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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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66/110

昼休み

「午前の部おつかれさま、みんな。それじゃ、かんぱーい!」

「……いや、乾杯って……まあ、別に良いけど」



 それから、およそ一時間半後。

 水玉模様をあしらった可愛いシートの上で、ニコッとコップを掲げ音頭を取る斎宮さいみやさん。そして、そんな彼女に少し呆れたような微笑でツッコみつつコップを掲げる日坂ひさかくん。そして、あと二人――織部おりべさんと僕もそれぞれコップを掲げ、直後コツンと金属音が鳴り響く。


 さて、そんな僕らがいるのは、グラウンド隅の大きな樹の下――そこで、四人で昼食を取らんとしているわけで。



 ところで、この集まりは本日急に思い立ったわけでなく、数日前からもう話が成立していて。


 ある帰り道にて斎宮さんと僕がその話をし、それから日坂くんと織部さんも誘おうという話になり、斎宮さんが日坂くんを、僕が織部さんに声を掛け、二人とも快諾の意を示してくれたという流れで。



 ――ともあれ、楽しい昼食の時間が始まり数分後。



「――いやー、やっぱ完全に新里にいざとだよね! 前半のMVPは」

【……も、もうあれは忘れてください斎宮さん。僕はもう、極力思い出したくもありませんし……】

「……ったく、そろそろ揶揄からかうの止めてやれよ、夏乃かの。でも、新里もそんな恥ずかしがることねえよ。傍目からも、頑張ってたのは伝わってたし」

【……日坂くん……はい、生涯記憶に刻んでおきます】

「うん、前から思ってたけど、巧霧たくむのこと好き過ぎじゃない? 新里」


 これ以上、ライバル増やさないでよ――そう、額に軽く手を当て呟く斎宮さん。……えっと、ライバル? 斎宮さんと日坂は同じチームなのに、ライバルとはいったいどう……ああ、そうか。同じチームであり大切な仲間であっても、同時に切磋琢磨し合うライバルでもあるということか。流石は斎宮さん、いつ何時なんどきであっても向上心を忘れな――



「……うん、また何か変な勘違いしてそうだけど……うん、もう良いや。新里だし」



 ……ところで、それにしても――


「おや、どうなさいましたか朝陽あさひ先……ああ、ひょっとして見蕩れてました? 私が可愛すぎて」

【……あっ、いえ、もちろん織部さんはすごく可愛いのですが……その、見蕩れてたというわけでは……】

「……そ、そうですか……すごく可愛い、ですか……ふふっ」

「おいイチャつくんじゃねえよそこ」



 それから、10分ほど経て。

 隣におはする織部さんとそんなやり取りを交わしていると、夏の暑さも忘れるような冷気を放ちつつそう口にする斎宮さん。……いえ、別にイチャついていたわけでは……


 あと、じっと見てしまっていたのは織部さんだけではなく――


「……なんか、浮いてるなぁ僕……あっ、いえ……」


 思わず、ボソリと零れる。……しまった、口に出すつもりなんてなかったのに。

 ところで……浮いてるというのは、このシート内における僕の存在で。まあ、浮いてるのは今この場に限らずだいたいいつもなんだけど……それでも、きっと誰が見ても納得の美男美女が集うこのシート内にて、明らかに僕の存在だけが異質で――



「……なあ、夏乃。前々から思ってはいたけど……やっぱ、分かってねえのかな」

「うん、自己評価と周りの評価がこれほどかけ離れてる人もそうそういないよね」

「まあ、そこが朝陽先輩らしいというか、可愛いところでもあるんですけど」


 すると、ふとそんな会話が耳に届く。いったい、何の話なのかは僕に知る由もないけど……ただ、一つ分かることは――どうしてか、御三方とも僕に憐れみのような視線を向けていて……うん、どして?




 


 

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