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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
ふあゆう
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三十九話 名無しの権兵衛が戦う理由。

名無しの権兵衛が【合戦場】に来る前。

名無しの権兵衛(真琴)が桜と一緒に下校していた時まで時間が遡る。


「やっと試験が終わったよー。」


嬉しそうにそう言って桜は伸びをする。


「後は桜が追試にならないよう祈るだけだね。」

「大丈夫だよ真琴ちゃん。真琴ちゃんに教えてもらったし、あんなに頑張ったんだからきっといい点取れてるよ。」

「だといいね。」


数日間に及ぶ試験期間を終えた二人はどこか晴れ晴れした様子で歩いていた。


「試験が終わった事だし早くホットケーキ食べに行こうよ真琴ちゃん。」


嬉しそうに真琴の前を歩く桜。

その姿を見て微笑ましそうに見る真琴は桜の後に続く。

この後二人は前々から行く予定だった喫茶店に向かいホットケーキを食べに行くはずだった。邪魔が入らなければ。


「真琴ちゃん早く。」


今にも走り出しそうな桜に追いつこうと早足で近づいている時、こちらに向かって走って近づいてくる大きな箱を抱えた男の姿が見えた。男の目線は明らかに桜に向けている。嫌な予感がした真琴は桜の元に走り寄り桜を横に突き飛ばす。


「え?」


突き飛ばされてきょとんとした顔で真琴を見る桜。

真琴は男の持っていた箱に入れられそのまま男によって連れ去られてしまった。


「え? え? …真琴ちゃん? 真琴ちゃーん!?」


尻餅ついて呆然とした桜はようやく真琴が拐われてしまった事に気がつき、すでに遠くにいる男の背中を見て真琴の名前を叫ぶ。



◆◇◆◇◆



男とその周りにいるもの達を皆殺しにするつもりで桜の身代わりとなりわざと拐われた真琴は箱の中でしばらく揺られながら聞き耳をして外の様子を伺っていた。


「どけ。邪魔だ。」

「どかない。近づくなと言ったはずだ。」

「お前の命令など聞くか! 私は教祖様に用があるのだ!」

「伝言なら俺が伝えておく。」

「私は教祖様に元気になってもらおうと貢物を用意してきたのだ。」

「何を持ってきた。」

「もちろん教祖様の好物である若い女だ。箱庭からとってきた高品質で新鮮ものだ。これを食べれば教祖様はきっと元気になられる。分かったらそこをどけ!」


男が止まった後、箱の外から聞こえてくる会話を聞いて真琴の怒りが膨れ上がる。男の言う教祖様を真っ先に殺してやろうと思った時、箱が大きく揺れる。そのせいで聞き耳ができず外の様子が分からない。


「痛っ!」


揺らされて不愉快な気持ちが増大した真琴は苛立ちに身を任せて外に出ようとした時、左肩に強烈な痛みを感じた。暗いため真琴にはよく見えないが真琴の肩には刃物が突き刺さっている。痛みに思わず声が出たが、声量を抑えたため外にいるもの達には気がつかれていない。

刃物が抜かれた後強い衝撃を感じた。そして足音が遠ざかり扉が開く音がした後、真琴は【無名】を出して箱を斬り外に出る。

外に出た真琴はまず周りの様子を確認し自分を拐った男以外誰もいない事を確認し、民家の中に漂う甘い香りに対して不愉快そうに眉間に皺を寄せて懐から手ぬぐいを取り出して口と鼻を覆う。そして倒れている男の方を見る。男はまだ生きているようで呻き声を上げて真琴の方を見ている。


「お、女ぁぁぁぁ。俺の事はいい。早く教祖様の元に行きその身を捧げるんだ。」


傷は深いが男は胸元を押さえて真琴を睨み付ける。

それがさらに真琴の神経を逆撫でる。真琴は男の胸元に向けて【無名】を突き刺した。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。しかし、刀を突き刺しているにも関わらず表面の傷口は一つだけ。にも関わらず男の内部は刀によってずたずただ。


【無名】の能力は先入。

なんでも斬れる刀であると同時になにも斬れない刀でもある。

真琴が斬りたいと思えばどんなものでも斬れる。

真琴が斬れないと思えばどんなものも斬れない。

男の外側には傷をつけず、男の内側だけを斬る事ができるのは【無名】の能力のおかげ。

真琴は【無名】の練習台と苛立ちを抑えるために男が生き絶えた後も執拗に刺した。


苛立ちが幾分かおさまった後、真琴は左肩の傷に意識を集中する。すると傷口が塞がっていく。【刀持ち】特有の回復能力だ。

傷口が塞がり左腕を動かせる事を確認した真琴は【刀装】に身を包み名無しの権兵衛の姿をとる。

身を潜めて民家の外の様子を見ると少し離れた所に人が何人もいるのが見えた。その人達が着ている服を見て【日の島】のもの達だと気がついた名無しの権兵衛はこの格好のまま外に出たら面倒事になると思い【刀装】を別の形にする。【刀装】は名無しの権兵衛の姿から【日の島】のもの達が揃って身につけている衣服と同じ形に変化する。そうして名無しの権兵衛は何食わぬ顔で外に出て誰かに話しかけられないように動きながら【日の島】のもの達の中に紛れ込む。

名無しの権兵衛は自分が【合戦場】に連れて来られたと気がついてさらに苛立った。


やがて始まった殺し合いを見て名無しの権兵衛は今日の日付から今行われている殺し合いの場が【カッセン】のものだと気がつく。

学校の試験期間と被ってしまったためクリムゾンと文太に事前に断りを入れていた名無しの権兵衛は自分の胸の中で不愉快な気持ちがさらに膨れ上がるのを感じた。

名無しの権兵衛は、真琴は以前から桜と一緒に試験勉強を頑張っていた。試験が終わったらホットケーキが美味しいと評判の喫茶店に行こうと桜に誘われていた真琴は内心それを楽しみにしていた。

それなのに拐われて刺されて【カッセン】にほぼ強制参加。近くに鏡がないため帰る事ができない。


「見っけ。死ねー!」


名無しの権兵衛を【日の島】のものと勘違いした【写し持ち】が背後から襲ってきたが名無しの権兵衛はなんて事なく斬り伏せた。それでも名無しの権兵衛の怒りは収まらない。


「え、何あれ! 死体が動いてる!?」


上から聞こえてくるしおんの実況で死体兵士の存在を知った名無しの権兵衛。

突然の【ショケイ】と死体兵士に何やら良からぬ事が起きる予感を名無しの権兵衛も感じ取っていた。が、そんな事知るか。自分を巻き込むなと名無しの権兵衛は思った。


「おい! お前も戦え…おい。その刀、まさか」


死体兵士から逃げてきたものの言葉を最後まで聞かず首を刎ねると名無しの権兵衛は【刀装】の形をまた変えて名無しの権兵衛の姿に戻る。

そして関係の無い自分を巻き込んだ人達と自分の肩を刺した人を殺してやると思った名無しの権兵衛はまず周囲にいる死体兵士から始末してやると次々と縦に両断していった。

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