手強い綿菓子?
「あっ、見て見て新里! なんか孔雀みたいな綿菓子がある!」
【いえいえ斎宮さん、流石に孔雀みたいな綿菓子なんてそんな……いやほんまや!】
「お約束のノリツッコミ!? あとなんで急に関西弁!?」
【いやまあ、ここは京都ですしたまにはそれっぽい感じにしなくてはと】
「今更にもほどがあるよ!!」
その後、人混みの中をゆっくり歩みつつそんなやり取りを交わす僕ら。ともあれ、彼女が示した指の先には本当に色も形も孔雀さながらの綿菓子が……うん、ほんとどうやって作ってるんだろ。
――ともあれ、数分経て。
「……ねえ、新里。これ、どっから食べる?」
【……ええ、非常に悩みますね。ですが、あくまで気持ち的な話ですが、頭から食べるのはなんだか忍びないなと】
「……うん、だよね。まあ、気持ち的な話だけど」
ひとまず隅の方へ移動した後、仄かに微笑つつそんなやり取りを交わす僕ら。何のお話かと言うと、さっきの孔雀――折角なので一緒に分けようという話になり、二人で一つ買ったあのびっくり綿菓子をどう食べようかというお話で。
「……うーん、まあ、やっぱり羽?」
【……まあ、そうですよね。やはり、そこを初めに食べないと後が困難を極めそうですし】
「うん、だよね。まあ、味はものすごい未知数だけど」
ともあれ、一応は結論が出たので、それぞれ左右の羽を少しずつ手に取り食する僕ら。何ともカラフリーな色彩ゆえ、彼女の言うように味は相当に未知数なんだけども、果たして――
「……なんか、意外と普通だね。美味しいけど」
【……はい、意外と普通ですね。美味しいですけど】
そう、二人顔を見合わせ話す。うん、こう言ってはなんだけど……うん、意外と普通というか……まあ、美味しんだけども。だけど……それだけのことがなんだかおかしくて、どちらからともなくクスッと微笑んだ。
その後、二人で両側から千切っては食べ千切っては食べ、ついに――
「……ついに、ここまで来たね」
【……ええ、ついに……】
そう、真剣な表情で言葉を交わす。そんな僕らの前には、ほぼ頭だけが残った孔雀――まさしく、最後の難関で。……まあ、僕としては――
【……あの、斎宮さん。僕としては、残りは全て食べてくださっても――】
「いやなんでよ。あたしだけで食べるとか忍びないじゃん。あたし達、共犯でしょ?」
「……うん、ですよね」
そう尋ねるも、おおかた予想通りの返答が届く。……うん、ですよね。
ともあれ……さて、どうしようか。孔雀の顔は非常に小さく、ここで千切るときっと悲惨なことにある。なので、これをどうにか安全に二人で食すとなると――
「――ねえ、新里はどっちがいい? する方か、される方か」
【……っ!! ……そ、それは……】
そう、悪戯っぽく微笑み尋ねる斎宮さん。自身の唇に、そっと指を添えて。そんな彼女の仕草からも、流石に分からないはずもない……と言うか、千切らず二人で食べるなら、そもそもそれしかないわけで。
つまりは、どちらが先に食べるか――間接キスをする方か、される方かどちらが良いかと彼女は問うているわけで。……えっと、どうすれば――
「……まあ、それとも……ううん、やっぱなんでもない!」
「……へっ? あ、はい……?」
そんな逡巡の最中、ふと何か口にするも自身で引っ込める斎宮さん。どうしてか、その綺麗な頬が真っ赤に染まっている気がするけど……うん、灯りのせいかな?
ともあれ、最終的にやっぱり千切ろうという話になり、それぞれ歪な頭の欠片を食する僕ら。……うん、他になかったかな? もっとマシな表現。




