タチアナ5歳は…… この世界のダンジョンに出る!?
足下を埋め尽くしていた財宝を、ウサシャンの中に回収し尽くしたタチアナは……
「ここは……(サーチした感じから…… 地下5…… 7~8階くらいかな? 通常のエレベーターの階数なら…… 地下2までだったけど……)」
元リゾートホテルの中心の柱に隠された財宝庫……
その底に着いたと思われたが……
「あれ?(横穴がある……)」
その底には、コンテナ車が楽に通れそうな横穴が空いていた。
「まだありゅ……」
そして、その横穴も財宝に埋め尽くされていた。
「ウサシャンも、しょろしょろげんかい……【ポンチ】にはいりゅかな?」
タチアナは、ウサシャンの中から子犬のヌイグルミを出した。
「ふぅ…… ウサシャンとおなじふよまほうを……」
ウサシャンと同じ様に付与魔法を施し、〝マジックバッグ〟化した。
「よち、(ポンチは、子犬のヌイグルミ型の肩かけポシェットだから…… 後で、ウサシャンの中の日用品と入れ換えてして、普段から私が持つ様にしよう)さー、いくでしゅ!」
タチアナは…… ベア美にポンチを持たせて、横穴を埋め尽くす財宝の回収を始めた。
(だいたい…… 500メートルは進んだかな? 財宝のせいで時間を食うけど…… 回収しないと、崩れ落ちて来るから…… 危険なんだよね……)
ポンチの背中のファスナーを開いて、ベア美が財宝に押し当てると…… 財宝がポンチの中と消える。
「なんか…… おそうじみたい……」
その姿は…… 巨大な熊の着ぐるみが、吸引力の無いハンディ掃除機を使いながら掃除している…… みたいでした。
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~ 数時間後…… ~
「やっと、おわった……」
財宝に生き埋めにならない様に、ベア美でポンチの中に財宝を回収する事…… 数時間……
「おなか…… へっちゃ……」
横穴の奥に巨大な扉を見付けた。
「(出口かな……)でも、その前に……」
タチアナは、ウサシャンの中から…… 父のキャンプ道具を取り出した。
「うぅ…… ちゅかいちゅらい……」
父のキャンプ道具は…… 5歳のタチアナには、かなり使い辛かったが……
「よち、おゆできた♪」
なんとか湯を沸かし、回収して来たカップ麺を作り始める。
(この身体だと…… キャンプ道具は使い辛い…… なんとか付与魔法を付与できる様に…… できるかな?)
できたカップ麺を食べながら、キャンプ道具の改良を考えていると……
「ふあ~…… だめだぁ…… ちゅかれた…… ちょっとねりゅ……」
5歳の身体が耐え難い眠気を訴えて来たので…… タチアナは、ベア美に抱き付いて眠りに着いた。
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「ひぃやん!?」
眠っていたタチアナに…… 強烈な悪寒が走る!?
「な、なに? す…… すごい…… まりょく!?」
不意に感じた強烈な魔力に、5歳のタチアナの身体は…… 堪えきれずに……
ジョボジョボジョボ……
(うひぃ!? や、ヤバイ…… この魔力は…… 魔王クラスだ!! 他に二つの高魔力の反応がするし…… 大人しく魔力を薄く…… 薄くするだ! 周囲の地中の魔水晶に紛れる様に……)
タチアナは、体内の魔力を限界まで放出し…… 自分を魔力でサーチされない様にした。
「くっ……(苦しい…… まるで息ができないみたい…… エルフ病が、かなり進行しているのかも?)」
魔力に順応してしまったタチアナの身体は、魔力の枯渇に拒否反応をしめす。
(意識が…… ダメ! 今、意識を失ったら…… 身体が魔力を回復しようとするから…… そしたら…… あの魔王クラスの魔力の持ち主に見付かる! だから…… 絶対に…… 耐えないと……)
タチアナにとって、長い長い時が過ぎる……
実際には、数時間…… いや、数分も経過していないのだが……
とてつもない魔力の反応が、タチアナの精神を…… ギリギリと締め付ける。
「(ま、まだ…… まだなの…… も、もう…… げ、限界……)!? 魔王クラス達の反応が…… 消えた? はぁ~……」
不意に、タチアナが感じていた強烈な魔力反応が消えたのを感じ……
タチアナは、ゆっくりと息を吐いた……
「ふぅ~…… いまのうちに…… うぅ…… ちゅめたい……(着替えないと……)」
股間が濡れて、冷たくなった服を着替えて……
タチアナは、洗浄魔法をベア美に使うと、横穴の奥の扉に手をかけた。
「このちゃきに…… でぐちが……」
ベア美に肩車して、タチアナは扉を開いた。
「このかんじ…… まちゃか!?」
扉を潜った先には、坑道が広がっていたが……
(この感覚は…… まさか…… ダンジョンなの?)
その感覚は…… 前世で感じた…… 恐怖と探求…… 富と死が混在する場所……〝ダンジョン〟そのものだった。