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第18話 模擬戦と罠

「はっ!」

「参りました……」

「そこまで! 勝者、ナハト」


 戦闘時間、五分。

 突きつけられた槍は、私の敗北を示していた。


「いやー。お疲れ! いつの間にか本気になっちゃった」

「あはは。その割には余力ありそうですけど」


 戦いが終われば、試験官と受験生。対等だった時間は終わり。

 笑いながら話してるけど、めっちゃくちゃ悔しい。相手が大人とか関係無い。本気を出させることもできず、謙遜されるなんて、悔しすぎる。

 この人は別に、悪意があるわけじゃないとは思うんだけど、やっぱり対等な相手とはまだ思ってもらえて無いってことだ。


「お疲れ様。いい試合でしたよ」

「ありがとうございます」


 審判役をしてくれていた女性の試験官が、笑顔で労ってくれる。

 よし、切り替えよう! 次行くぞー。

 

「ルシアさんが大丈夫であれば、すぐに戦もらおうと思ってるんですが……」

「はい。すぐ行けます」

「では、よろしくお願いします」


 そう言って、私の向かいの白線の上に立ち、短めの杖を構えた。審判は男の試験官が担当してくれる。ナハトさんって言うんだっけ。


「ルールはさっきと同じ。ただ、対応できないと判断したら、僕が割り込んで魔法を止めます。もちろん、そこから対応できる場合もあるとは思うけど、安全のためだからその時は我慢してもらうね」

「わかりました」


 まあ、対応できないって思われたら負けって思えばいいからね。

 敗北条件が少し変わっただけ。むしろ相手が対応できないって思わせれば勝ちなら、勝つ方法は増えるはず。


「じゃあ、始めるよ。三、二、一、――」


 開始した瞬間の勝負。早撃ちで勝てなきゃ押し切られる。


「――ゼロ」

「はっ!」

「やあっ!」

 

 一秒もかからずに発射された私のファイアーボール。コンマ二秒の遅れで、相手の魔法も発動する。相手の魔法は風属性。

 衝突する二つの魔法。一拍置いて――爆発。

 

「くっ」

「のわぁっ!」


 二人の体を爆風が襲う。

 あっ。

 爆風に拐われた体は、地面を離れ、そのまま場外へ――


「……勝者、ルシアさん」

「……」

「あ、あはは……」


 そう、場外負けは試験官の女性。

 私はしっかり両足で踏ん張っている。

 審判役のナハトさんは、勝者のコールをしたあと、呆れたように額に手をやっている。女性の方はキョロキョロと私とナハトさんの表情を確認しながら、所在なさげに笑っていた。


「えっと……ごめんなさい」

「い、いえ……」


 気まずい。

 勝ちは勝ちだ。でも、試験としてはもっと評価される勝ち方があったはずなのだ。 実力を見せられたとは言い難いこの勝ち方が、全力を出し切った結果の負けより高く評価されるかは謎だ。 


「……次、いきましょっか」

「……ですね」

「すみません……」


 ま、まあ。一応勝ったし、魔法が拮抗した結果の爆発だから、評価はしてくれるだろう。メモってる人お願いしますね。


「次は二対一だね。ちょっと大人気ないけど……この試験は勝敗じゃなくて、どの相手にどういう対応をするのか、そこを見てるからそのつもりやって欲しいかな」

「分かりました」


 頷くと、「頑張って」と帰ってきた。

 二人が白線の両端に立つ。向かって右にナハトさん、左に女の人だ。

 ナハトさんがコインをポケットから取り出した。


「このコインを投げて、落ちたらスタート。フライングはやり直し。いくよ」


 投げられたコインが回転してるのを視界の端に捉えながら、私は二人の戦術を読み取ろうと観察する。


 女性の方は足をしっかり開いている。さっきの反省が出てるな……。

 ナハトさんはさっきと同じ構え、左足を前に出して、両手で槍を握っている。予想できるのは、ナハトさんが突っ込んで、後ろから魔法で援護というシンプルな戦い方。

 コインが最高到達点に達し、落下が始まったのを感じて思考を閉じる。


 ――カラン。 


「はっ!」


 ナハトさんはさっきと同じく突きを放つ、ように見せて後衛の動きを隠す位置どり。

 私の返しは、右にステップをして、牽制のミニファイアーボール。

 それは左手で穂先の角度変えて相殺される。奥を見ても後衛の女性はいない。

 基本ナハトさんの裏に隠れるつもりらしい。いつでも攻撃はできるだろうから、警戒は怠らないように。


「はあっ!」


 

 お互いに止まった状況からナハトさんが地を蹴り、ジャンプして飛びかかってくる。後ろに避けたら場外か?

 いや、届かない。躱して、着地した瞬間にカウンター! 

 直接攻撃するのもワンパターンだし、趣向を変えてみる。

 着地に合わせて水魔法で魔法で地面を緩めてから、体勢が崩れたら場外に出す!


 一歩下がって、魔法の準備。着地点を見極めろ。

 目を細め、ナハトさんの動きに集中して――目を見開いた。

 加速。空中で、加速した。


 「――っ」


 風だ。

 風魔法で風を起こしたんだ。一拍遅れて理解する。が、そんなものは何の意味もなく、降ってくる槍は止まらない。

 飛ばすつもりで、杖に浮かべた水魔法は、どうしようもなく間に合わない。

 私が取れる選択肢は――


「えっ?」


 伏せること。

 右に傾いて、倒れていく体。だけど相手は上から来てる。下に逃げ道は無い。

 ――だからこれは、反撃だった。


「もがっ!?」


 私が上に投げた杖には、撃つつもりで溜めていた少量の水。

 左斜め下からの突然の反撃。顔から水に突っ込んだナハトさんは、困惑の声をあげる。

 槍は仰向けに倒れた私の上を通過して、地面に突き刺さった。投げた杖はナハトさんの横に落ちる。


「ていっ!」


 刺さった槍を抜こうしてる隙に飛び起きて、懐へ突進。

 体当たりをかましてから、拾うために落ちてる杖に手を伸ばし――

 

「あっ」


 風で杖が場外へ飛んでいくのを眺めた。

 考えてみれば当たり前のこと。私が飛び起きて、体当たりをしている間に、杖に魔法の照準を合わせることなど造作もないのだ。

 今更気づいてももう遅く、まんまと杖《餌》に釣られた私は、首の後ろに槍を突きつけられた。


「参りました……」


 今日二度目のサレンダー(降参宣言)をして、ガックリと項垂れた。



 ********


 

 模擬戦を終えて、労ってもらったり少し感想を言い合ったりしたあと、私は面接をするために校舎の中を案内されていた。


「ここになります」


 案内の人に連れてこられたのはドアが開けっぱの小さな部屋。中には二人の教師がいた。


――コンコンコン。


「どうぞ」

「失礼します」


 横のドアを三回ノックしてから入る。

 この世界で三回やる必要あるのかはわからないけど一応やっておく。


「どうぞ、座ってください」


 女性の教師に促されて椅子に座る。あれ、この人って……。


「私は魔法科教師のステファナ・ラシュレーです」

「俺は剣術教師のギルバルト・サトラスだ」


 やっぱり最初に喋ってた人だった。

 そのあとに名乗ったのはガタイのいい男の教師。なんか無表情。


「ルシア・フォン・ファーナルです。よろしくお願いします」


 座った状態でペコリと挨拶する。

 ラシュレー先生は少し手元の紙を確認してから、口を開く。


「えー、面接ということで、これから何個か質問させていただきます。だいたい一〇分を目安に進めていきます」

「よろしくお願いします」


戦闘描写ムズカシイpart2

そして迫りくるストックの終わり……

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