お馴染みの景色?
「……えっと、どっちだろ。あたしには、ほぼ同時に見えたんだけど……」
【……はい、僕もそう見えました。なので、VARにて正確な判定を――】
「ねえよそんな便利な制度」
それから、一週間ほど経て。
そんなやり取りを交わしつつ、再び下方へと視線を移す僕ら。そこには、既に止まっている二つのベーゴマ。さて、もうお察しかもしれないけど――ベーゴマで対決していたのだけど、どちらのコマが先に止まったのかの判断に二人とも困っているわけで。……うん、ほんと同時だったしね。
ともあれ、楽しい修学旅行が終わり再び楽しい日常へと戻ってきて……うん、やっぱり落ち着くなぁ。
「…………さっきから何やってんだ、お前ら」
それから、暫くして。
ふと、何処か呆れたような声が届く。まあ、実際に呆れているのだろう。と言うのも、あれからずっと二人して正座でコマを見つめ議論を重ねていたのだから。……うん、ほんと何をしてるんだろうね。まあ、それはともあれ――
【――こんにちは、日坂くん。はい、実は今この部屋にVARを導入すべきか議論を――】
「してねえよそんな議論」
そう、やはり呆れたような表情でこちらに近づく美少年へと告げる。すると、すぐさま隣の美少女からツッコミが入り……うん、やっぱり良いなぁこの雰囲気。
その後、日坂くんも参加してくれ三人でベーゴマの続きを。日坂くんが凄腕で連勝、そして斎宮さんが本当に悔しそうに……それでも、やっぱり楽しそうに……そんな、頗る和やかで微笑ましい時間を過ごしていると――
「――ご機嫌よう、先輩方。何やら、随分と楽しそうなことをなさっていますね」
ふと、扉の方から少し可笑しそうな声が届く。視線を移すと、そこには長い黒髪を纏う清麗な少女。そんな彼女に、僕は徐に近づいて――
【はい、良かったら一緒にしませんか? 織部さん】
そう、ベーゴマを差し出し告げる。すると、柔和に微笑みコマを受け取る織部さん。そう、あれ以来――おばあちゃんの退院以来、こうして再びこの部屋に来てくれるようになっていて。……うん、ほんとに良かった。
……ただ、ほんとに良かったのだけども――
「……へぇ、こんなふうに回すのですね。ありがとうございます、朝陽先輩!」
【……あっ、いえとんでもないです! ……あの、ですが織部さん、その……】
「……ねえ、織部さん。前から言ってると思うけど……ちょっと、くっつき過ぎじゃない?」
すると、僕の言葉を引き継ぐように告げる斎宮さん。そう、また来てくれるようになったのは本当に嬉しい。嬉しいの、だけど……
「……へっ、このくらい普通じゃないですか? 斎宮先輩だって、普段からこうしてるんじゃないですか? 朝陽先輩と」
「しっ、してないよ! ……したいけど」
すると、何処か不敵な笑みで尋ね返す織部さん。そして、そんな彼女に顔を赤らめ反論する斎宮さん。ここ最近、もう幾度もなされているやり取りで。
さて、状況を説明すると――再び教室に来てくれるようになって以来、どうにも織部さんがぐっと距離を縮めてきている感じがあって……主に、物理的に。
もちろん、これが心を開いてくれている証であれば嬉しい。とても嬉しいし、大変ありがたいことなのだけども……その、斎宮さんの視線が何とも……うん、困ったね。




