぽ――



「……おや、どうしてでしょう。心做しか、私に対しものすごく失礼なことを考えている気がします」


 すると、ジトッとこちらに視線を向けそう口にする織部さん。……いや、失礼なことは考えてませんよ? むしろ、可愛いなと思ってるくらいで。


 


 


 

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