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第12話 十五歳と出立

 ファーナル領の北。王国北西に位置するラングス領。

 十五歳になった私は、いまそこにいる。

 え? 時間飛びすぎ? だってたいして書くことないし。

 

「ねえナナリアー、あとどのくらいで着くのー?」

「ルシア様、何回聞いても五日かかる事実は変わりませんよ」

「ぐへぇー」

「もうすぐルシア様のご友人と合流できるので、それまで我慢してください」


 馬車の中から、御者をしてるナナリアに絡む。私の呼び方は長いので変えてもらった。ほんとは様もいらないんだけど。

 雲一つない空の下、ファーナル領から一日以上かけてラングス領に入り、ミリーゼちゃんたちとの合流地点である首都に向かっている。


「首都までどんくらいー?」

「あと、三十分ほどで着きます」

「じゃあそれまでしりとりしよー」

「ルシア様、わたし今御者を」

「私からね。リス」

「話聞いてますか!? スイカ!」


 文句を言いつつ、続けて返してくれる。

 ナナリアは何でも付き合ってくれるから優しい。

 そして、しりとりはこの世界でもポピュラーな遊びだ。

 

「海賊。ナナリアは私が入学したら帰っちゃうんだよね?」

「はい。でもご友人と一緒ならきっと寂しくないですよ。栗」

「あー、そうだねー。二人ともかわいいからなー、ナナリアもかわいいけど。リンゴ」

「あんまり軽々しくそういうこと言わない方がいいと思いますよ。ゴ……ゴ?」


 濁点ってむずいよね。分かる。

 とか考えて忠告を聞き流す。なんか二、三年前くらいから、女の子がかわいく見えてしょうがないんだよね。同性だしいっか、って思ってナナリアとかには結構スキンシップを取っちゃう。かわいいのが悪い。


「かわいいって思ったらちゃんと伝えたいじゃん。ナナリア今日もかわいいよー」

 

 好きなら言っとかないと、いつ死ぬかなんて分かんないし。


「はいはい。ゴマ」

「本当にかわいいと思ってるからね。マンゴー」

「はあ、ありがとうございます。……ってまたゴ!? わかんないですよー!」

「がんばれー」


 この旅が終わったらしばらく会えないし、今はナナリアを堪能するとしよう。


 

 ********

 


 ラングス領の首都。その中央、ラングス伯爵邸で私は二人の友人と合流していた。

 馬車を屋敷の前で止めて降りると、ミリーゼちゃんとアレットちゃんが並んで迎えてくれる。


「会いたかったよ二人とも!」

「お久しぶりですわ!」

「私も会えて嬉しいよ」


 成長した二人はめちゃくちゃ可愛くなった。

 アレットちゃんは、スラッとした体格に、ショートヘアに整えられた銀色の御髪おぐし、理知的な光を宿す瞳は。

 かわいいより、カッコいいとか、綺麗って表現が合ってる気がする。

 

 ミリーゼちゃんは、真っ赤な巻き毛がふわふわしていて可愛いぞい。それだけだとふわふわした印象だけど、パッチリとした瞳と、大輪の花のような笑顔が、元気なミリーゼちゃんを表している。


 数ヶ月に一回は合っていたとはいえ、成長期の彼女らは前に見た時よりも、ずっとかわいくなっていた。

 そんな二人を見た私は、師匠との訓練で逞しくなった脚で、二人のもとへ駆け寄る。


「とりゃー!」

「わっ!!」

「ルシアは元気だね」


 駆け寄った勢いで二人に抱きつく。あ、いい匂いするー。

 もう分かってるかもしれないけど、今向かってるのは探索者学校。

 ミリーゼちゃんも一緒に試験を受けることになった。

 最初は、巻き込んじゃったなあ、とか思ってたんだけど、今は一緒にいられることが嬉しい。


「ルシアちゃん、アレットちゃん、ミリーゼをよろしく頼む」

「はい!」

「任せてください」

「もうっ! お父様、わたくしだってもう大人ですわ!!」


 ミリーゼちゃんのお父さん、ラングス伯爵が挨拶してきて、ミリーゼちゃんが口を尖らせて抗議する。

 ラングス伯爵とは何度か話したことがあるけど、凄くいい人だ。そしてミリーゼちゃんを溺愛してる。


「ははは。すまないミリーゼ。親というのは心配性なんだ」

「……お父様はどーんと構えていてください。必ず、立派になって帰ってきますわ!!」


 そう宣言して、四人乗りの馬車に入っていくミリーゼちゃん。

 伯爵は、それを驚いた目で見つめた後、少し寂しそうに呟く。


「僕は、一緒に居れるだけで嬉しいんだけどなあ……」


 辛うじて聞き取れた、父親としての独り言。

 ……お父さんも、こう思ってたのかな。


「ルシアも乗って」

「あ、うん」


 いつの間にか馬車の中にいるアレットちゃんに呼ばれる。

 合流したことによって、旅のメンバーは六人になった。

 私、ミリーゼちゃん、アレットちゃん、ナナリア。あとは二人のお付きが一人ずつ。これで六人。


「よろしくお願いします」


 御者台にいる二人の女性に挨拶して、馬車に乗り込む。続いてナナリアが乗ってくる。御者は三人の従者が順番にやるらしい。ナナリアだけサボってる訳じゃないよ。


「行ってきますわ!!」

「「いってきます!」」

「「「「行ってらっしゃーい!!」」」」


 ラングス家の使用人たちと、ラングス伯爵に見送られて馬車は出発した。

 あ、伯爵泣いてる。



 ********

 


「ついに三人で学校に通えますわね!!」

「八歳の時にした約束だから……七年も経ってるんだね」


 無邪気に意気込むミリーゼちゃん。アレットちゃんの言葉で、七年を重みについて考えて、七年で重くなった場所を見る。


「みんな大きくなったよね。……特にミリーゼちゃん」

「へ? わたくしが一番小さいですわよ」

「ルシアが言ってるのはね……これのことだよっ!!」

「はうっ! ちょっ、アレットさんっ!!」


 私がたわわを見ながらしみじみ呟くと、アレットちゃんが抱きついて、たわわを揉む。アレットちゃんのえっち。

 馬車の中は、前にアレットちゃんとミリーゼちゃんが。後ろに私とナナリアが座っている。

 

「ナナリアも揉んで欲しい?」

「はあ。そういうところですよ……」


 手をワキワキしながら聞いたら呆れられた。

 三人で盛り上がったらナナリアが寂しいかなって気遣った優しい主人に対してこの反応は酷い。およよ……。


「そっ、それを言うならわたくしはお二人の身長が羨ましいですわ!!」


 なんとかアレットちゃんの拘束から抜け出したミリーゼちゃんが、息を切らしながら言う。アレットちゃんは残念そうに自分の手を見ている。私は大歓迎でっせ。


「でも、特別背が低い訳じゃないよね」

「そうだよね。むしろちょうどいい」

「でもわたくしは大きくなりたいですわ」


 ミリーゼちゃんの身長は日本人成人女性の平均くらいで、私はそれより数センチ高いくらい、アレットちゃんはそこからさらに数センチ高い。

 アレットちゃん、私、ミリーゼちゃんの順番。ちなみに高さではなく、《《大きさ》》は逆の順番だ。どことは言わないけど。


「いえ、やっぱり物理的な大きさはいいですわ。わたくしは探索者としてビッグになりますわ! 今は、世界一の探索者になるわたくしの序章。うだうだ言ってたら格好悪いですわ! 堂々と胸を張っていますわ!!」

「あはは。ミリーゼは壮大だね〜」


 宣言通りに、大きい胸を張るミリーゼちゃんを、アレットちゃんが茶化す。

 しかしミリーゼちゃんはキョトンとした顔で、


「あなた達もですわよ。一緒に世界一になるんですもの」

「へ?」

「だってわたくしが得意なのは光魔法ですし、一人じゃ戦えませんわ。二人にいっぱい活躍してもらわないと世界一は無理ですわ」


 当たり前のように、三人で世界一になると言った。

 あまりにも当然のように言うものだから、アレットちゃんと顔を見合わせて、笑ってしまった。

 

「あっはは。そうだね。一緒に、強くなろう」


 その後しばらく、ナナリアからの視線が生暖かったことは言っておこう。


風花雪月やってて投稿遅れましたごめんなさい。

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