アルバイト希望の子
「――あ、そうだ朝陽くん。今日、アルバイト希望の子が面接に来るんだ。君と同じ、高校一年生の」
「……へっ、そうなのですか?」
休憩に入りほどなく、先ほどお願いした野菜サンドとブレンドコーヒーをカウンター隅――僕の座る前にそっと置きつつ、何処か愉しそうな笑顔で告げる蒼奈さん。ちなみに、こちらでは勤務日に無料で賄いを提供してくださるので、お財布的にも本当に助かります。それも、いつもすっごく美味しくて……うん、休憩後も頑張らなくちゃ。
――ところで、それはそれとして。
「……あの、蒼奈さん。ですが、どうして突然……あっ、いえ駄目というわけでは全然なくて!」
「ふふっ。そんなに焦らなくても、ちゃんと分かってるよ朝陽くん」
一人慌てて弁解する僕に対し、少し可笑しそうに微笑み答える蒼奈さん。……ふぅ、良かった。
どうして――というのは遠回りに不満を示したわけでなく、本当にただ疑問に思っただけ。と言うのも、当カフェ――琴乃葉月では、基本的にアルバイトを募集していないから。
尤も、繁盛期などのどうしても人手が必要な時に限り臨時で数名ほど募集をかけることもあるみたいだけど……基本的にはご夫婦と蒼奈さん、そして今年から僕を含め四人で回している。……うん、ほんと、どうして雇ってもらえたんだろう、僕……いや、当然ながら感謝しかないんだけども。
ともあれ――そういうわけで、僕の時と同様これは例外的な場合と言える。なので、どういう理由があるのか聞いてみたかっただけで――
「――まあ、面接って言っても採用はほぼ決まってるみたいだけどね。だから実質、今後の勤務についての相談だけになるんじゃないかな」
「……え、あ、はい……」
すると、軽く人差し指を立て話す蒼奈さん。そして、そんな彼女に困惑気味に答える僕。
とは言っても、話の内容自体に戸惑ったわけじゃない。ただ、先ほどから気になってはいたんだけど……どうも、蒼奈さんの笑顔が何処か意味ありげな――
「――申し訳ありません! 大変遅くなりました!」
「ううん、全然気にしなくて良いよ。ちゃんと事前連絡はもらってたし、それに大変って言うほど遅れてないし」
卒然、慌てた様子で扉を開き謝意を伝える女の子に、いつもの快活な笑顔で答える蒼奈さん。二人の会話から察するに、アルバイト希望の子とは彼女のことで間違いないだろう。
……ただ、それはそれとして――ただただ、僕は呆気に取られていた。何故なら――
「――斎宮夏乃ちゃん、だよね? それじゃ、今から面接するからこっちに――とは言っても、もうほとんど採用で決まりだから気楽にしてね」
「あっ、はい、ありがとうございます!」
そう、声を弾ませ答える彼女は――僕のクラスメイトであり、学年でも評判のあの美少女だったから。




