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とあるアパートの一室

はじめまして!ほつれと申します。

よろしくお願いします!

 僕の名前は幸希。

 こっちに世界では、コウキと書くべきだろう。


 向こうの世界で、割と仲のいい殺し屋に殺された僕は、こっちの世界で学校に通いながら、アパートの一部屋を借りて、3人でルームシェアをしている。

 この世界は室内基本土足のアメリカンスタイルだが、掃除とか色々めんどくさそうなので、土足厳禁というルールを設けておいた。 だが、若者の間では、少し流行っているらしい。


「あ」


 そういえば、用事があるのを忘れていた。


(まああいつは印鑑のほうがいいやろうし……セランからいくか)


 隣の部屋にいるセラン。

 僕より少し高いくらいだから、156cmぐらいの男の子。

 かわいらしい顔や、素直な性格などが前世のやつと少し似ていて、ジンクス的なものを感じている。

 違うとしたら、たまに少し棘があることぐらいだろうか。


 僕は、その紙を持って、部屋を出る。


 僕らの部屋は、リビングに面しているので、扉を出ると、さすればリビングへの入室となる。


「おっ」


 リビングの住人、アルバだ。

 僕らの中では一番背が高くて、多分だが180はあると思う。


「うす」


 部屋を出るとき、毎回顔を合わせるのでリビングに住ませていることに申し訳なくなる。

 高身長だし、後から入ったのでいいだろうという所もあるが、早く引っ越したい。だが、かなりめんどくさそうだし、後でいいだろう。

 そんなことを感じながら、サランの部屋の扉を開く。


「なあちょっといい?」

「あ、コウキくんおつかれ~」

 柔らかい感じで幼さがある、中高音といった声。

 聞いていると落ち着くというか、そんな感覚がする。


「うぃおつかれ。今ちょっといい?」

「うんだいじょうぶだよ」


 パタンと閉めた本の表紙には、魔法陣とともに“魔法学応用”の文字。

 勉強していたのだろうか。


 セランは、閉じた本を静かに本棚にしまった。


「ありがと。あのさ、ちょっと奨学金のやつで書いてほしいもんあるんやけどさ」

「うん」

「僕らルームシェア始めたけん、その……なんていったらいいかわからんのやけど」

「うんわかるよ、名前書けばいいんでしょ?」

「そそ。これなんやけど……」


 そう言いながら、消しカスを払って紙を机に置く。


「うん……ん?」

 疑問めいた声。


「これ、白紙だけど……」

「ん?あ、ほんまや」


 よく見ると、いやよく見なくとも、どう見ても真っ白な紙がそこにはあった。


「ごめんごめん。じゃあちょっと取ってくるわ」

「ううん大丈夫だよ」


 優しい笑顔でこっちを見てくるセラン。

 もうだいぶ見慣れたが、はじめは、同級生ながらかわいらしく映ったものだ。


「あ、そうや。そっちボールペンある?」

「ん?ちょっと待ってね……ボールペンボールペン……」


 ぶつぶつとつぶやきながら、カバンなり筆箱なりをまさぐる。

 しかし……。


「ごめんなさそう」

「おけ、じゃあそれも持ってくるわ」

「うん、ありがと」


 その言葉を背に、部屋へ戻った。


 そして、ボールペンと、今度は記入された用紙を手に取る。


「あと……これとこれ」


 そうして部屋に戻ると、セランがくるりと椅子の座面をまわし、体ごとおおよそこっちを向いてきた。


「おかえり、あった?」

「おん……あ、これ違うわ……」

「ん?」


 そういいながら、半透明のものを突き出す。


「なにこれ?」

「下敷き」

「え?ほんとだ…小等部の女子が使ってるのしか見たことないけど。ていうかよく間違えたね」

「じゃあボールペン渡すわ」

「うん」

「あ、これも違う……」

「え?」

 少し期待したような目のセラン。


「ごめん、ちっちゃいロケットランチャーや」


 そういいながら、それを出す。


「え!ほんとだ、小さいロケットランチャーだ!えーすごぉ……まあたしかに、ちょっと似てますけども」

 僕の手から取ると、上からも横からも見回している。


「ほんとだすごぉ……え、これどこで買ったの?」

「いやなんか、売ってた。どこかは覚えとらんけど」


「へぇすごお……カチャッバン!」

 こっちに向け、撃つような動作。

 とはいってもそれ自体小さいから様にはなっていない。

 ともかく、喜んでもらえて何よりだ。


「あ、あとそれちゃんと出るけんな」

「え!こわっ!」

「爆発はせんけど、結構いたいらしいよ」

「へえ……」


 前に聞いたけど、こっちの世界にこれ自体はもちろんないけど、漫画で描かれてることが多いらしい。

 こっちにも漫画があると聞いた時は、驚いたものだ。


「それあげるわ」

「え、いいの!?ありがとう!」

「あと、これその紙とボールペン」


 奨学金の紙とボールペンを、白紙の上に置く。


「おっけいちょっと待ってて」


 そうして、セランはサラサラと書いていって……。


「はい」

「おっけありがと」

「うん」

「あ、そうや。近くにさ、新しく店できたらしいけん今度行こ」

「うんいいよ!行こ!」

「じゃあお疲れぇ」

「うんおつかれ」


 そう言って、ウケた嬉しさに酔いながら、サランの部屋を出た時。


 玄関からノック音。


「僕出よか?」

「いや、余が出る」

「おけい」

(誰か何か頼んだんかな……)


 そして、アルバが玄関の扉を開くと……。


「魔王様、ご多忙のところ、失礼いたします」

「リセリナか。構わんぞ、入れ」

「はい、失礼します」


 アルバと同じく、角の生えた女性が入り、ガチャッと、金属製の扉が閉まった。


 そして、ヒールを脱ぎ、靴箱へとしまうと、短めの靴下で上がってきた。

 ぴちっとした服装ということは、何か大事な用か、その帰りか。


「で、何の用だ?」

「はい、魔王様の生活を伺いに参りました」


 僕がアルバを誘う際、この抜き打ちでのチェックを条件に、()()許可してくれた。

 今日はそれできたようだ。


「では、魔王様のお部屋への案内お願いいたします」

「案内というより、いるではないか」

「?」

 何を言っているのか、わからないという顔。


「余の部屋に、いるではないか」

「ん?いえここはリビングですので、冗談はさておき、部屋へ案内━━━」

「冗談ではない」


 平々凡々とした表情のアルバに対し、リセリナはまだ、受け入れられていない様子。


「え?リビング……え?」

「では、頼む」

「……コウキ」

「はい」

「これはどういうこと……?」

 歯をギチギチさせながら、低い声で尋ねてくる。


「いやあ…ははは……」

「じゃ、ないのよ!どういうことかって、聞いてんのよ!」

「まあ色々聞いたんだけど……」



━━━━━━時は遡り、いつかは忘れたかなり前。


「すみません、家賃大銀貨1枚以内で、部屋3つの防音でお願いしたいんですけど……」

「はい……それですと……」



「━━━━━━で、いちばんいいのがここ」

「あんた……そりゃ向こうも魔王がいるなんて思わないわよ!」

 ガッと僕の胸元を持ち上げる。

 向こうの方が背が高いから、足が宙に浮いてしまった。


「いやあ…こりゃ一本取られましたなあハハハ」

「やかましい!いい?このお方は、世界一広い面積を統治してて、先代からの魔族の印象を払拭してて、2万年前から君臨してる、名前を呼ぶのも失礼なくらい偉大過ぎる魔王様なのよ?!」

「へ、へえ知っておりますぜ」

 僕の服が、ちぎれそうなぐらい伸びている。


「そんなお方をリビングに住ませるって、あんたどういう神経してんのよ!?」

「いやだって……引っ越しめんどくさいしぃ」

「じゃああんたがリビング住めばいいじゃないのよ!」

「いやだって、ジャンケンで負けたのあいつだし」


 そう、僕らはジャンケンに勝って部屋を手にした。

 それを手放すのはもちろん嫌なのだ。


「あんたほんとに……ていうか、なんで家賃大銀貨1枚なのよ?!あんたSランク冒険者でしょ?」

「いやだって、もうひとりただの学生やし」

「そんなのあんたが━━━」


 遮るように扉が開く。


「ねえ呼んだ?」

 ひょこっと出てきたのはセラン。


「えっかわい……」

 僕を掴む手が離れ、リセリナは両手で口を覆う。


「あ、ども」

 軽い会釈をするセラン。


「あ、どうも……」

 リセリナはかなり赤面している。

 きっとタイプなのだろう。


(まあしゃあないよなー)


「いや、別に呼んでないぞ」

 セルバが、何の気なしに答える。


「え、そうなの?結構もめてたみたいだけど、大丈夫?」

「んーなんか、セルバ、リビングおるやろ?それ━━━むぐっ!」

 話す僕の口を、リセリナが抑えてきた。


「いえ、何でもないですよ~」

「え、そう?ならいいけど」


 その声とともに、セランは部屋の中へと消えてしまった。


「ま、まあ家賃のことはいいわよ。でも、新しいトコぐらいは探しとくのよ?!いいわね?!」

「まあ、善処します」

「はあ……ったくなんて報告すれば……」

「余は別にかまわんのだが……」


 どうやら、話は終わったみたいだ。

 これで一安心といったところか。


「あーもう、声出したらお腹すいたじゃない」

「知らんがな」

「あんたなんか作りなさいよ」

 突然、かなりの無茶を言い出してきた。


「えーやだよ」

「ならなんか奢りなさいよ」

「お前学生相手に……まあ奢るかは置いといて、なんか食べに行くか」


 そうして僕は、部屋に財布を取りに行く。


「なら余も行くぞ」


 セルバも行くなら……。


「セランも行くー?」

「ええ?」

 扉の先には、ちっちゃいロケットランチャーを持ったセラン。


「今からなんか食べに行くんやけど、来る?」


 そう聞くと、セランはリセリナの方をチラッと見る。


「う……ん、行くよ、ちょっと待ってて」


 部屋へと吸い込まれ、しばらくして出てくると、ロケットランチャーではなく財布を持っていた。


「じゃあ行こ!」


 できるだけ僕とセルバを見るようにしているようだ。

 結構人見知りなのかもしれない。


「よ、よろしくねセラン君」

「は、はいよろしくお願いします」


 そうして僕らは、部屋の電気をすべて消して、ステーキ屋に向かった。


第一話、読んでいただきありがとうございました!

更新ペースは、おそらく月1とか2とかになると思います。

更新する際は、活動報告にて、報告させていただきます!

もしよろしければ、感想・ご指摘、よろしくお願いします!

参考にさせていただきます!

では!

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