野菜室
ミニトマト/
へたをプチン、と
ひねり取ると
青い匂いが漂う仕組み
ブロッコリー/
森という字を体現するのは
わたしの世界で
あなたしかいませんでした
森を刻んで
お湯にほうり込んだ
小さな木 木 木
玉ねぎ/
キッチンの
白い明かりが
透けるくらいに
うすくどこまでもうすく
スライスして
さらした水のなか
なぜこんなに
清らかで
無防備で
わたしの前にあるの
泣きたくなる
がさがさの心で
ゴーヤー/
縦半分に切ると
船のようなかたちで
詰まったふわふわのわたのような種を
スプーンで掬って
窪みがみえると
ますます船のようで
ひょい、と 飛び乗って
触れた表面の
でこぼこ
いがいが
でも尖ってなんてなくて
ゆらゆら 不安定
恥ずかしがり
だけどきっと
あらゆる風を味方につけて
勇ましく愛らしく
どんな波も
乗りこえていくの
きっと 乗りこえていくの