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第19話 面接と面接

「まずは、なんで探索者になろうと思ったのかを聞かせてください」


 ラシュレー先生の質問で面接が始まった。

 基本はラシュレー先生が進行する感じなのかな。サトラス先生は話しにくそうだからぜひ頑張ってくださいラシュレー先生。


「探索者になろうと思った理由は……いろんな場所を旅してみたかったからです」

「ダンジョン自体が目的では無いんですか?」

「えっと、ダンジョンの中の景色や体験も含めてですね。あくまできっかけなので、今はそれだけじゃないです」


 正直一番不安なのは面接。なぜなら言える理由が全部嘘だから。

 神様にダンジョン行けって言われました! とか言えないもん。


「今の理由は?」

「幼なじみがいるんですけど、その二人と一緒に探索者になってパーティを組むって約束したんですよ。だから目指すのやめようと思ったりはしなかったです」

「その二人はこの試験に?」

「はい、来てます。全員別々の役割なので昼以外は会ってないですけど」

「バランス良く三人バラけてるんですね」


 言われてみればたしかに。回復魔法が得意な人、つまり〈光の加護〉を持ってる人って結構珍しいらしい。

 たしか、生まれた時から持ってるアビリティの種類が全部で十数種類あって、その中の一つだから七、八パーセントの確率になる。全部だいたい同じ確率だけど、回復だけ特殊な位置付けになっている。前衛型のアビリティはいっぱいあるし、後衛の攻撃型もまあまああるけど、回復が得意になるのは〈光の加護〉だけだから希少価値が高いのだ。


閑話休題。

話を進めよう。


「ただ、三人だけで活動しようとは思ってないので、この学校に入って仲間を増やしたいと思っています」

「なるほど。サトラス先生、質問はありますか?」

「無い。次にいってくれ」

「分かりました」


 うーん、無愛想。面接の人選ミスってない?


「では次に、なんでこの学校に入ろうと思ったのかを聞かせてください」

「それは、ダロス島以外の分校のではなくて、ということですか?」

「それもそうですし、直接探索者の資格を取ろうとしなかった理由も聞かせて欲しいです」


 なんでだったかな……。割と最初の方から決めてたんだけど……あ、あれだ。


「カルファー探索記を六歳くらいで読んでから、自然と探索者を目指すならこの学校だと思っていましたね」

「あー、なるほど。それなら納得です。実は私もあれを読んでから本気で探索者を目指し始めたんですよ。何歳の時だったかな……」


 なんか目がキラキラしだしたな、ラシュレー先生。いまから十五年くらい前に出た本だったから……ちょうど世代ってやつかな? 十代くらい。


「先生」

「あ……こほん。では、ダロス島に来るのに躊躇いはなかったですか?」


 サトラス先生の声で、脱線の気配を消し去るラシュレー先生。

 質問は、寮に入って家族と離れることや、大陸から離れて島で暮らすことに対してどう思っているか、ということが聞きたいのだろう。


「そうですね。ここが成長するのに最適な場所だと思っているので。幼なじみとも相談しましたけど、満場一致ですぐに決まりましたね」

「ご両親から反対はされなかったんですか?」

「八歳の時に、探索者になりたいって言ってからは前面的に応援してくれてます。寂しそうでしたけど快く送り出してくれました」

「いいご両親ですね。大切にしてあげてください」

「そうします」


 ラシュレー先生に心からの同意を示す。


「では次に、戦闘スタイルの自己分析と目指している戦闘スタイルについて。今の自分の長所を教えてください」


 長所か……。今日の試験で見た同年代の魔法使いと比べて感じたのは……。

 

「後衛にしては近距離でも戦える方なのかなと思っています。そこはずっと訓練してきたので自信はあります。あとは……魔法の発動速度はかなり速い方だと思います」

「なるほどなるほど……試験での評価と一致してますね。しっかり自己分析ができていると思います」

「ありがとうございます」


 ラシュレー先生は話を聞きながら見ていた紙から目を離して、にっこりと微笑んだ。


「では、理想の戦闘スタイル、どんなことができるようになりたいかを聞かせてください」

「理想……基本的には今の長所を伸ばしていきたいです。高火力のフィニッシャーというよりは、前衛の援護。細かい技術を磨きたいと思っています。そしてゆくゆくは、一人でもある程度戦えるようになりたいですね」


 前衛が戦ってる間に後ろで溜めて、大きい魔法をドカーン! みたいなのより、仲間がちょっと不利になったら魔法を飛ばして助けられるようなタイプがいい。

 一人でも戦えるようになりたいのは、ダンジョンで不測の事態が起こった時に、前衛が敵を引き付けてくれないと何もできませんじゃダメだよねってこと。

 幸い、近距離での戦いは師匠に鍛えられてるからね。


「質問いいか。近距離でも戦えるのが長所と言っていたが、どうやって戦い方を身に付けたんだ?」


 おお。サトラス先生が喋ったよ。

 そしていい質問。師匠のことはどっかで話したほうがいいかなって思ってたところだった。


「従兄の師匠がいて、その人が教えてくれました。魔法は本を読んで覚えたんですけど、実戦的なことは全部師匠の教えです」


 なんだかんだで七年間、ほとんど毎週来てくれたので本当に感謝しかない。

 仕事で遠征だったり、緊急召集されたりで休むことはあったけど、その分二日続けて来てくれたりもした。なんだかんだで尊敬する師匠なのだ。


「具体的にどんなことを教わったんだ?」

「相手を観察して癖や弱点を見つけろとよく言っていました。あとは、お前は魔法使いだから、なるべく相手の間合いでは戦わずに自分が優位な状況を作れと。その二つはずっと言われ続けたので、自分の中に染み込んでますね」

 

 すっかり師匠色に染められてしまったのだ。

 何色だろう……黒かな……。


「……なるほど。答えてくれてありがとう」

「いえいえ」


 相変わらず無愛想だけど、別に私が嫌われてるわけではないっぽい。普段からそういう人なのだろう。

 

「では最後に、何か私たちに聞きたいことがあったら是非、聞いてください」


 定番の逆質問。じゃあ、


「この学校の学食に、お米の料理って出ますか?」

「え?」

「さっき学食で食べた時にはなかったんですけど、別の日なら出たりするのかな、と」


 二人ともすっごいポカンとしてる。

 ようやく無表情の仮面を剥がせたぜ、サトラス先生。


「あったはずだが……最後に聞くことがそれか?」

「おお! あるんですね! やっぱり食生活って大事だと思うんですよ。だから好物が無かったらどうしようと思って。お米があるなら快適に生活できそうです!」

「……そうか」


 なんか呆れられた気がするけど、この情報の価値に比べたら些細なことだ。

 ヴィオラさんに聞きそびれてから、ずっと気になってたんだよね。


「……では、これでルシアさんの面接は終了となります。ありがとうございました」

「ありがとうございました! 失礼しました!」


 挨拶はハキハキと。お米のパワーで上がったテンションのまま、ウキウキと退室した。 

机に置いたスマホが落ちるのに反応して手を出したら、その手は机にぶつけてスマホは床に落ちるというコメディが発生しました。机に端に物を置くのは危ないなと思いました。まる。

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