……ああ、そうだ、僕は――
その後、和気藹々と会話を交わしつつエキゾティックで素敵な街を移動する僕ら。そして、暫し歩き到着したのは――
【……わぁ、すごいです斎宮さん! これぞ職人芸という感じで!】
「ふふっ、楽しそうだね新里。それに……うん、ほんとにすごいね」
思わず昂る僕の言葉に、少し可笑しそうな笑顔で答える斎宮さん。さて、僕らがいるのは琉球ガラス村――沖縄の豊かな自然、そして透き通る空や海の優しい色合いが特徴の伝統工芸品、琉球ガラスを制作する県内最大のガラス工房で。そして、なんとこの村の施設やオブジェなども琉球ガラスで作られていて……うん、ほんとすごいなぁ。
さて、琉球ガラスの制作には『吹きガラス工法』という製法が使われます。これは、溶けたガラスに吹き竿と呼ばれる竿で空気を送り込み形を作る製法です。ちなみに、細かいことを言えば調合、溶解、成形などの過程があるのですがここでは割愛致します。
ともあれ、早速プロの方々の指導を受けガラス制作の体験を開始。いやあ、これほんとに楽しみだったんだよね。さて、気合いを入れて頑張――
「……え、……い……と」
……ん、今なにか聞こえ……いや、気のせ――
「――ねえ、新里」
「はい僕は新里朝陽と申します!」
「……いや、知ってるよ? あと、珍しく長い文章言い切れたね、新里」
すると、我ながら謎の返答にふっと微笑み答える斎宮さん。……あれ、僕は、いったい……ああ、そうだ、僕は――
【……そうだ、僕はあの時、森の中でバタリと――】
「うん、違うよ?」
【…………へっ? ですが、斎宮さん。森の中で倒れていたのでなければ、どうして僕は今ここに――】
「うん、なんで今ここにいる原因がそれ一択なのかはさて措き……それにしても、ほんと集中力すごいよね新里。放っといたら、もういつまでやってることやら」
「……へっ? ……あっ、その、すみません!」
「ふふっ、いいよ。そもそも、別に責めてるわけじゃないし。ただ、純粋にすごいなぁって思っただけだから」
その後、ややあって慌てて謝意を告げる僕。と言うのも――ついさっきまで青かったはずの空が、今やすっかり茜色に染まっていて……うん、ほんとに申し訳ない。
【……ですが、斎宮さん。そのご様子から察するに、ご自身の制作のためというより、僕を待ってくれていたんですよね? だとしたら、やはり甚く申し訳ないと言いますか……】
「……ほんと、新里らしいね。別に、ほんとに気にしなくていいのに。それに……」
自分でもしつこいとは思いつつ、それでも再び謝意を伝える僕。そんな僕に、穏やかに微笑み答えてくれる斎宮さん。……うん、やっぱり優しいなぁ。ただ、そうは言っても随分と待たせてしまっていたはずなのでやはり申し訳なく――
(……それに、集中してる時の新里って……)
「…………ん?」
「……ううん、なんでもない」
すると、少し目を逸らしつつ微かな声で何かを言いかけていた斎宮さん。夕陽のせいか、その頬は赤く染まっているようにも……でも、どうしたのだろう。集中してる時の僕が、いったい……あっ、もしかして滑稽だったから笑いを堪えてたとか? なるほど、だったら口にするのを遠慮したのも頷ける。だとしたら……うん、気を遣わせてしまい更に申し訳ない。なので――
【……あの、斎宮さん。僕は、貴女に爆笑していただければ本当に嬉しく――】
「うん、何の話?」




