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プロローグ 「未来の英雄?」

 

「ここは俺に任せて、さっさと逃げな!」


 そう言っていた男性冒険者は、呆気なく魔物に倒された。


 突如として襲来したオークの群れによって、街の被害は甚大だ。普段であれば、この程度の魔物など冒険者たちの敵ではない。

 しかし、この日のオークたちは様子が違った。

 まるで何者かに操られているかのように凶暴で、腕利きの冒険者ですら攻めあぐねていた。

 まさに、手に負えない絶望的な状況である。


 そこに現れたのは、瞳を蒼く光らせた白髪の少女。

 さらに、黒色のパンツを履いたスライムだった。


 少女は倒れている冒険者の元に駆け寄り、声をかける。


「あのっ、大丈夫、ですか?」


「なんとかな……くそっ! まさか俺たちのパーティがオークにやられちまうとは……」


 近くには別の男の姿があった。

 おそらく彼の仲間だろう。この冒険者と同様、見るからに重傷の怪我を負っていた。

 少女は男に一瞥して、魔物の群れに向かって歩き出す。


「私たちが何とかする、ので……えっと……少し、待っててください」


「やめておけ……! 嬢ちゃんは冒険者になってから、まだ日が浅いんだ。下級冒険者が勝てるわけねぇ……だろっ!」


「あ、あんまり喋ったら、その……傷に響きますよ」


 男は傷口を押さえながら必死に説いたが、少女は自らの肩に乗っているスライムを手で持ち上げる。


 そして、そのまま自分の頭に。


「灼熱の雨──《アブレーションシャワー》」


 少女が発声すると同時に、召喚された無数の炎が凄まじい轟音と共に魔物の群れに降り注ぐ。

 まさしく阿鼻叫喚の地獄の炎。

 その身が焼き尽きても尚、ただひたすら呻き声を挙げ続ける数十体のオークの姿があった。


 パチンっと、少女が指を鳴らす。


 その音は衝撃波となり、辺りに立ち込めている熱気が蒸発して雨雲を形成する。

 やがて、その雨に打たれたオークは一体、また一体と跡形もなく姿を消滅させていった。


「ふぅ、終わった。体力を節約できて良かった」


 肩の力を抜いた少女。

 白い髪を靡かせながら、すぐさま男性冒険者に歩み寄って怪我した箇所に手をかざす。

 口を開けて唖然としていた男が我に戻る頃には、すっかりと傷が癒えていた。


「ち、治癒魔法か、すまねぇ。……パンツを履かせているスライムってことは、嬢ちゃん、つい先月に冒険者なったばかりだよな?」


「……そうですけど……パンツは、私が履かせてません!」




 ──この日、一人の少女が街を救った英雄になった。


 少女は下着を履いたスライムを連れ歩いており、その姿は瞬く間に多くの人々の間で噂に。

 その結果、街のあちこちでパンツを履かせたスライムたちが見掛けられるようになったという。


 しかし、それはまだ少しだけ先の話──


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