後輩との自由時間?
「――なるほど、そういうご事情で」
「ええ。まあ、時間の管理なんてほぼ意味を成さないですしね、私の場合。なにせ、一人で歩いていただけですし、そもそも休憩を特定の時間に指定すること自体がほぼ無意味でしょうし」
その後、ほどなくして。
ほのぼのと会話を交わしつつ、賑わう構内を歩いていく僕ら。今お話ししていたのは、織部さんの休憩時間について。どうやら、彼女に関しては休憩時間が固定されていなく、基本的には自身のタイミングで好きに取ってくれて良いとのこと。ここだけ聞くと、なかなかに驚きのお話だけど……でもまあ、そうなるのかも。今ご自身が言ったように、一人で構内を歩いている彼女の時間の管理なんて誰も出来ないだろうし、そもそも休憩時間を厳密に指定する意味もないのだろう。彼女の独立したこの役割であれば、他の生徒達との調整とかも必要ないわけだし。尤も、織部さんなら仮に休憩時間を指定されていたらきちんとその時間に取りそうだけども。
――さて、それはそれとして。
【――それでは、織部さん。早速ですが、どこか行きたいところはありますか?】
「……そうですね。ですが、私は朝陽先輩とであればどこでも構いませんよ?」
【……ふむ、でしたらやはり織部さんのクラスのメイドカ――】
「ああそれは却下で」
「却下で!?」
すると、僕の提案が終える前にバッサリ否定の意を述べる織部さん。いや却下あるの!? どこでも構わなかったのでは!? ……いや、もちろん良いんだけどね。僕とて、気の進まないところに無理に連れていきたくもないし。
――ただ、そうは言っても。
【……ですが、織部さん。いったい、どうして却下なのでしょう? 我ながら、寸分の隙もない完璧な提案だと思ったのですが】
「いやなんでこんな時だけ無駄に自信満々なのですか。あと、今更ながらさらっとスルーしましたよね? 私としては、わりと殺し文句のつもりだったのですが」
そう尋ねると、どうしてか何処か呆れたように答える織部さん。……ところで、スルーとはいったい何のことだろう? あと、殺し文句というのも――
「――いや、よくよく考えてみてください。自分のクラスの生徒にご奉仕を受けるとか、普通に居た堪れないでしょう。それも、おいしくな〜れ、などといった戯言つきで」
「いや戯言て」
いや戯言て。大丈夫かな? 目下それを唱えているであろうクラスの人達に聞かれたら怒られそうだけども。
ただ、それはそうと彼女の言い分は理解できる。確かに、自分のクラスと生徒となるとそのシチュエーションはとりわけ気まず――
「……それに、それ以上に……嫌、ですから。朝陽先輩が、他の女からあのようなご奉仕を受けるなんて」
「……織部さん」
すると、少し顔を逸らし呟くようにそう口にする織部さん。……ふむ、つまりは地味で陰キャラでコミュ障の僕なんかが大切なクラスメイトの皆さんからご奉仕を受けるなど耐え難い、ということだろうか。うん、そういうことなら――
【――あの、織部さん。でしたら、ここは一つ僕がご奉仕をする側に回って――」
「どういう発想!?」
【……ふむ、しかしそうなると果たしてどこに向かうべきか……】
「いや他にいくらでもあるでしょう。それとも、どうしてもメイドさんにご奉仕してもらいたいのですか? おいしくな〜れ、ぴえん、ぴえん、ぱおんと」
「そんな台詞だったの!?」
その後、歩みを進めつつそんな応酬を交わす僕ら。いやそんな台詞だったの!? 美味しくなるのそれ!? なんかしょっぱくなりそうですけど!!
「ともあれ、先ほどの話に戻りますけど他にいくらでもあるでしょう? 例えば、先輩のクラスの催し物など」
【………………なるほど、それは盲点でしたね】
「なんで!?」
すると、少し呆れた様子で提案をなさる織部さん。なるほど、それは盲点だった。うん、流石は織部さん。ふむ、そういうことなら――
【それでは、織部さん。僕のクラスなのですが――】




