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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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5/10

帰り道

「今日はありがとね、新里にいざと。いろいろ教えてくれて」

「……あ、いえ、その……」

「それにしても、ちょっと意外だった。だって新里、学校にいる時と全然違うっていうか、こんなにテキパキと仕事するんだなぁって感心しちゃった」

「……あ、その、あり……」



 それから、数時間経て。

 茜色に染まる空の下、隣を歩きながら話し掛けてくれる斎宮さいみやさん。一方、僕の方はというと……相も変わらず、返答もままならなくて。


 そもそも、どうして彼女が僕なんかの隣を歩いているのか――それは、どうやら途中まで帰り道が同じみたいだから。同じ時間に終わり、どうせなら一緒に帰ろうとなんと彼女の方から提案してくれて。


 蒼奈あおなさんの話によると――数日前、営業後に斎宮さんが訪ねてきたとのこと。是非、こちらで採用して頂けないかと。その際、彼女の話を聞いたご夫婦が、後日蒼奈さんが面接をする旨を伝えたとのことで。

 まあ、蒼奈さんが言っていたように、その時点でご夫婦の中で既にほぼ採用は決まっていたのだろうけど。それでも、敢えて蒼奈さんに面接を任せたのは……うん、きっとご夫婦なりの理由があったのだろう。


 ただ、それにしても……希望先に直接訪れるというのは、今時なかなかに珍しいのでは……いや、でも仕方なかったのかな? 繰り返しになるけど、琴乃葉月は基本アルバイトを採用していない――従って、当然ながら現在の主流であろうネットからの応募は不可……ならば、直に希望を伝える他方法がなかったのかも。


 ともあれ……だとすると、彼女もこの暖かな古民家カフェが好きでよく訪れていたのかな? ……でも、少なくとも僕は見たことがない。お客さんとして来る時も、勤務している時も。……まあ、勤務中はほぼ厨房にいるので、どんなお客さんが来店なさったのか実際にはあまり知らないのだけど……それでも、一度も見かけたことすらないのは少し不思議な気がしなくも……いや、そうでもないかな?


 ただ、それにしても……驚いたのは、面接したその日にすぐさま斎宮さんの勤務が始まったこと。事前にほぼ採用が決まっていたとは言え、そうそうある場合ケースではないと思うのだけど……いや、あるのかな? 単に、僕が知らないだけで。


 ともあれ、僕の休憩時間が終わるとほぼ同時、斎宮さんと共に厨房に入ることとなった。先輩としてしっかり教えてあげてね――そう、何故か軽くウインクをしつつ僕に告げる蒼奈さん。……えっ、僕ですか? ご存知かと思われますが、話せないですよ、僕。


 だけど、そんな僕の困惑もお構いなしにお客さんの対応へ戻る蒼奈さん。そして、学校での僕に対する様子とは違い、控えめに『よろしく』と呟き軽く頭を下げる斎宮さん。……うん、どうやら僕が教えるしかないみたいです。……出来るかな?



 さて、結論から申し上げると一応はどうにかなった。会話どころか、ほとんど声すら発せない僕を知ってくれているからだろう――僕からは紙に書いて伝えてくれれば良いと、斎宮さんの方から言ってくれたから。……うん、本当にありがとう、斎宮さん。


 そして、斎宮さんも家で料理をする機会は多いみたいで、初日ながらもうほとんどのメニューを作れるようになっていた。この分だと、僕の教えが要らなくなるのも時間の問題だろう。そして近いうちに、厨房を一人で担当するようになって――


 ……あれ、そうなると僕、不要になるのかな? 斎宮さんならきっと問題なく接客も出来るだろうし、間違いなく大きな戦力になる。更には、彼女に会いに来店なさるお客さんもきっと多く現れる。そうなると、調理しか出来ず集客能力も皆無な僕は、必然そのうち不要に――



「――ねえ、新里。今、ちょっと時間あったりする?」  


「…………え?」





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