プロローグ 未来と過去
とある異界の森の中。武器を持って歩く、三人の少女がいた。
「うん。結構倒したんじゃない?」
「そうだね、今日はこれくらいにしとこっか」
「え、でもまだ四時ですわ。もうちょっとなら大丈夫ですわよ?」
金髪の少女が問いかけて、それに答えるのは銀髪の少女。赤髪の少女は二人の判断に疑問を呈する。
「うーん。でも稼ぎは十分だと思うよ」
そう言って、金髪の少女が指差した袋の中には大量の石。赤い菱形の石が大きな革袋の半分程度まで積み重なっている。
「お金の話じゃなくて、もっといっぱい探索したいってことですわ! 三人でダンジョンに入るなんて、次はいつになるかもわからないですわ!!」
「でもあっちで待ってる三人も、勝手に探索して、帰って来なかったら拗ねると思うよ?」
「そうそう。それにこの三人で街を回るってのもいいんじゃない?」
金髪の少女の提案に赤髪の少女は食いつく。
「それは素敵ですわ! この街の屋台は珍しいものがいっぱいあるって聞きましたわ!」
「じゃあ屋台まわるかー。プリン食い尽くすぞー!!!!」
「売ってるかなプリン……」
銀髪の少女のプリンへの熱量に苦笑するのは金髪の少女。
「売ってなかったら作ればいいですわ!!」
「いや、作ったら回れないじゃん」
「屋台なんか回らなくてもプリンが食べれるならいいじゃん!?」
「わたくし、屋台は回りたいですわ」
「え!? プリンがいいよ!?」
「プリンは別の日に作ればいいですわ」
「なっ……裏切られた」
「あはははは。ドンマイ」
手の平を返す赤髪の少女。プリンに一喜一憂す銀髪の少女。その二人を見てケラケラと笑う金髪の少女。
武装してるにも関わらず、どこか和やかな雰囲気だ。
「あ、そうだ」
「ん?」
「右から来てるよ」
「うん。わかってる」
少女たちの右側の茂みから、赤い眼の狼が飛びかかって来た。
しかし、いつの間にか銀髪の少女が槍を持っていて、無造作に狼の頭を刺す。
頭に槍が刺さった狼は、黒い光とともに消滅した。
「さっすが」
「いや、私が気付いてないと思ってたならもっと早く忠告してよ。遅い」
「気付いてると思ってたからね」
「人任せ……」
一応忠告をすることで動かなくていい理由を作ったらしい。
「ちっちゃい魔石ですわね」
「まあ、あいつが落とすならそんなもんじゃない?」
赤髪の少女が、狼が消えた場所に落ちていた赤い石を拾って、金髪の少女が持つ革袋へ入れる。
「奥に行ってないから仕方ないですけど、今日は小さい魔石しか手に入りませんでしたわ」
「なに言ってるの? 大きいのあるよね」
「へ? どこですの?」
「それはね……ここだよっ!!」
「はわぁっ!」
銀髪の少女は赤髪の少女に飛び付き、大きな何かを揉む。それを見た金髪の少女がぎょっとして、抗議する。
「なっ……ずるい! 私が魔石持ってて混ざれないのに!!」
「ふっふっふ。私が育てた大きな果実。触る権利くらいあるよね?」
「いっ、いつにも増して手つきが嫌らしいですわ……」
戦慄したように赤髪の少女が呟く。
「いいなあ……てか育てたの私だし」
「ちょっと! ハンカチ噛んでないで助けて欲しいですわ!!」
ハンカチを噛み、ぐぬぬと唸る金髪の少女。
赤髪の少女のSOSに応え、銀髪の少女を引き剥がす。
「はいはい。ダンジョンで油断しない」
「油断してない。細心の注意を配りながら揉んでたんだよ」
「どっちにしろ羨ましいからダメ」
そう言って銀髪の少女にデコピンする金髪の少女。
「いてて……そっか、妬いてたんだね」
「はいはい。出口見えたよー」
「明日は休暇ですし、しばらくダンジョンとはお別れですわ」
「ダンジョンジャンキーがいる……あれ、明日休みなの?」
「うん? あー、うん休み。明日はほら――」
ダンジョンの出口である空間の亀裂に向かいながら、金髪の少女は思い出す。
「――私たちの一周年だよ」
この世界に来てからの日々。神様と話して、生まれ変わって、字を覚えて、友達ができて、学校に通って、仲間が増えて、ダンジョンを探索して。
異世界に来て、ホントに良かった。そう、噛み締めた。
「私たち六人の、一周年」
ルシア・フォン・ファーナルは転生者だ。
「さあ、戻ろう。仲間が待つ場所へ」




