タチアナ5歳…… 地上に生還する!
「これは……(エレベーター?って事は……)このうえがでぐち?」
ダンジョン化していた隠し部屋を出たタチアナは、廃坑の隠し坑道を進み……
まだ新しい工業用エレベーターを見付けた。
「うごきゃない……(電源が切れてる? 主電源は……)うえかな?」
エレベーターのスイッチを確認するが…… 反応しない。
「(エレベーターが在るなら、設置する為の通路が……)あった」
工業用エレベーター囲む鉄骨の支柱に、梯子が付いていたので……
「よち…… おねえちゃん、ごー!」
タチアナは、ベア美に肩車すると梯子を登り始めた。
「まだかな?」
暗い中…… 梯子を登るタチアナは、長く感じたのだが……
実際には…… 梯子は、2階分しかなかった。
「これは……(コンクリート…… 穴が埋められてるの? 内側のエレベーターの穴しか開いてないのか……)りっちゃんのでばんかな?」
タチアナは…… うさぎ型リュックのウサシャンから、リスのヌイグルミのりっちゃんを取り出そうとして……
「ひゃあ!?」
ベア美の肩からズレ落ちそうになる!
「ママ! あぶない!」
呼び出したばかりの妖精のハナが
「うえ!?」
タチアナの服の奥襟を掴んで、ベア美の肩に引き戻した。
「ママ! だいじょうぶ?」
「えほ、えほ…… だいじょうぶ…… ありがちょう…… ハナ」
首が締まってしまったので、タチアナはハナに咳き込みながら礼を言うと……
「ハナ、ウサシャンからりっちゃん…… リスのヌイグルミをだちて」
「はい、ママ」
同じ事になりそうなので、ハナにりっちゃんを出して貰う。
「ハナ、ありがとう…… よち、りっちゃんゴー!」
前と同じ様に、釣糸を尻尾に結んだらりっちゃんがエレベーター用の穴を上がる。
「よち……(工業用エレベーターだから、安全柵しかない…… このサイズなら通れるかな?)」
支柱に固定された鉄骨の隙間を潜り、エレベーターの穴の内側に入る。
「ここをとおって……」
エレベーターと穴の隙間を潜り抜けて……
「ここをでれば……」
工業用エレベーターの安全柵をすり抜けると……
「ここは…… どこ?」
頑丈なコンクリート製の壁に囲まれた部屋に出た。
「まどが……(無い…… ここも地下なのかな? あれは……)かいだんと…… ちょびら…… でぐち?」
念の為に、タチアナは…… 扉の先にサーチの魔法を使う。
「ひとは…… いない……」
サーチした結果、人のいる反応は無かった。
「よち…… いこう!」
鍵が掛かっていたので…… ベア美がパンチ一閃!
ドカッ!
扉を吹き飛ばして、部屋から出ると……
「これは……(丸太? 丸太を重ねた壁……)やまごや?」
扉を出て階段を上がると、そこはログハウスでした。
「(家具に布が……)ちばらく…… ちゅかってない…… べっそう?」
置かれた家具には、埃避けの布が掛けられていたのと……
「ゆかが……(埃まみれ…… やっぱり、しばらく誰も来ていないみたい)」
ベア美の足跡が残るほどの埃の積もりぐわいから、年単位で放置されていたと解った。
「へっ、ちょん! うぅ…… ほこりっぽい…… はやくでよ」
放置ぐわいから、大した物も無さそうなので……
タチアナは、出口を探す。
「ここかな? おねえちゃん…… ゴー!」
ドッゴーン!!!
出口と思われる扉をベア美が吹き飛ばすと……
「もり……(の中の別荘って、感じかな?)」
荒れているが…… 広めの庭園があって、遠巻きに錆び付いた柵が見える。
「ここっちぇ……(何処? 廃坑とリゾート施設の中間くらいかな?)とりあえず…… 逃げないと」
タチアナは、リゾート施設の地下で感じた…… あの魔王の様な魔力を思い出した。
「いまは…… とにかく…… にげりゅう…… じゃあ、まずは……」
タチアナは…… ウサシャンからヌイグルミを探す。
「もり…… もりをはしる…… はやいどうぶつ…… な~んだ?」
タチアナは、ウサシャンから2つのヌイグルミを出た。
「いのしちぃ……(猪って…… 速いけど曲がれないよね?)と、にゃると…… おおかみ?」
最初に猪のヌイグルミを掴むが…… 猪突猛進する姿が頭に浮かんで、木に激突するイメージが見えたので…… 断念。
その隣の狼のヌイグルミに、ベア美と同じ様に付与魔法を施した。
「【ウル】…… よろちくね♪」
ベア美と変わらないサイズのリアルな狼型のヌイグルミ……【ウル】が伏せの姿勢から4足歩行の体勢に立ち上がる!
「う~ん…… り、りある……」
その姿は…… ヌイグルミと言うよりも、剥製の狼の様にリアルな狼の姿に近く…… サイズが大きい分…… 魔物の様だった。
「よち…… う~ん…… う~ん…… のれにゃい……」
立ち上がったウルは……
5歳のタチアナには、背が高すぎて乗れず……
「ウル…… ふちぇ!」
ベア美を収納したウサシャンを背負わせたウルに、ウサシャンを掴む様にして股がると……
「よち…… こんどこちょ…… ウル、ゴー!」
タチアナは、森の中へと……
ウルに股がり、駆け出した!
「ぜっちゃいに…… いきちぇやるんだから!」
タチアナの逃亡は…… 続くのだった。