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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
ふあゆう
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四十二話 五心一体。

唖然とした。

生き残っている【写し持ち】、【刀持ち】は映像を見て唖然とした。

庇護欲をそそられる美少年があっという間に青年の肉体に変化する瞬間を見て唖然とした。


唖然とした。

受像器ごしで見ていた観客達は唖然とした。

非力そうな男子が刀を手にして実の父親に危害を加えた姿を見て唖然とした。


箒が盾恒の足を掴んで引きずってどこかに運んでいくところで映像が切り替わった。


「…なぜ、なぜこんな事に!?」


映像を見ていた盾恒の部下の内の一人がそう言ったところで他の部下達も連鎖するように口を開く。


「盾恒様、あんな事を言うなんて。」

「きっと何かの間違いだ!」

「今はそんな事どうでもいい! それよりも剣様の事だ。なぜ父親である盾恒様に危害を加えたんだ?」

「きっと流魑縷とかいう女に怪しげな術で洗脳されたんだ!」

「そうだとしても、流魑縷は盾恒様が殺したんだぞ。なぜ洗脳が解けない?」

「剣様の姿が変わった理由も分からない。」

「とにかく、盾恒様はまだ生きている! 俺達がこの場にいる事が何よりの証拠だ。早くお助けに行くぞ!」

「そうだな!」

「急いで行くぞ! まだ遠くには行っていないはずだ。」


混乱しながらも盾恒の部下達は団結し、盾恒と剣を助けに向かおうとする。

その矢先。

偽物の空に暗雲が立ち込める。雲は盾恒の陣地を中心に広がっていく。

突如はるか頭上に現れた暗雲に盾恒の部下達は戸惑う。

ぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。雫が盾恒の部下の誰かの肌に触れた時


「痛っ!?」


強烈な、火傷を負った時のような痛みを感じた。一度や二度だけでなく、雫が素肌の上に落ちるたびに感じる。服の上に雫が落ちた時はそこが溶けていき穴が空く。


「…おい。まさか、これって」


答えに行き着いた部下達もいたが、分かったところでもう逃げ場も逃げる時間もない。小雨は一気に豪雨となる。酸の雨が盾恒の部下達に向かって降り注ぐ。悲鳴は雨の音でかき消されていった。



◆◇◆◇◆



「みなさんどろどろに溶けてくれるといいのですが。」


軍服を着て防毒面をつけている少女が水模様の番傘のようなものを持って盾恒の陣地を遠くから見ていた。

少女の背後には【飛間】の【刀持ち】の死体兵士と縛られて地面に転がされている盾恒がいる。


「ひぃ! た、盾恒陣地にいた【写し持ち】が全滅! とても映せないくらい、強力な酸によって溶かされています!」


しおんの実況で結果を知った少女は防毒面の下で嬉しそうに口元を緩ませる。


「よかった! (すい)も兄様達の役にたてましたよね?」「もちろんだ。偉いぞ彗。」「えへへ。これを使ってもっともっと兄様達の敵をころしますね!」


少女、彗の持つ番傘のようなもの名前は【花剰(かじょう)】。天野が与えた刀の一つだ。

能力は水増。

僅かな水を【花剰】に入れる事によって大量の水を生成する事が可能。水だけでなく液体であればなんでも増やし、それを放出する事も可能。出す力を調整する事が可能で高圧水で相手を攻撃したりもできるが、【花剰】の能力はそれだけではない。

【花剰】を操作すれば雨雲を作り出す事も可能。水を入れればただの雨雲を。砂糖水を入れれば甘い雨が降る雲を。酸を入れれば多くを溶かす酸の雨を降らせる雲を生み出す事ができる。ただし雨雲を作るには時間がかかる。


「彗。新しい雲を作ってくれ。次は薬の方だ。」「分かりました。」「危ないから気をつけろよ。」


彗が新しい雲を作るために懐に入れていた赤い液体が入った容器を取り出すと蓋を開けて【花剰】の持ち手に空いている穴に慎重に液体を入れていく。全部入れ終わった後は【花剰】をしまう。刀をしまっている間でも雲を作る準備はできる。


「それじゃあ箒兄様。縁切兄様。流。よろしくおねがいしますね。」「分かった。」「任せろ。」「了解。」


彗がそう言うと、肉体が変化していく。今度は箒の姿へと変わる。


「次はどうするんだ?」「そうだな。死体兵士はまだまだいる。そいつらを操って大人を殺しつつ時間を稼ごう。」


箒の持つ刀、【腐花】の能力は傀儡。

【腐花】を使って死体を地面の下に埋める事によって言う事を聞く死体兵士を作り出す事ができる。

近くにいれば複雑な命令を従わせる事が可能で、遠くにいる場合は単純な命令しか与えられない。

死体兵士となったものは生前の能力を使う事ができる。例え【刀持ち】であろうと死体兵士をなれば刀の能力が間接的に使用が可能。


「こいつはまだ殺したら駄目なのか?」「俺としてはもっともっと痛めつけてからこいつを殺してもらいたいな。」「そうか。だったら大人がいっぱいいる所に連れてってくれ。こいつを引き摺りながら大人を殺せば文句はないだろ。」「いいだろう。ただし劣勢になったらすぐに撤退するからな。」「おう。」


箒が死体兵士の持つ【飛間】を使って転移する。

場所は【水の島】と【木の島】のもの達が争っている中間地点。



◆◇◆◇◆



さまざまな異変が起こっている中、【水の島】と【木の島】のもの達は構わず争い合っていた。

そこに乱入するものが現れた。


「なんだあいつは!?」

「今すぐ加賀見様と洞元様に連絡しろ!」


槍のようなものを持った防毒面をつけた青年、縁切が【水の島】と【木の島】のもの達を無差別に殺している。


「痛い痛い痛い! やめろ離せ!」


縄で縛ったままの盾恒を引き摺りながら縁切があちこち走ったりするため盾恒は痛い痛いと叫ぶが縁切は構わず引き摺り続ける。


「止まれ!」


反撃しようと【水の島】のものが縁切に攻撃しようとしたが


「おっと危ね。」

「ぎゃっ!?」


縁切は引きずっていた盾恒を掴み上げて盾恒を盾がわりに攻撃を受ける。


「こいつ、人を盾に!」

「伸びろ!」


驚愕する【水の島】のものを縁切は刀を伸ばして喉元を貫きそのまま薙ぐ。


縁切の持つ槍の形をした刀の名前は【変花(へんか)】。能力は変質。

長さ、太さ、重さなどが変えられる。形を変えたい時は言葉に出さなければならない。

長さを変えたい時は「伸びろ。」

太さを変えたい時は「大きくなれ。」

重さを変えたい時は「重くなれ。」

持ち主の言葉に反応して【変花】は変化する。


「た、助け」

「行くぞお父様!」


盾代わりにした盾恒を地面に叩きつけて縁切は再び走り出す。走りながら【変花】を使って多くのもの達を殺していく。


「兄さん。僕にもやらせてもらえないかな?」「いいぞ。無理はするなよ。」


縁切の手元から【変花】が消え、立ち止まる。

それを見て好機と判断した数名が襲いかかる。


「ちょうどいい時に来てくれた。」


そう言って流は刀を襲撃してきた内の一人に向け引き金を引いた。

弾が額に着弾した瞬間、襲撃したものの頭が弾け飛んだ。


「…へ?」


顔や体に血や体の一部が飛び散り、唐突に死んだ仲間を見てもなお現実感が湧かなかった。その隙をつかれて流のそばにいたもの達は全員流の手によって同じ末路を辿った。


拳銃の形をしているが流の持っているのは【花植(かしょく)】という名前の刀だ。能力は爆弾。

爆発能力を持つ弾丸を打ち込む事で任意の場所、時間に爆発させる事ができる。

地面に撃てば即席の地雷に。

人に撃てば木っ端微塵に。

爆発させる時は念じればよし。


「こうして見ると凄まじい威力だな。」「そろそろ行くぞ。囲まれたら厄介だ。」「了解。」


流の近くにいたもの達を片っ端に爆殺した後、流の手元から【花植】消え、その次に現れた【腐花】を箒は手にする。


「さぁ行くぞ。」


呻き声を上げている盾恒を縛っている縄の端を掴み、転移してやって来た【飛間】を持つ死体兵士の肩に触れる。その直後、死体兵士、箒、盾恒はその場から一瞬でどこかへと転移していった。



◆◇◆◇◆



「どうして、どうしてあいつは刀を四つも持っているんだ?!」


代わる代わる刀を操る箒達を見て観客達は騒然としていた。

【刀持ち】が持てる刀は形は様々あれど一人一つのみ。例外は存在しない。そう認識していた。


「一人じゃないからさ。」


観客席に座っていた天野はそう言うが、周りにいる観客達は天野にまだ気がついておらず、それぞれの考察を話し合ったり考え込むのに夢中だ。


「一人じゃないからさ!」


結果的に無視された天野は会場の中央に行き拡声器を使ってもう一度言う。

そこまでしてようやく人々は天野の事に気がつき、天野に注目する。


「どういう事だ天野!」

「ふふん。それは」

「お前あいつを依怙贔屓したのか!」

「いやそういうわけじゃ」

「ふざけるな! そんなのずるじゃねぇか!」

「ねぇ聞い」

「いつかやると思ってた!」

「あーもううるさいうるさい! 静かにしないと説明しないよ! 静粛に静粛に!」


過去と日頃の行いのせいでなかなか話をさせてくれない天野。説明を聞いてくれるほど人々が落ち着くまで少し時間がかかった。


「えー。みんな落ち着いた? とりあえず話を聞く気にはなった? 話す前に言っておくけど、本人達からちゃんと許可とってあるよ。君達はあの子達を見てずるいだの卑怯だの言うと思っていたからね。あの子達はずるも卑怯な手も使ってないよ。自分の手で。自分達の意思で刀を手に入れたんだ。」


天野はゆっくりと観客席全体を見回して大きな騒ぎを起こすものがいない事を確認した天野は拡声器を持ち直す。


「それじゃあ話そうか。今井 剣が。箒が。縁切が。彗が。流が。どうやって【刀持ち】になれたのか。【カッセン】中のみんなもよかったら聞いてねー。」

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