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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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予定外の自由時間?

「…………さて、どうしようかな」



 それから、しばらくして。

 そう呟きつつ、賑わう構内を歩いていく。生徒はもちろん来賓の方々も多く、みんなの笑顔が弾けるその光景に改めて沁み沁みと嬉しくなる。


 さて、屋台はクラス内で幾つか出店していて、時間差で休業し自由時間を作るようにしている。そして、今は僕らの屋台が休業――そういうわけで、同じく自由時間の西条さいじょうさんは別のクラスのご友人と回っているようで。


 ところで、その西条さんなのだけれど……なんと、最初は僕を誘ってくれて。自由時間も一緒だし、良かったら一緒に回らないかと。だけど、そんな本当にありがたいご提案を申し訳なくもお断りし――そして、この暖かな光景の中を今、僕は一人で歩いているわけで。





『……その、ごめん新里にいざと! 急な話なんだけど、ちょっと色々あって自由時間がズレちゃって……その、ほんとにごめんね。折角、合わせてくれたのに……それで、もし良かったら――』



 数時間ほど前のこと。

 通話越しにて、言葉の通り甚く申し訳なさそうに告げる斎宮さいみやさん。お話によると、同じく接客を担当する生徒が一人病気にてお休みすることとなり、それでもどうにかすべく急遽みんなの担当時間などを色々と調整することとなったみたいで。

 だけど、当然のこと謝る必要なんて何処にもない。大変なのは、斎宮さんとクラスの皆さん――そして、一番辛いのはきっとお休みすることとなったその生徒で。折角、これまで頑張ってきただろうに……まあ、僕なんかに同情されてもという話ではあるのだろうけども。


 そういうわけで、僕は一人で回ることなったわけだけれど……さて、どうしようか。やっぱり、ひとまず自分のクラスの何処かに――



「――おや、どうしてお一人なのですか? 朝陽あさひ先輩」



 そんな思考の最中さなか、ふと背中に届いたのは聞き馴染みの声。そういうわけで、身体ごと向き直り――



【――こんにちは、織部おりべさん。……そして、とっても良くお似合いです。すっごく可愛いです】

「……おぉ、いきなりの殺し文句ですか。どんな反応をなさるか楽しみにはしていましたが、流石に予想外でした」


 そう伝えると、ふっと顔を背けそう口にする後輩の少女。……殺し文句? いったい、何のこ……まあ、それはともあれ――


【ひょっとして、今は宣伝中ですか? 織部さん】

「ええ。尤も、声を掛けることはしませんが。昨今、そういう行為は厳しく規制されていますから」

「……な、なるほど」



 すると、僕の問いにクスッと微笑み答える織部さん。まあ、確かに昨今はそういう――いわゆる客引き的な行為は厳しく規制されているけれども……えっと、学校ここでも? あと、たぶん禁止されてなくてもそういうの苦手だよね? 貴女。


 ともあれ、どうしてこんな問いを掛けたのかと言うと――彼女が、可愛いフリルのメイド服を纏いプラカードを掲げているからで。



「ところで、話は戻りますが――どうして、お一人なのですか? 確か、本日の自由時間は斎宮先輩と一緒に過ごすはずでは?」


 すると、ややあって再び問う織部さん。そうだ、そう聞かれてたんだった。そういうわけで――




「……なるほど、そういうご事情でしたか。それはそれはお気の毒に……ふふっ」

【……いや、お気の毒に思ってくださっているようには見えませんが……】


 その後、ほどなくして。

 僕の説明を聞き終えた後、何処か楽しそうにそう口にする織部さん。いや、全く以てお気の毒に思ってくれているように見えませんが……まあ、良いんだけども。哀れんでほしいわけじゃないし、むしろ笑ってくれる方がありがた――



「……ですが、そういうことなら……良ければ、一緒に回りませんか?」

「…………へっ?」








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