表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

ep.23 さすらい

 幕末の京都──。

 とある姫君が家来の担ぐ駕籠かごに揺られて、夕暮れの市中を移動していた。

 暫くして人気のない道へ差しかかると、正面に男の人影が現れた。

 担ぎ手の男達が警戒して足を止めると、正面の男は黙って刀を抜いた。


「なんだ貴様! 名を名乗れ!」


「おいらぁ、人呼んで人斬りの殺生丸」


「殺生丸!? 貴様が噂の……」


 担ぎ手の男達は、護身用の刀を抜いて身構える。

 しかし、その抵抗は人斬りの前では無意味に等しい。


「うわぁぁぁ」


 男達は次々と斬られていった。

 そして遂に、駕籠に乗っていた姫君だけが残った。


「あなた……わたくしが誰か、分かった上での振る舞いですの?」


「もちろんだぜ? シャルロット様。あんたは大名家の姫君。つまり、おいらにとっては打出の小槌ってことよ」


「くっ、わたくしを拐って身代金を要求するつもり……? この金の亡者!」


 男はせせら笑った。

 ひもじい借金まみれの生活。それがこの男の原動力だった。


「くくく、ここで死にたくなきゃ、言うとおりにするんだなぁ」


「ひどい。ひどいです……。シクシク」


 そして、殺生丸がシャルロットの方へ近づこうとした時、彼の前にスッと何者かが割り行った。


「誰だてめえ」


 小柄な男は腰の刀に手を添えて答えた。


「べつに名乗るほどの者じゃないよ。拙者は、さすらいのガブリエル。小さな旅人サムライさ」


「……」


「あれ、急に大人しくなっちゃって。さっきまでの威勢はどうしたでござる!」


「おいぃぃ! 人がびびったみたく言うんじゃねーよ! ツッコミたくないだけぇ!!!」


「ガブリエル様! どうか、わたくしを助けて下さい! 御礼ならいくらでも致します!!!」


「承知。じゃあ、いくよ?」


 二人は互いに深く身構えると、間合いを探りあった。

 互いにピタリと静止した直後、磁石のごとく衝突した。勝負は一瞬。


「き、切れねぇ……」


 そう言って倒れたのは殺生丸の方だった。


「残念。僕、硬いからね」


 無傷のガブリエルは、刀を鞘に納めた──。


***


 翌日、ガブリエルとシャルロットは、小さな茶屋で小休止していた。

 

「ガブリエル様は、拠り所がないのですよね……? もしよろしければ、わたくしのお屋敷に来ませんか……? わたくし、その……」


 シャルロットは命の恩人に好意を寄せていた。

 高貴な家柄に生まれ、お金に困ることは一生ないが、激動の時代を生き抜くには、ガブリエルのような逞しさが必要だし、惹かれるのだ。


「シャルロット殿の気持ちは嬉しいでござるよ。でも──」


 ガブリエルはお茶を飲み干すと、静かに立ち上がった。


「拙者は、さすらい。あてもなく、また旅に出るでござるよ──」



──完。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ