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深窓の令嬢、ご当地令息に出会ったけれど。~恋より推し活に専念します!~  作者: つこさん。


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第16話 深窓の令嬢、お礼をした。

2025/07/18 12:29 追記


申し訳ありません、間違えて18話を投稿してしまっていたため、16話に上書きしました

失礼いたしました

「温泉の設計なんて、初めての経験でした。僕に任せてくださり、ありがとうございます」


 ウッツ氏が、そう言って胸に手を当てた。

 温泉の浴場部分と湯船は問題なく形成され、今は職人たちが男女別脱衣所の建物を建てている。もう少しで完成だ。


「そう言ってもらえて、ようございました。わたくしの不足分を補ってくださり、本当に感謝しております」

「いえ、いえ! 不足なんて、僕がたくさんです! 本当によくしていただいて……」


 そう言って、ウッツ氏は頭をかいた。イマは扇子を口元に当てつつ首を傾げる。

 イマは、自分が本当に世間知らずで、そのゆえに無鉄砲であることを、この計画の最初の段階で自覚した。よって、温泉事業に関するすべての工程にてヨーズアの判断を仰いでいる。

 そのことで、工事に関わる人々には昼の休憩のみではなく、午前と午後の両方に小休止を取ってもらうことを覚えたのだ。

 ウッツ氏が言及する「よくして」は、きっとそのことを指すのだとイマは考えた。


「まあまあ、当然のことでしてよ!」


 鼻高々にイマはそう答えたが、ヨーズアは金にならない称賛はいらないと常々言っているので、問題ないだろう。


「――お嬢! 湯小屋できたぞー!」


 ベルント氏が大きな声でそう言って、イマへ手を振った。イマは、ふだんなら控えるであろう動作も気にせず、腕を大きく振り返した。

 湯小屋は、四日で形になった。

 男湯と女湯に分かれ、脱衣所には簡素ながら棚も設えられた。木の壁には隙間があったが、竹を編んで風除けにしてある。湯船は大きめの石を組んで作られ、底にはすのこが敷かれた。


「――まあ、まあ。すごいですわ! これが温泉ですのね!」


 見る物すべてがめずらしいイマは、できあがった湯殿や建物を首を巡らせて見て回った。ついでにいろいろなものを実際に手で触ってみる。

 お湯にも触れてみたが、びっくりするほど熱くてイマはすぐに手を出してしまった。


「お嬢、さっそく入るよな?」


 ベルント氏が、そこらじゅうを触っているイマをにこにこと眺めながら言った。それにイマもほほ笑み返しながら答える。


「いえ、わたくしではなく、まずは職人のみなさんに入っていただきたいのですわ!」

『えっ?』


 ベルント氏だけでなく、ウッツ氏も疑問の声をあげた。

 イマはそれに「ドクからの教えですの。感謝を示す方法は、たくさんあるんだって」と言った。


「まずは、作業に携わってくださったみなさんが、入るべきではございませんか? こんな暑い中、がんばってくださったんですもの」

「……お嬢、あんた、ホントいい気立ての娘さんだなあ」


 感心したような声色でベルント氏が言うので、イマはとても照れてしまった。ペペインっぽい男性にそんなことを言われるのは本当にうれしい。もっと言ってほしい。

 ベルント氏はそのまま外へ出て行って、皆へ「おい! お嬢が、オレたちに先入ってくれってよ!」と叫んだ。どよめきが聞こえる。

 男性の使用人たちが勝手知った顔つきでタオルや風呂上がりに着る浴衣のサンプルを大量に持って来る。

 イマはヨーズアと話し合った際に「どうせ無料で使わせるなら、浴衣やタオルの使用感も試させましょう」と強弁され、その案を採用したのだ。たしかにこれは一挙両得だ。


 イマは外に出て、目を丸くして立ち尽くしている職人の皆さんへ「ということで、ぜひ入ってくださいましね!」と笑顔で言った。


「――おれらが一番風呂? へへ、なんだか照れるな」

「ちゃんと順番な! 先に入ったもん勝ちなんてナシ! あと体、洗ってから湯船な!」


 ひとまずは、今日の作業に携わった者たちが入浴する。そして、明日以降は他の職人やウッツ氏やハイモ氏、また男性使用人たちへ一日中開放する。ヨーズアは「他の人間が使った湯を使うなんて嫌ですが。まあ、一回くらいなら」と言っていた。女性使用人やメイドたちは、来週だ。皆そわそわと待っている。

 職人たちが大きな体に似合わずおずおずと、イマに会釈して湯小屋へ入っていく。

 ベルント氏はその最後に「じゃあ、お先にいただくよ、お嬢」とイマの頭をぐりぐりと撫でてから続いて行った。もっとやってほしい。


 夏は暑い盛りだ。イマは出てきた職人たちが休めるように、メイドたちと冷たい飲み物を用意した。

 湯小屋には小休止ができる場所もあるのだ。これは、メイドたちからの提案で盛り込まれた設計だった。

 そのうち、湯小屋の中から「お、おおおおお……っ」や「こりゃ……効くわ……」という声が漏れ聞こえてきた。うめくようなそれらの声の中で一番多いのは「生き返る……」だった。皆死んでいたのだろうか。


「お嬢、あんたはそろそろ、部屋に戻って休みなさい」


 不意にヨーズアの声が降ってきて、イマは顔を上げた。彼はじっとイマの顔を見下ろしている。


「皆さんに飲み物を提供しなければ」

「そんなことはメイドにやらせときなさい。あんたのやることじゃない」

「でも、温泉の感想を。それに浴衣も」

「いつだっていいんですよ、そんなもんは。ほら、戻りますよ」


 ヨーズアはイマの背中をぐいぐいと押して屋敷へ戻そうとする。

 イマは首を振って「いやです!」と言ったが、次の瞬間立ちくらみを起こして倒れそうになる。即座にヨーズアが支えた。


「言わんこっちゃない。あんた、自分の体力の無さを自覚しなさい。ほら、立って。肩貸しますから歩いて行きますよ」

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