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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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聞いてない?

「……あとさ、新里にいざと。さっきから気にはなってたんだけど……そのコンビニ袋にちょっと見えてる、菓子パンとパックみたいなのって……」

【はい、あんぱんと牛乳です。張り込みといえば、やはりこの二点は必須でしょう? あ、もちろん斎宮さいみやさんの分もありますよ。つぶあんとこしあん、どちらが良いですか?】

「うん、とうとう張り込みって言っちゃったよ……まあ、折角だしありがたく頂くけどさ。こしあんで」


 すると、少し呆れたように微笑み僕の手からあんぱんと牛乳を受け取る斎宮さん。そっか、斎宮さんはこしあん派なんだ。


 それから数分、狭い段裏の下に隠れたまま息を潜める僕ら。……えっと、会長さんが降りてくるまであと3分くら――



(……それにしても、この状況……こう、ちょっとくらいラブコメ的な何かがあっても……)



「――いや聞いてないんかい!!」

「…………え?」

「いや『…………え?』じゃないよ!! 聞こえないパターンもあるとか聞いてないんだけど!?」

【……えっと、申し訳ありません。幾分、集中していたものでして。それで、どうなさいま……いえ、そうではないですね。えっ、なんて?】

「いや律儀に再現しなくていいから!! というか、よく覚えてたねあんな戯言ざれごと。言ったあたしですらほぼ忘れてたんだけど」

【まあ、今までの斎宮さんとのやり取りはほぼ全て脳内こちらに保存されていますので】

「反応に困るよ!!」


 そう、鋭くツッコミを入れる斎宮さん。……それにしても、結局何と言っ……いや、まあいっか。大事なことなら、そのうちまた彼女の方から言ってくれるだろうし。それよりも、今は会長さんの方に集中集中。



 それからおよそ5分後、郁島いくしま先輩と副会長の岩崎いわさき先輩が共に階段からおりてきた。……ふーむ、やはりまだ精度が足りないか。もっと精進せねば。


 ただ、それにしても……分かってはいたけどやっぱり綺麗だよね、郁島先輩。それこそ、うっかり惚れてしまうくらいに。鮮やかな亜麻色のマッシュヘアに、水晶のように透き通……あれ? ……いや、流石に気のせ――



「――ねえ、新里。今日限りで、張り込み禁止ね?」

「…………へっ?」


 一人思考に沈んでいた最中さなか、不意に斎宮さんの言葉で現実へ戻る。……へっ、どうして急に……ああ、そっか。そりゃあ嫌だよね。こんな狭い空間に、それも僕なんかと二人で居続けるなんて。それに、万が一にも新里菌が伝染うつる可能性も完全にないとは言えないし。

 ……だけど、それなら僕一人で行動すれば良いわけだし、そもそもそのつもりだった。なので、張り込み自体を禁止する理由まではないように思――



(……だって、あんまり相手してくんないし……)



「――いや聞けよ!!」

「ええっ!?」

「絶対禁止!! 金輪際、張り込み禁止だから!! 分かった!?」

「……え、あ、はい……」


 どうしてか、頗る色をなした表情で捲し立てる斎宮さん。ある程度声量(こえ)を落としているとはいえ、流石に気付かれないだろうか……あ、会長さんいなくなってる。






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