それでも旨い!怠惰な親子丼
遅れたぜ!
前回は、一回休憩した話でしたね!
もしかしたら、前回だけでも読み直した方が入りやすいかも?
とりあえず、今話よろしくお願いします!
何の感覚に近いのだろうか。
そう、例えるなら普段料理している人が、高級料理店のシェフや凄腕料理研究家の手さばきを見て、すげぇ……ってなる感覚に近いだろう。
少なくとも僕はそうだし、隣で同じ顔をしているセランもおそらくそんな感じだ。
そして、ハッとしたように元に戻り───
「よっよろしくお願いします!セランです!」
頭を下げる。
僕も軽くであるが同じように。
「コウキですお願いします」
名前を言った途端、セリナークさんは何か腑の落ちたような顔をした。
「ああ、あなたが……とりあえず、中へお入りください」
御車の扉を開け、左手で中へと導く。
流されるままに、アルバ、セランが中へ。
僕も乗ろうとした時、ふと頭に違和感が。
直感に従うように運転席に目をやる。
どこから言えばいいのかわからないくらい、ハチャメチャに快適そうに改造されている。
(まあお尻痛そうにしとったし……あんぐらいええか)
僕が口を出すようなことでもないだろう。
とりあえず、考えないようにして馬車に乗った。
◇◇
運転を再開して恐らく30分ほど。
といっても、街中で速度は出せないし、門番で時間を食ったから、外を出てそこまでは来ていないけれど。
馬の音と辺りにいる虫の鳴き声だけが聞こえる。
隣に座る子は、静かに本を読む。
静かな時間も嫌いじゃないけれど、流石に何か話したい。
「ねえアデリアちゃん」
「はい」
本を閉じ、こっちを見るアデリアちゃん。
「もしかして、緊張してる?」
あの魔王様を乗せているし、運転手は私たち。
私は内心、少し重荷を背負わせてしまったのかもと思っていた。
「……正直、かなりしています」
「それはそうよね、ごめんね?」
「いえ、魔王様のお送りする機会に誘っていただき、とても光栄です」
言葉に距離を感じる。
でも、多分きっと避けられてるわけじゃない。
本当に光栄だと、思っているのだろう。
なんたってあの魔王様の護衛兼運転だ。
「そう、ならよかった。でもね、そこまで考えなくていいと思うわよ」
「はい?」
何を言っているのかわからないような顔。
「魔王様ってね、ものすごく優しいの。いや、ちょっと違うわね、心が広いっていう方が合ってるいいのかしら。ともかく、そこまで小さいミスしても多分、なーんにも思われないわ」
「いやでも、気にしにしないからって……」
「まあ確かにそう。心が広いからって、ミスしていいってわけじゃない。でも、ミスしちゃだめだって思えば思うほど失敗しやすくなるの。これは、人間だって魔族だって、魔王様だってそうよ。だから、そこまで考えずにリラックスしましょ?」
そういって、優しく背中触る。
「はい、わかりました。ご助言、ありがとうございます」
私に一礼。
礼儀の教科書があったら載せたいくらい、きれいなお辞儀だ。
「ふふっ私にも固くしなくていいのに」
「……頑張ってみます」
言葉がちょっと柔らかくなったような。
なんだか嬉しい。
「あ、あと2時間したら代わってくれる?」
「はい」
そんなことを話しながらでも、馬車は進む。
まだ見えぬコウキの実家、ストレア領に向かって。
◇◇
「あぁ~」
そんな声と、ため息が漏れてしまう。
何やら、書類に記載している正面のアルバ。
話しかけない方がよさそうだ。
「もぉさっきから多いよ?」
左から、不満めいたセランの声。
「でも暇ー」
かれこれ2時間。
ずっと同じ部屋、ほぼ同じ景色だ。
そんな声が漏れてしまっても仕方ないだろう。
しかし、運転してもらっているのだ。
感謝を忘れてはいけない、そう心にとどめなければ。
「んー何かあるかなあ……?あっ漫画ならあるよ」
「まじ?じゃあそれでー」
そういって、空間収納からとある漫画を取り出す。
その表紙には、でかでかと
『異世界プロレタリア革命記』
そう書かれている。
(いや異世界でも異世界系流行っとるんか)
顔には出さずにそう思った。
「……どういう漫画?」
冊子を手に取り、まじまじと見つめながら聞く。
「えっとね……長いよ?」
「まあええよ別に」
「かつて極左冒険主義と言われながらも諦めず、自分思想を信じて活動していたフラレア・レボルが、新しく就任した大統領によって処刑されちゃうの。それで、目が覚めたら異世界にいてね、その世界はほとんどの国家がごく一部の資本家によって支配されて、ほとんどの労働者や国民が苦しんでるの。そんな中、思想家かつ革命家としてフラレアが立ち上がって、転生した時のスキルを活かしながら世界に労働者、プロレタリアの波を起こす!っていう話なんだけど……」
本当に長かった。
「なんか……お前上手くない?」
聞いているだけでわかる。
多分これはかなり複雑な話だ。
なのに、長いとはいえこんなにわかりやすくまとめるとは。
こいつが前世にいたなら、YOUTUBE大学をするべきだ。
「ええそう?多分僕が好きだからかなあ」
恥ずかしそうに頬を掻くセラン。
「なんか、読む人が読んだらドハマりしそうやわ」
「ほんと!?じゃあ読んでみてよ」
「おん」
そう言われ、僕は読み始める。
絵がかなり上手い。
なんというか、線が細くてリアル感と二次元さを両立しているというか。
これはなかなか面白そうだ。
◇
読み始めて10分。
聞いている段階でわかってはいたが、面白い。
面白いのだが……なんというか、僕には合わない。
だからか、眠くなってきた。
声がでない大きなあくびをする。
「……面白くなかった?」
申し訳なさそうなセランの顔。
「いや、おもろいよ。でも多分、僕に合わんかなって」
「そっか、ごめんね」
困った風に笑う。
「いや、べつにええよ。それよりさ、眠いけん膝貸して」
「え?」
頭が追いつかないセランを無視して、頭を隣の太ももに預ける。
「ええー、こういうのって男女でやるやつだよ?」
「まあええやんけ、こっちは眠いのだよっ」
「んーまあ、べつにいいけどさ……」
ちょうどい具合に夕日が差してきた。
外からする車輪が回る音。
運転チームは今も懸命に働いているみたいだ。
今はそんなことどうでもいい。
目を瞑り、僕は暗い世界に身を預けた。
◇◇◇
コウキ君が寝てから大体2時間。
もうすっかり夜だ。
そんなことを思っていると、不意に御車の扉が開く。
「失礼します。そろそろ休憩を取ろうかとおも……あらっ」
僕の膝で眠るコウキを一瞥し、すぐに僕の方へと目をやるリセリナさん。
僕は口に指を当て、静かにするようお願いする。
わかってくれたのか、声のボリュームを小さくして話してくれる。
「(休憩なら、好きにしてよいぞ)」
「(はい、ありがとうございます。ごめんね?邪魔しちゃって)」
申し訳なさそうに笑う。
「(大丈夫ですよ。それより、何か作りましょうか?)」
「(いいの?じゃあ、おねがい)」
とはいったものの、空間収納はその人の魔力量に依存する。
僕程度じゃ、食材や調理器具、本とかを入れるのでせいぜいだ。
コンロや台なんかは入れられない。
「(台やコンロはこっちで用意するから)」
「(ありがとうございます!)」
ゆっくり馬車が止まり、リセリナさんが出た後、結構大きい台のあと、置かれる3口コンロと明かり。
「じゃあ、よろしくね!アデリアもお腹空いてるみたいだから期待してるよ!」
「はい!任せてください!」
一回やってみたかった、青空クッキング。
とはいえ今の空は青というか、紺色だけど。
一旦深底のフライパンと土鍋を取り出し、コンロに置く。
早速、お米に魔法で作った水を入れ、洗って捨てるを5回ほど。
6人分だから、6合。多いししっかり洗わなければ。
洗った米を水につけて、30分待つ。
その間にまな板と鶏もも肉、玉ねぎ、鰹節を出して、切っていく。
鶏もも肉は一口大、玉ねぎは細切りで。
フライパンに中火をかけ、温まってきたら油を敷く。
そろそろ大丈夫かなという所で、鶏もも肉を皮を下にして敷いて、玉ねぎも上から入れる。
本当は別々にやった方がいいらしいけど、面倒くさいしあまり変わらないと思うから一緒にやってしまおう。
お肉が縮んで焼き色がついてきたと思ったら裏返して、隙間に玉ねぎを入れて、そこからお水を追加。
だいたい、お肉が浸かるくらいだけど多分350mLとかだろう。
沸騰したらそこに、醤油大さじ4,みりん8,白だし2と、鰹節20gくらいをすりつぶして入れていく。
一旦味見。
「んー……濃いけど卵の水分とかあるし……大丈夫でしょ」
そして卵を出そうとするが、今で大体30分くらい。
お米の水を一旦捨て、土鍋にお米と6合分の水。
今回は具の水とかも入るので少なめでいこう。
流石にこのサイズでやったことないからわからないけど、6合は強火だろう。
それで沸騰させたら蓋をして、15分間弱火に。
その間に、卵を割っておこう。
お肉が6人分だから、多分6個とか。
一個割ったら入れて蓋をして、また一個割っていれて蓋をして……
ってやるべきらしいけど、今回は3個の2回わけで行こう。
3個割って器へ。
白身が一緒にならないぐらい、軽くかき混ぜたら弱火にしてフライパンへ。
また3個割って混ぜる。
多分これくらいでちょうどいいタイミングだろうから、待つとかせずに蓋を開け、入れて、待つ。
この辺は人の好みだけど、しっかり固まってからにしよう。
半熟になってきた頃、お米もそろそろいいだろう。
土鍋の蓋を開けると、お米の水気はすっかり取れている。
ここで強火に変えて10秒。
そしたら蓋をして、弱火に変えてまた10秒。
これも終わったら、火を止めて20分蒸らす。
その間に、お肉の方も確認しよう。
蓋が曇っていてよく見えないけど、丁度いい具合だ。
だけど心配だから、もう少し火を入れて……大体2分とかでいい気がする。
2分後、いったん火を止めてしばらく余熱ゾーン。
そしてまた3分くらい待ったら、蓋を開ける。
あとはお米だ。
そこから大体15分。
土鍋を開けると、なんともまあいい香りが。
そしたら丼を6つ取り出して、お米を敷く。
その上からフライパンの方で作ったものを入れて、親子丼完成!
◇
いい匂いが鼻に馴染んだ頃だった。
「できましたよ!はいっ」
リセリナ様の手へ丼が届く。
それを私に渡してくれた。
「いいのですか?」
そう言いながらもしっかりと受け取る。
人間からしたら人によっては熱いだろう温度。
「いいのよ」
「リセリナさんも、どうぞ!」
同じ丼がリセリナ様の方にも。
もう、匂いだけでお腹が鳴ってしまう。
「やっぱりお腹空いてたのね」
「……申し訳ありません」
同性とはいえ少し恥ずかしい。
「はい!これアルバ君の!」
「うむ、感謝する」
「コウキ君!ご飯できたよ!」
後ろからそんな声が聞こえる。
次に聞こえてきたのはもぞもぞと擦れるような音。
「ん……んん……あーよぅ……」
「はいおはよっ!親子丼だよ!」
「まじ?やったー…」
コウキ殿の声はまだ覇気がない。
そんなことより、今手にあるこれを早く食べてしまいたい。
「あっもう食べてていいですよ!」
中の声を合図に、リセリナ様の顔を見つめる。
「ええ、食べてしまいましょ」
その言葉で、私たちは同時に頬張る。
下に広がる肉の旨味、他の甘味、塩気。
それだけではなく、それらを包み込むようなふっくらとしたお米の食感。
噛み進める度、あらゆる味が味覚を刺激する。
それらが私の頬を緩むのに申し分はなかった。
「ふふっあなたもそんな顔するのね」
なんだか恥ずかしい。
別に隠しているわけではなかったが、心の中を覗かれたような感覚だ。
「あらごめんなさい、早く食べちゃいましょ」
「どうですか?」
リセリナ様の隣から、セラン殿が一言尋ねる。
「ええ、とっても。ね?」
こっちに目線を送る。
食べながら頷く私。
「よかったです!」
「洗い物は私がやっておくから、終わったら台に置いておいて」
「ありがとうございます!だってみんな!」
「ありゃす」「うむ」
米を、肉を、玉ねぎを口いっぱいに頬張り、飲み込む。
それだけで、これからの道中のエネルギーがみなぎる。
まだまだ目的地まで遠い。
これに見合えるよう、頑張らなくては。
そう思い、食べ終わった丼を隣に置いた。
「ごちそうさまでした」
今話も読んでいただきありがとございます!
前回くらいで話したのですが、めちゃくちゃ馬車速いのでそれなりのスキルが必要なんですねー
あと、大さじってわかるかなと思って途中から端折ってたんですけど、みりんと白だしも大さじです!
そして、1人分どんくらいやりゃいいねん!ってお声、お聞きしました。
タレというか、みりんだのは同じフライパンでやってるので変わりません。
卵の量なのですが、一応僕は600gで卵6つぐらいで作ってます(ホントは4つでやっててちょっと足りなかったので、6つ、つまり100gにつき1つが理想かと)。
これもまあ好みによりますし、26cmで600gまでが限界な気がします(サイズ的に、これ以上だと鶏肉を敷き詰められないんですよ)
あと卵はスーパーとかでLサイズのやつ買うようにしてください。
前はローソンで買ってたんですけど、あれ結構ヒビ入ってるしサイズがSしかないんですよね多分(記載ないから憶測だけど)。
また、醤油とかみりんとか、わかんないよー!って人のために!
麺つゆ(3倍濃縮のやつ)を大さじ9,白だし大さじ2,鰹節20gとかでもいいです(鰹節はこんなに要らないかも、12とかでいいかもだし、場合によっては麺つゆや白だしに、鰹節エキス配合とかそういうのもあるのでいらないってことすらあります)。
また、これは異世界ものなので記載しなかったのですが、僕は普段これに味の素5振りくらい入れてます!
レシピ紹介はこんなところで。
もしよかったら、ご感想・ご指摘、他諸々していただけたら嬉しいです!
次回の更新は、今年までにはします!(鬱だから精神的に不安定で……だから広めにとらせて!ごめん!)
多分次回か次々回で帰省編終わるかも?
そのあとは割込み投稿しますので
じゃっ!




