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満点胃袋~感謝のソースを添えて~

前回は、なんか会議してたような。

今回は閑話です!

では、よろしくお願いします!

「お、着いた」


 しばらく歩き、僕たちの住まいの前まで着いた。


「アルバ君いるっぽいね」


 そういわれ、207号室に目をやると、窓越しに光が漏れているようだ。


「やな」


 少し錆びた階段を上り、端の部屋までカツカツと鳴らしながら歩いていく。


 鍵穴に鍵をさし、左に回す。


 カチャッという、鍵が開いた印を確認した後に、ノブを右に回し扉を引いて、僕たちは中に入った。


 少し香る芳香剤の匂いが、僕の肩から、自然と力を奪う。


「おお、戻ったか」


 ソファでくつろいでいるらしいアルバ。

 近くの机には、いくつかの紙が置かれているようだ。

 なんだろうか、公務関係だろうか。


「おう」「ただいまー!」


 持っている袋をドサッと置き、腰を伸ばす。

 溜めてたものが解放されるようで、気持ちいい。


「なんだそれ?」

「服」

「コウキ君半袖しかなかったでしょ?だから連れ出したんだっ」

「ほう、ごくろう」


 少し眠そうなアルバ。

 公務の疲れだろうか。


「あのさ、お前晩御飯食べた?」

「あー…食べておらんな」

 中を確認するように、お腹をさする。


「ちょっとさ、今日エマちゃんのお母さんと会ってさ」

「ほう?」

「それで、アルバ含めご飯どうですか?って言われたんだけど、どう?」

「よしっ行くか」


 即答。


「はやっ!まあ行くか」


 財布を取ったアルバを連れて、その店までの道を歩く。

 少しのワクワクと、空腹による疲れを感じながら。


「いやー楽しみだね!」

「せやなー」

「…で、何屋なんだ?」


 そういえば、聞いていなかった。

 僕自身も、新しい店ができたよ、ということしか聞いていなかったので、何のお店なのかまでは知らない。

 今のお腹からして、肉系だとありがたい。

 オムライスなんかもいい気もするが、麺系は何か違うような。


「んーとね、基本は定食屋らしいよ?あ、でもカツ丼とかオムライスとかもあるって聞いたかな」

「「ほーん」」

「学園でも有名でさ、だから結構楽しみなんだ!」

「「へえ~」」


 そういえば、最近学園にあまり行っていないような。


「いや、2人も学生でしょ?」

「まあ、余魔王だし」

「僕Sランク冒険者だし」

「初めて聞いたよ、そんな断り文句……でも、もう少し来てほしいな」


(まったまには行くかあ)



 そんなことを言いながら歩いていると、明るく光る建物が見えてきた。


「あ、あれかな?」

 セランが、そこを指さしながら言った。


 微かに見える文字、“満点胃袋”。


「じゃあ入るか」


 暖簾をくぐり、扉を開くと、カランカランという音が僕たちを出迎えてくれた。


「あ、皆さんきてくれたんですね!」


 入るや否や、ミレーネさんが駆け寄ってきた。

 さっき会った時より、少し元気なような気も。


「ほらあなた!この人たち!」

 カウンターに向かって手招きをする。


 走ってきたのは、眼鏡をかけた少し細身の、いかにも優しそうな男性。


「エマちゃんとミレーネさんが、本当にお世話になりました!店主のノエルといいます!お礼と言ってはなんですが、今日は是非好きなだけ召し上がっていってください!」

 深々と頭を下げる、店主らしいノエルさんとやら。


「いえいえ、僕たちも好きでやったことですから、ハハハ」

 少し照れ臭いせいか、ぎこちない返事をしてしまった。


 流されるままに、カウンターへと向かう。


「あの、エマちゃんは……?」

 キョロキョロとしながら聞くセラン。


「ええ、エマなら2階で寝てますよ。あれからほんとに、気づけば、おじさんたちのとこいってくる!って飛び出すようになって…道もわからないから、すぐ帰ってくるんですけど…」

「そ、それは大変ですね」

 話を聞いて、苦笑いな様子。


「来てくれても大丈夫ですよ?」

 僕の言葉に、驚いた様子のミレーネさん。


「いえいえ!ご迷惑おかけするわけにも……」

「全然迷惑じゃないですよ!ねっ?」

 セランが僕とアルバの目を見つめる。


「そうやな」

「うむ」

「そ、そうですか……あ、何になさいま━━━」


 噂をすればなんとやら、2階から誰か降りてくる音。


「ママぁどしたのぉ?」


 階段から現れたのは、小さな柄が描かれているパジャマ姿で、寝ぼけ眼のエマちゃん。


「あら、エマ起きちゃった?」


 袖で目をこするエマちゃんの頭を、優しく撫でるミレーネさん。

 そんな様子を見ていると、なんだか実家が恋しくなってきた。


「エマちゃん久しぶり、元気してた?」


 僕の声に気が付くと、一気に晴れたような顔に様変わり。


「あ!おじさんたちだ!わたしは元気だよ!おじさんたちも元気そうだね!」

「あの……」

 会話に入ってきたのはノエルさん。


「何になさいますか?あ、メニューはそちらにありますよ!」

「あ、すみません!……んーとじゃあ僕は……生姜焼き定食で!コウキ君とアルバ君は?」


 僕もメニューを開いて、どれにするか、1ページ、また1ページとまじまじ眺める。


「じゃあ僕は……カツ丼大盛で!」


 ここは話に聞いた通り、一品料理も豊富なようだ。

 オムライスに、さっき頼んだカツ丼、さらにはりゅうきゅうなんかも。


「なら余は……ローストビーフ定食の300gにする」


 この店で一番高いやつだ。


「え!?アルバ君さすがに別のにしたら……」

「いや、いいんですよ。エマもミレーネも助けてもらってるんですから、好きに食べていってください」

「ほらな」

「お前が言うやつちゃうやろ」


 そんなこと言いながらも、じゅっじゅっカタンカタンと、料理は順調に完成し……。


「こちら、カツ丼定食です」


 全員分揃ったところで、カツにかぶりつく。


 熱と肉汁が口の中であふれ、旨味を甘味を司る味蕾が刺激される。


 続けざまに米も、生き別れた兄弟が抱き合うかのように混ざり、同時に飲み込む。


「おいひー!」

 ついそんな言葉も漏れてしまう。

 そのくらいおいしい。


「フフッ最近ワコク料理流行ってますよね。うちの店主、ずっと前から修行してるから、味はきっといいはずですよ」

 皿を洗いながら、話している。

 そういうことなら、納得の味だ。


「まあ、師匠にはまだまだ及ばないけどね」


 一緒に皿を洗っている手を止め、こちらを向いて━━━


「改めて、2人を助けていただき、ありがとうございました!今日は全部タダですから、好きに食べていってください!」

 深々と一礼。


「むっタダ?」

 自分の頼んだものを見つめるアルバ。

 そういえば言ってなかった。


「まあ、いいか」


 食べる手を再び動かす。


「ねーねー!」


 カウンター越しに身を乗り出して僕らを見つめてくる。


「あのね?わたしね?9月からがっこー……じゃなくて、がくえん?にいけるようになったんだよ!」

「そうなんだ!じゃあ僕たちと同じだね!」

「あら、皆さん学生さんなんですか?」

 少し驚いた様子。


「そうなんですよ。こっちのコウキ君とアルバ君はちょっと特別なんですけどね」

「フフッ青春の真っただ中って感じなんですね、なつかしいわあ」

「でも……おじさんたちとあえない……」


 僕たちが通う校舎と、エマちゃんが通うことになるであろう校舎は別のところにある。

 年齢ごとに分けているらしいが、前世の世界と少し違うから、ややこしくてあまり覚えていない。


「だが、通いたかったのであろう?」

「え?そうなん?」

「気づかなかったのか?」

「まあ……」


 アルバがすこし引いている。

 学校に通いたいと思うことがあまりなかったから仕方ない。


「特別って、どういうことなんですか?」

「そうですね簡単に言うとなんですけど、僕とアルバ、あまり通わなくていいって言われてて」

「へえすごいですね!」

「フッまあ余は魔王だからな」

 誇り高そうに言う。

 前の世界だと、俺は社長だぞ!とかいうかなり痛いやつだが。


「アルバ君はわかるけど、コウキ君はもう少し学園来てくれてもいいんじゃない?」

「え?い、いやまあ……僕も色々……」

 自分でもわかる苦しい言い訳だ。


「でもいつも暇そうじゃん」

「ぐう……」

「ぐうの音は出るんだ」

「ででも、週2ぐらいでは行っとるよ」


 すると、洗い物の動きを止めず、こっちを向いて━━━


「そういう所は、ちゃんと行った方がいいですよ?そういうのは、大人になってから思いますからね?」

「は……はい……」


 なぜかミレーネさんが言うと従わざるを得ないような、そんな感じがする。


(もうちょい行くかあ……あーやだな……)



 そう話しながらも手を止めず、気づけば食べ終わり時刻は22時を過ぎた。


 ごちそうさまでしたも済ませ、帰宅の準備をしていた頃。


「この度は、エマとミレーネを助けて下さり、ありがとうございました!」

「だから大丈夫ですよ!ねっ?」

「うむ」

「ほんとに気にしなくていいですよ。僕たちもごちそうしてもらえましたし」


 また深々と頭を下げる二人。


「ほんとにありがとうございました!もしなにかあったら、なんでも頼ってください!」

「おじさんたちまたね!」


 小さい手を、大きく振るエマちゃん。


「「ばいばい!」」「うむ、またな」


 そうして、僕たちは歩き出す。

 自分たちの家に向かって、御馳走を思い返しながら。


 そして、歩いている自分に慣れてきた頃。


「おいしかったねー!」

「ほんとな!」

「魔王城では、食べたことない味であったな」


 セランが、僕の方にニヤリと笑って━━━


「コウキ君、ちゃんと学校来るの増やしてよ?」

「わ、わかってるって……」


「むっ着いたな」


 前には、いつもの見慣れたアパート。

 この辺じゃ少し新しい見た目で、すこしの塗装の剥がれが目立つぐらい。


 いつもの階段を上り、鍵と扉を開ける。


「あー家だあ!」


 一番先に入ったのはセラン。

 きれいに靴を脱ぎ、彼の部屋に荷物を置いて、すぐに戻って手を洗う。


 次にアルバ。

 少し粗雑に脱ぐと、適当に置いて、セランを待ってから洗う。


 最後に僕。

 脱ぎながらそろえて、自分の部屋に置くと、手を洗うため後ろを向く。


「ん?」


 なにやら、ポストに2通ほどの封筒が。


 一つは僕宛で、もう一つはセラン宛。


「セラン?なんか来てるけど?」

「ほんと?」


 寄ってきたセランに、封筒を渡してから自分のを開ける。


 なにやら、インクが見える。

 感じからして、督促などではなさそうだ。

 その紙を開くと……。


『コウキ、元気にしているか。どうやればいいかわからないから、いきなり本題に入らせてもらう。帰省してほしい。というのも、どうやら学園では、これが届くころ、9連休に入ったらしいじゃないか。それが、カナンの耳に入ってしまってな、帰ってこい帰ってこさせろと、何を言うにもそればかりになってしまった。だからお願いだ、帰省してほしい。話は以上だ。せっかくの学園、ハベ━━━』


 ここから、ぐちゃりとなって読めない。

 配送のトラブルだろうか。


「あー帰省かあ……」


 どうやら手紙を読む限り、かなり必死そうだ。


(帰るかあ……)


3.5話、読んで下さりありがとうございました!

作品内で、学園に行く頻度増やすよーなんて言いましたが、その学園での描写は、あまりやらないつもりです!

それらは本編である、寛容少年と異世界師匠のほうで書くつもりです!

こっちでは、こっちにしかできないことをやるつもりですので、よかったらこれからも楽しんでいってください!

ただ、コウキ視点じゃないと書けなそうなものは、一応もういっここれらの話に関係するものを書こうと思っているので、そっちでやるか、もしくはこっちで書こうと思っています!


じゃあ、次回もお楽しみに!

もしよかったら、ご感想・ご指摘下さればうれしいです!

じゃっ!

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