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第16話 試験と無自覚

 受付を済ませたあと、私たちは別れた。

 私が後衛、アレットちゃんが前衛、ミリーゼちゃんはヒーラーで、全員役割が違う。だから試験の内容も受ける場所も別になるのだ。

 今は案内の人に先導されて、訓練場らしき場所に来たところ。受験生たちは、試験官たちがいる方向を向いて並んでいる。横に六人、縦に二十人くらいで列になっている。試験官たちは見えやすいように、即席っぽい舞台の上に集まっている。

 私は前から三列目にいる。


「広いな……」


 訓練場はとにかく広くて、百人以上の受験生が余裕で入れてしまった。受験生たちはだいたい杖、たまに弓を持っているといった感じ。

 きょろきょろ周りを観察していると、いかにも魔法使いなローブを着た女性がマイクみたいな拡声の道具を持って、舞台の真ん中に立つ。

 見たところ二十代の若い女性だ。少し堅い表情で小さく咳払いをしてから、喋り始める。

 

「受験生の皆さん、こんにちは。私は魔法科教師のステファナ・ラシュレーと申します。今回の試験は皆さんの想像力、判断力、今までの努力。様々な角度から、貴方たちがこの学校が求める人材であるのかを判断させていただきます。この学校の入試試験は点数制ではなく、どこか一つでも光る長所があれば十分に合格の可能性があります。また、既にご存知かと思いますが、上位入学者は学費の一部が免除されます。ぜひ最後まで諦めず、気を抜かず、全力を尽くしてください」

 

 パチパチパチ。受験生たちから、ラシュレー先生に向けて拍手が起こる。先生は照れたような表情をしながら、他の試験官のところに戻る。

 

 求める人材って……就職かよ。

 とか思ったけど、実際命に関わるからそこはしっかりしているのだろう。入学したらダンジョンに行くことになるからね。

 それ以外は……全体的に好感度が高いこと言ってた気がする。

 普通いいところしか話さないか。

 実際、最後まで諦めないのは大事だしね。


「では、試験を始めます。最前列の人たちはこちらに来てください。後ろの方たちは別の会場に移動してもらいます。案内の指示に従ってください」


 試験官に案内されて、最前列の受験生たちが舞台の裏に回る。

 そこにはいろんなサイズの的が、いろんな距離で置かれていた。


「この試験では、最初に一番得意な魔法を使ってもらいます。そのあとは、決められた条件に従って魔法を使ってもらいます。的は魔法に対しての耐性が高いので、壊れる心配はありません。安心して全力をぶつけてください」


 試験官が大きな声で説明している。

 得意な魔法……得意な魔法かぁ。火の魔法だってことは確かなんだけど、うーむ。

 使い慣れてる魔法を使うのが無難かな。とりあえず他の人たちを見てみよう。

 最初にやる子はキツいだろうな。ある程度流れが出来てないと自分のやり方が合ってるのか不安になるよね。かわいそう……と思いつつも、最初にやる男の子を観察させてもらう。

 

 まずは得意な魔法。杖を上に向けて……なんかでっかい火の玉を作ってる。直径五〇センチはあるかも、けど時間が長いな。十五秒くらいかけて放った魔法は、正面にあった的に当たって爆発した。

 

 次。今度は前に杖を向けて、五秒くらいで発動。さっきより勢いよく放たれた直径一〇センチくらいの火の玉は、小さめの的に直撃した。多分、速度重視のお題かな?

 

 次。また杖を掲げて、中くらいの火の玉を四個作る。杖を振り下ろすと、火の玉は別々の的に向かって飛んでいった。けれど、その内の二発は外れ、もう二発も直撃とは行かなかった。きっと複数の的を同時に狙うお題。これはどれだけの的を狙うかもけっこう大事そう。

 

 次。男の子は試験官と少し話してから、一つの的を指差した。その的に杖を向けて、発射。かなり遠い的に直撃した。あの距離でど真ん中に当てるのは結構すごいな。私はできるか怪しい。この距離を狙ったってことは多分、射程距離と、それを把握できてるかを試されている。


 次。最初と同じように、杖を上に向け、大きな火の玉を生成。最初より少し遠い的へ放つ。ドカーン! 威力重視って感じ?


 次。近めの的に杖を向けて、一発。横の的に狙いを移して一発。さらに横の的へ一発。計三発の火の玉を放って、男の子は額の汗を拭う。これで終わりっぽい。


 得意な魔法のあとのお題は、速度、複数同時、遠距離、威力、連射。

 公平性を考えると、お題が大きく変わる可能性は低いと思う。……やっぱ最初の人不利だよね、これ。


「次の方ー!」


 さあ、次も観察して作戦を考えよう。



 ********



「次の方ー」

「はい!」


 学校って返事がいいかで先生の好感度変わるよね。声張るの苦手だったから嫌だったなぁ。というわけで元気に返事。


「まずは得意な魔法を使ってください」

「分かりました」


 頷くだけでもいいのかもしれないけど、愛想悪いって思われるリスクを考えてつい返事をしちゃう。おへんじ、だいじ。


 と、ふざけるのはここら辺でおわり。

 狙うのは正面一〇メートルくらいの的。イメージはアニメみたいな派手なやつじゃなくて、今まで練習で使ってきた、基礎的な魔法。

 背伸びして、失敗みたいなのは絶対後悔するから、今までの努力を信じよう。


 何十、何百と使ってきた魔法。いわゆるファイアーボール。

 的に杖を向け、一瞬の溜め。弾くイメージで火の玉を飛ばす!!


 ――ドカン!!


「うぇっ?」


 おおう。結構いい音したな。こんな音すると思ってなくて変な声出たのはご愛嬌。

 どや? と試験官を見てみると、絵に描いたような驚きの表情がそこにあった。お目々ぱっちりですね。


「あのー、次は……」

「あっ。つ、次は魔法の速度を意識してみてください」


 ぬふふ。なんか無自覚系俺ツエー主人公になった気分。調子乗ると痛い目遭うからこのくらいにしとこう。


 次の的は速度重視。さっきも割と速度重視だったからな……だから変化をつける。

 弾速に全部のリソースを注ぎ込むつもりで、形状は銃弾をイメージ……!


「はぁっ!」


 ――シュンッ。


 命中。杖から放たれた炎の弾丸が、的の中央に当たって、小さな傷を作った。

 え? 傷付いてんじゃん。魔法の耐性あるって言ってたのに傷付けちゃいましたけど? 速度重視で撃ったのに傷付けちゃいましけど? もしかして私最強では?



 

 なんて思えていたのは十分前まででした。


 ――ドカァァァン。


 この爆発音の発生源は、魔法。白髪の女の子が使った風魔法が、訓練場で一番でかい的を破壊した。 うっそぉ……。

 右半分が吹き飛んだ的と、それを引き起こした少女を、この場の全員が見つめてる。


 視線を集める当人は、しれっとした表情で、試験官に次のお題を質問してる。

 これが本当の無自覚系俺ツエー主人公なのか……。


「ん? 皆なんでこっち見てるの?」


 天然物っ! これは勝てない。


どんどん減っていくストックに戦々恐々としています。

そして指をやけどして片手でタイピングしてるという……。


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