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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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52/115

……流石に、ちょっと――

「――ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております!」



 それから、数日経て。

 休日の穏やかな昼下がり――琴乃葉月にて、朗らかに響く斎宮さんの声。厨房ここから表情は見えないけど、きっと声音こえに違わぬ晴れやかな笑顔を浮かべていることだろう。……うん、僕も頑張らなくちゃ!


 ところで、頑張るといえば……うん、流石にそろそろ接客もしなきゃだよね。うん、分かってはいるつもりなんだけど……その、まあ、近いうちに。




「お疲れさま、朝陽あさひくん、夏乃かのちゃん。二人とも、キリの良いところで上がってね」

「「はい、お疲れさまです蒼奈あおなさん」」

「ふふっ、いつも息ぴったりね」


 それから、数時間経て。

 窓の外が朱を帯びる頃、いつもながらの快活な笑顔でそう口にする蒼奈さん。偶然にも声が重なったけど、今はさして驚きもない。蒼奈さんの言うように、僕らにはわりとよくあることなので。


 まあ、それはともあれ……さて、キリの良いところまで終わったし、そろそろ――


「…………ん?」


 ふと、ポツリと声が。と言うのも……どうしてか、先ほどまでホールにいたはずの蒼奈さんが、僕のすぐ近くまで来ていたから。……えっと、いったいどうし――


 ……あっ、やっぱり残った方が良いとか? まあ、この後これといって用事があるわけでもないし、僕としては何の問題もな――



「……ふふっ、なんだか大変そうだね朝陽くん」

「…………へっ?」


 すると、不意に顔をそっと近づけそんなことを囁く蒼奈さん。そして、何とも愉しそうな笑顔で再びお疲れさまと告げ去って行き……えっと、なんだったのかな?





「…………ふぅ」


 ある休日の夜のこと。

 自室にて、だらりとベッドに仰向けになる私。夕方くらいまでバイトして、帰ってから少し休んで少し勉強、それから夕食を終え入浴――そして、今に至る。何かしら用事がなければ、これがあたしの典型的な休日の過ごし方で。



 ……さて、それはそれとして――


「……流石に、ちょっと焦るよね」


 そう、一人呟く。何の話かと言うと……まあ、言わずもがなかもしれないけど、の新入生――織部おりべさんの件で。


 うん、こう言っては何だけど……正直、自分の容姿にそれなりの自信はある。……うん、ほんと自分で言うのもどうかとは思うけど……それでも、それなりの自信はある。そして、それはあたしに対する周囲の評価を鑑みてもある程度の説得力はあると思う。


 ただ……それでも、あの子は流石に強く警戒せざるを得ない。正直……うん、相当可愛い。それはもう、ほんとびっくりするくらい。


 尤も、彼が容姿だけでその相手に惹かれることはまずないだろう。ないだろうけど……うん、なんか仲良さそうだったし。あたしほどでなくとも、なんか仲良さそうだったし……うん、今思い出してもモヤモヤして――


 ……いや、それはいい。良くはないけど、今はいい。それよりも――



「……負けないから……絶対、譲らないから」





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