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さまざまな短編集

砂嵐の逆転

作者: 仲村千夏

 乾いた風が砂原を吹き抜け、戦旗が揺れる。前方には敵の大軍が広がり、数だけなら自軍の三倍に及ぶ。将兵の士気は徐々に沈みかけていた。


「ここで止まれば、全滅だ」

 万能型軍師カイ・デュランは遠巻きに戦場を俯瞰しながら、冷静に分析した。兵力差、地形、補給線──どれも厳しい。しかし目を細め、奇策型の軍師フロスト・リーヴァーの姿を探す。


 フロストは既に小高い丘の陰に伏せ、手元の地図に指を滑らせている。彼の眼差しには戦場を読む興奮が滲んでいた。


「カイ、この砂嵐を利用して敵の右翼を切り崩せる」

 フロストは笑みを浮かべながら囁く。砂嵐で視界が遮られる間に、彼の精鋭部隊が敵陣深くに潜入する計画だ。

 カイは地形図を見つめ、冷静に頷いた。

「成功すれば、敵は分断される。だがリスクも大きい。撤退路と連絡手段を確保しろ」


 兵たちは準備に入った。砂塵が舞い上がる中、フロストの指示で小隊が密かに敵陣の後方に回り込む。前線ではカイの策による正面防御が整い、敵の進軍は鈍る。


 砂嵐の中、フロストの部隊が奇襲を開始。敵の旗印が次々と乱れ、混乱が走る。正面の敵は背後からの攻撃に気を取られ、指揮系統が崩壊し始めた。


「今だ!」カイが号令をかける。全軍が前進し、敵の混乱に乗じて反撃を仕掛けた。前線の兵たちはフロストの奇策による優位を感じ取り、士気は最高潮に達する。


 数時間後、砂嵐が収まると、戦場には自軍の旗が翻る光景が広がっていた。戦術の天才と総合参謀の協力が生んだ、逆転の勝利だった。


 フロストは砂塵まみれになりながら笑う。

「ほら、言った通りだ」

 カイは微笑みつつ地図を閉じた。

「君の奇策は見事だった。しかし、これを全体戦略に組み込むのが私の役目だ」


 砂嵐の向こうに夕日が赤く染まる。二人の軍師は肩を並べ、次なる戦いの布石を考えていた。

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