ご縁のない空間?
――それから、数日経て。
【……あの、斎宮さん。重ね重ね、同じ質問をして申し訳ないのですが……その、本当にそのような場所に僕が訪れるのでしょうか?】
「うん、重ね重ね同じ返事をするけど、もちろん貴方が行くんだよ、新里。まあもちろんあたしも一緒に行くけど、あくまで今日のメインは新里だから」
【……あの、ですがですが斎宮さん。あくまで、僕個人のイメージではあるのですが……あのような場所は、大変リアルが充実した、いわゆるリア充と称される方々ご用達のレジャー施設なのでは……】
「あれってレジャー施設だったの!? 一度もそんな認識したことないんだけど、あたし!!」
放課後、帰り道にて。
いつもながらメモ用紙に記した僕の言葉を読み終えるやいなや、大きく目を見開き言い放つ斎宮さん。
……いや、正確には帰り道でもないか。何故なら、僕らが今向かっているのはそれぞれの自宅ではなく、僕には全くといって縁のないお洒落な方々が集う美と容の空間――美容院なのだから。……うん、我ながら説明がひどい。なんだろうね、美と容の空間って。
――そもそも、事の発端はというと、
『――突然だけど、今日は美容院に行くよ新里!』
『…………へっ?』
数十分ほど前のこと。
一年A組の教室を後にし、暫し歩みを進めた辺りで不意に斎宮さんから告げられた言葉。てっきり、今日も例のごとく空き教室に向かうものかと思っていたので驚いたけど……更に驚愕だったのは、その目的が斎宮さん自身でなく僕――どうしてか、彼女行きつけの美容院にて僕を変身させようとの魂胆らしいのだ。……なんで?
もともと素材は良いから、ちゃんとお洒落をすれば確実に化ける――それが、彼女の言い分だった。……素材が良い? ……僕が? いやいや、それは僕なんかじゃなく斎宮さんや郁島先輩のような方々を表す言葉で……いや、そもそも二人はお洒落でもあるか。
ともあれ、既に僕の名前で予約済みとのこと。そして、かくも直前に話したのは僕に逃げる余地を与えないため。予定時刻までおよそ一時間という、直前も直前といえよう状況でのキャンセルなんてお店の人に申し訳なさ過ぎて僕には出来ない――そう勘案しての、彼女の判断だったらしい。……まあ、どのみち断れなかったと思うけど。
【……ですが、斎宮さん。実際のところ、僕のような陰キャラのぼっちがそのような施設にお邪魔しても良いものでしょうか? ひょっとしたら、看板に『リア充にあらずんばこの門をくぐるべからず』といった文言が掲げられている可能性も……】
「いやないよ!! あたしの行きつけを勝手に平家一門にしないでくんない!?」
僕の懸念に、心外とばかりに大きく目を見開き反論する斎宮さん。あ、ないんだ。……まあ、僕も見たことないけど、そんな看板。
そんなこんなで、馬鹿みたいな応酬を交わすこと数十分。到着し最初に目を惹いたのは、なんとも流麗な筆致で『三友』と描かれた看板――そして、白を基調とした見るからにお洒落な美と容の……うん、それはもう良いよね。




