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人生を読み直す

 嫌な目覚ましだ。起きているのに起こす目覚ましは、いつも鬱陶しかった。

 今日はむしろ起きたかった。こんな現実から。

 今日はそれ以上に、鬱陶しいのは止めたくても止めれない、この目覚ましの正体は深夜の世界に響く啜り泣く声。


 彼女のとの1日は終わりを告げてやっと1日だった。そう実感する濃密な時間だった。

 実際の一週間と体感した時間の差が大きすぎたんだ、だからこんなに辛いんだ。辛いんだ、苦しいんだ。

 俺が知っている彼女が死んだ――そしてこれは彼女が死んで、死んでからの物語だ。


 最初の感想は『人間なのに人形』だった。

 長いスカートと黒い靴が足の全体を隠している。

 スカートの裾を掴み、左右に振り、開いた傘回しのようにくるっとターン。そしてパッと足を踏み込んだ。

 垣間見える肌の白さは靴から漏れる靴下と同じくらい白い。

 やっぱり、スカート押さえる手も、それ以外も白くて綺麗だ。さすが日焼け止め、一生懸命塗った甲斐があった。

 ルビーの瞳が、しっかりと顔を見ている。当然か、鏡がよそ見をしてたから怖いですから。

 背中まで伸びたくわいろ髪は滝の様に広がっていて太陽を反射する程に綺麗な髪だった。

 都会の服はおしゃれで、自分がおしゃれになったみたい。

 中学校の服は着慣れていたけど、高校の服は慣れないな初日だし、当たり前かな?

 私は、身長より少し下のドアノブを回して、扉を開けて外に出た。見下ろす太陽を手のひらの影で守りながら見上げた。

 時間もだいぶ余裕があるし、学校校を行くついでにおしゃれになった私を見せびらかそう。

 

 桜並木の道は始まりを告げる。そんな気がして好きだ、桜の花びらが地面に落ち切る前に捕まえれると願いが叶うらしい。なら、私は何を願おう?

 そんなジンクスを信じるのは、私が田舎ものだからかな? わかんない。でも、都会の人は信じないのかな? どうなんだろう?

 もし叶うんなら学校生活を満喫したいです! あとあと、イケメンで、優しくて、都会らしいおしゃれな彼氏が欲しいです。あと、友達も百人作りたいです! あと、私のこの記憶力が治ります様にーー!

 ドンッ!

「きゃっ! いたた……」

 あれ? この感じ、もしかして漫画で見た運命の出あーー。

 金髪に染めた髪、両耳を貫通したピアス、首から垂れるパーカーの頭。

 でも、整った眉。長いまつ毛気づいたら見惚れてしまいそうな端正な顔立ち。でも、やっぱり怖いです!

「あっ、わ……」

 田舎視点。

「どこ見てんだ? あっ?? 叩き潰すぞ???」

 都会視点。

 あっ、ぼーとしてた。謝んねーと。

「ごめんなさーい」

 すたこらさっさぁ! ばたっ! さっさっ。


 ぐるぐるぐる〜。

「……お腹すいた〜!」

 しゃがみ込んで腸を縮ませても、お腹を押さえても、空腹は抑えられない。

 コンビニ、いや、場所わかんないよ!

「とんかつ食べたーい〜!」

「はら減ってんの?」

「???」

 瞬きパチパチ。

 お腹やっぱりすいてないのか?

 ぐるぐるぐる〜!

 やっぱりお腹すいてるんだな。

「おにぎりならあるけど食う?」

「えっ? いいの!?」

 立ち上がる元気はあるんだな。

 鞄からおにぎりを出した。

 ほわぁ〜! 目キラキラ〜!

「おいしそ〜……まさか、貰おうとしたらあげませんのパターン!?」

「しねーよ.....!? 初対面の相手に」

「友達にならするんですか?」

「する.....友達が」

「される側なんですね」

「……」

 手を伸ばし、引っ込めるを繰り返す。

「いいから早く取りなさい!」

「ありがとうございます」

 受け取り、ぽつぽつと歩いて縁石前に設置された椅子に座った。

「いただきます!」

 ちっちゃな口が裂けそうな大口、でも、それは本人からしたらだ。他の人間からしてみれば変わらず小さい。かぶりついた!

「食ったな」

「えっ?」

 も……もしかして!

『あーあ、食っちまったなぁ……一口とはいえお前はこれを食っちまった。その意味がわかるか? タダ、モノを恵んでもらえるなんて甘いんだよ。金が払えないなら、体で払ってもらうぜ……』

 みたいなことをこれから言われるんだぁ……!

「うぅ……!」

 泣くほど美味いんだな。まぁ、腹も減ってたみたいだしな。よかったよかった。

「あれ、これ?」

「気づいたか? 妹がプレッシャーに勝てる様にって、カツを揚げてくれたやつの残りをおにぎりにしたんだよ」

  プレッシャー? 学校の服だし、入学式なのかな、この人も? あんまり気が強くないのかな?

「そ、そうなんですね。優しい妹さんですねっ!」

 キラーン!

なんか、目が光った?

「そうなんだよ! 妹はお母さんにでとっても優しいんだよ。性格だけじゃなくて、容姿をお母さんになんだよ。俺は母さんにだから、全然似てないんだけどな!」

 それは似てるって事じゃないの?

「な、なるほど……それでお金は」

「いまの家、喫茶店経営しててお客さんが食べてる顔が好きなんだよ。それで食べて美味しいって言ってくれた顔が好きなんだよ。でも、泣くやつは初めて見たけどな」

 ごめんなさい。それは私が怖い勘違いしたからです……。

「だからとらねーよ別に。それに飯も買えねぇような、子供の病人から金をむしり取るとか鬼かなんかかよ」

「子供? 病人? 私、高校生です! け、健常者? です!」

「はぁ〜!? 歌舞伎役者が死化粧したみたい見た目の奴が健常者なわけねぇだろ!?」

「いや、これは」

 少女事情説明中。


「……ふふふっ! ごめん。その、本当に——馬鹿にしてるわけじゃなくてなんていうか.....」

 口を押さえ、顔を背ける。手のひらを左右に往復させながら、弁明をしようとしてるが余裕がないみたいだ。

「いいですよーだ。無理しないで……むしろ遠慮せずに笑ってよ!」

「あはは! いーや、肌の日焼けが気になるからって日焼け止めを丸々一本使うって、田舎娘のギャクセンは高いな」

 伝言撤回やっぱり、むかっとする。笑われたら。

「スマホとかで調べろよ」

「スマホ? なにそれ?」

「いやいや」

「……?」

「スマホ。これ、わかるだろ?」

「なにこれ? なんか、細長い豆腐みたいだね。わっ、光った!」

 はっ? まじ?

「おまえ、異世界転生者かなんかか? 連絡とか今までどうしてたんだよ……」

「えっ? みんな家に黒電話ぐらい置いてるでしょ?」

「昭和から時をかけてきたのか? まぁ、色々と突っ込みたいところはあるけど、まずはその化粧とも言えない歌舞伎死化粧からの脱却な」

 カバンからメイク道具を取り出した。

「なにそれ?」

「メイク道具。今の時代男子でもメイクするんすよ」

「そうなんだ〜、ん? もしかしてしてくれるの!?」

「まぁ、はい

「わ〜、ありがとう!」

 メイクポーチを開けて、道具を取り出した。

「下地これから塗るんで、め〜、瞑っとけよ。オーケー?」

「オーケー!」

 メイク中なのを忘れたかの様な行動に移った。

 スカートの上に両手を重ねお辞儀をする。なので、人差し指で押し返してメイクを続けた

 足はぶらぶらとブランコを漕ぐほど気分がいいようだ。


「これが私なんて夢みたい……」

メイク後の自分に感動のあまり、感嘆の声をこぼした。

 スマホを知らない奴が今の時代にあることがよっぽど夢みてぇだよ。ってツッコミて〜!


「ありがとう、えっと……そういえば、挨拶してなかったね。私、八雲天音やくもあまね新入生? 三年間? よろしくお願いします!」

雨宮薫あまみやかおるです。同じく新入生です。こちらこそよろしくお願いします」

「うん! じゃあ学校行こっ、薫!」

 三年間同じ学校に通うもんね。それに優しいからもしかしたら友達になるかもだし、雨宮くん呼びはよそよそしいわよね。ならこれが正解? よね?

 ――え? 距離感近くない、ない、ない……


 クラス表を確認したり、クラスで自分の挨拶が来るまで仮眠していた。

 挨拶をする時の、なんともいえない不思議が雰囲気が漂っていた。

 体育館に移動した。人でぎゅうぎゅう詰めになった体育館。みんなめんどくさそうな顔をしてる、正直共感しかない。

 足もしんどいし、知らない町内会の人の挨拶、校長や先生たち長い話の繰り返しは睡眠導入剤にうってつけ過ぎて、また眠りについた。

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