一番の思い出?
「――それで、新里は今日何が一番楽しかった? やっぱり、ガラス作り? すっごい集中力だったし」
【……うーん、そうですね。確かに、あれはものすごく没頭できました。ですが、次の機会があれば今回の反省を生かし改善を――】
「あれって完成形じゃなかったの!?」
【はい。やはり、あの綿菓子のクオリティーにはほど遠く――】
「あれを参考にしてたんかい!! ……いや、でもよくよく思い出せば似てたよね、あの孔雀に。ほんとよく作れたよね、あんなの」
指導員さんも本気でびっくりしてたよ――そう、柔らかく微笑み告げる斎宮さん。……ふむ、そう言われるとなんだか照れくさい。是非ともまたここに来て、今度はいっそう驚いて頂けるよう精進を――
「……うん、なんかそのうち世界進出とかしてそうだよね、新里」
【……へっ? ですが、ただいま大変な円安の最中であり渡航には莫大な費用が――】
「何の話だよ」
「……それで、話を戻すけどさ……結局、何が一番楽しかったの? やっぱり、ガラス作り?」
【……ふむ、そうですね……】
その後、ほどなく同じ問いを掛ける斎宮さん。……うん、そう言えばそういう話だったね。費用の心配をしててすっかり忘れ……いや、そもそも行く予定もないんだども、海外。
まあ、それはともあれ……何が一番、か。正直、一つを選ぶとなると非常に難しい。何が、一番……いや、そもそも――
【……すみません、斎宮さん。どうにも、どれが一番とかはなくて……だって、斎宮さんと過ごす時間は、僕にとって順番なんてつけられないほど全てがかけがえのない時間ですので】
【……はっ! いえ、その、今のは……】
その後、ややあって慌てて言い訳を試みる僕。……いや、出来てないけども。
ともあれ……うん、今のはまずかったよね。僕なんかがこんなこと言ったら、きっと気持ち悪――
「…………斎宮さん?」
ふと、そんな懸念が途切れる。と言うのも……どうしてか、彼女が完全に顔を背けていたから。いったい、どうし……あっ、そうか。僕の顔も見たくないほど気持ち悪かっ――
「……あっ、あたしも……」
「……へっ?」
「……あたしも、大切だから……その、新里との時間」
「…………へっ? あっ、えっと……ありがとう、ございます……」
すると、顔を背けたままそう口にする斎宮さん。……えっと、と言うことは……彼女も、僕と同じような……うん、夜なのに急に熱く――
その後、暫し沈黙――その後、暫し閑談に花を咲かせ旅館へと戻ると、生活指導の先生が仁王立ちで爽やかな笑顔をお浮かべに……うん、バッチリ怒られました。先生のお部屋にて、ひとまずは二人だけ正座でバッチリお説教を受けました。でも、その後それぞれの部屋に戻る最中、やっぱり怒られちゃったね、なんて二人笑い合って……うん、案外これが一番の思い出かも。




