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第11話 侍女と姉兄

 暖かい日差しに照らされながら、私たちは賑やかな街を歩いていた。

 

「あ、見て! あの焼き芋おいしそう! あれは果物売ってるのかな!? でも、あっちの店の串焼きも食べたい!! ねえ、どうする!?」

「ミナお嬢様、少しはしゃぎ過ぎかと」

「だって街を歩くなんて初めてなんだもん!」


 私の前を歩くミナがあっちこっち指を差して、目を輝かせている。元気!

 その横にマリーがついて、人とぶつからないようにコントロールしている。


「あはは。ミナは元気だね」

「そうですね。いつもミナお嬢様には元気付けられます」

「ね! いっつも楽しそう」


 ミナの少し後ろを、私とナナリアで歩いてる。

 街は観光客らしき人がいっぱいいて、とても活気がある。さすがはファーナル領の首都ということだろう。


「おお! ナナリアちゃん。新しく苺を仕入れたんだよ。ラングス領産の甘ーいやつだ。安くしとくよ」

「ホントですか!?」

「もちろん。いつもいっぱい買ってくれるから助かってるよ」

 

 八百屋のおばちゃんがフランクに話しかけてきて、ナナリアも楽しそうに返している。仲が良さそうな雰囲気。

 いろんな野菜があって、お客さんも結構入っている。家の料理に使われてる野菜はここで買っているのかな。


「じゃあ買おうかなー。あ、でもルシアお嬢様苺食べたいですか?」

「うん」

「なら買っちゃいますね。おばちゃんこれくださーい!」

「まいどあり!」


 そういえばラングス領ってミリーゼちゃんのとこだよね? 苺が名産なのかな。

 買った苺を持って、ミナのところへ行く。服屋を見ていたミナがこっちに振り向いた。


「あ、来た! 急にいなくなってるからビックリしたよ!」

「いやあ、ごめんねぇ。ナナリアがホイホイ付いていっちゃうから……」

「誘拐された子どもみたいに言わないでください! 顔見知りのおばちゃんと話してただけです!」

「あはは!」


 私のおふざけにしっかり乗ってくれるナナリア。

 でも本当に誘拐されそう。かわいいし。



 ********



「そろそろ帰りましょうか」

「楽しかったー!!!」

「結構いろいろ回ったね」

「だいたい何か食べてましたね。お腹いっぱいです」


 あれから数時間歩き回って、気が付いたら夕方。

 ナナリアが言ったように、串焼きに焼き芋、ホットドック、とにかくいろいろ食べた。だいたいミナが食べたがったのをみんなで分けて食べていた。

 

「あ。結局髪飾りの店行けませんでしたね」

「あー! 忘れてた!」

「今日は南を回ったので……あの店は西にあったから仕方ないですね。またいつか行きましょう」


 ナナリアは苦笑いしながらそう言う。

 これはもしやデートのお誘い? 

 いや違うか。私8歳だからね。どっちにしろ行くけど。


「約束だよ!」



 ********

 


 家に帰ってきて、今は夕食タイム。私とミナは帰ってきた時点で既にお腹いっぱいで、さっさと食べ終えてしまった。ミナはもう部屋に戻った。私もいつもならそうしてるんだけど……。


「……」

「……」


 姉さんと兄さんがチラチラ見てくるのだ。二人は私の正面の席に並んで座ってる。

 放置してもいいけど、お父さんとお母さんも様子を見てる感じで、なんか落ち着かない。

 これは早めに聞いといた方が良さそうな気がする。


「二人ともどうしたの?」

「えっ! えっと、どうもしてないよ?」

「そ、そうだぞ。ルシアこそ急にどうした?」


 不自然すぎる。隠せてるつもりなのだろうか。


「いや、そんなチラチラ見られたら分かるって」

「「うっ……」」 

「で。どうしたの?」


 項垂れる姉と兄に理由を聞く。だいたい予想はついてるけど。


「えっと、ルシアが探索者になるつもりだって聞いて」

「ああ。本当に目指すつもりなのか?」


 少し身を乗り出して、真剣な表情で聞いてくる。

 今までで一番真面目な顔をしていて、興味本位で聞いてる訳じゃなさそう。

 ならば、私も正直に話そうじゃないか。とはいかないんだよね残念ながら。


「うん。本気だよ」

「そっか……」

「俺は応援するぞ」


 セド兄さんがそう言って、表情を崩す。


「私も応援する。ルシアはちゃんとやりたい事があって良かった」


 ケイ姉さんも顔を綻ばせる。

 二人とも応援してくれてホッとした。

 でもケイ姉さんの言い方がちょっと気になる。やりたいことがないのかな。

 姉さんは今十五歳。ちょうど、将来に悩む事が多い時期だ。日本基準だけど。

 実際、私も日本にいたときは何になりたいかなんて決まってなかった。


「二人はなにかやりたい事ないの?」

「えっ?」

「……」


 ちょっと切り込んだ質問。姉さんは驚いて、兄さんは背もたれに体を預けて、顎に手をやる仕草。さっきから見守っていた両親も目を見張って驚いてる。

 この流れなら私がこれ聞くのおかしい事じゃない気がするんだけど……。

 実はタブーだったとかだったら困る。


「あ、いや。話したくないならいいんだけど」

「うーん。私、ないんだよね。だから、まだ八歳なのにやりたい事がちゃんとあるルシアは立派だよ」


 自嘲するような笑みを湛えながら、私を褒める姉さん。

 優秀な妹に見えてるんだろうか。前世の記憶のおかげで少し大人びた私は。

 ずるしてる私と比べてもフェアじゃない。


「……別に、早ければいいってわけじゃないと思うけど」

「……そっか。そうだね」


 むしろ私は神様との契約があるってだけで、ちゃんと悩むことすらしてない。

 流されるまま生きている。姉さんが卑屈になることないって。

 その想いが伝わったわけじゃないだろうけど、姉さんの表情はもう明るかった。


「ありがと。私はいっぱい考えて、いっぱい悩んで、答えを出すよ」


 前に進んだわけじゃないけれど、それでも笑った姉さんの顔は綺麗だった。

 よかった。


 前世の記憶がある私だけど、この世界の家族も私の家族だから、家族には笑っていて欲しい。


 そうだ。神様との契約を果たしたら、家族とゆっくりするのもいいかもしれない。

 私もまた、生き方を模索してる最中なのだ。もちろん、笛は壊さなきゃいけない。でも、ダンジョンのことだけじゃなくて、そのあとも考えてみよう。時間はいっぱいあるんだから。

 

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