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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
ふあゆう
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三十八話 増える恐怖

以前にも説明されたが箒の持つ刀【腐花】の能力は【腐花】で掘った穴に死体を埋めると意のままに操る事ができる死体兵士を生み出す事。

死体兵士は生前の能力が使用可能。たとえ【刀持ち】であろうと刀の力を使う事ができる。一対一の殺し合いではあまり使い道がないが、大人数で殺し合う【カッセン】では猛威を振るう。



◆◇◆◇◆



「よし。また一人殺せた。」


【日の島】のものを殺して上機嫌な【写し持ち】。様子からして数人以上殺しているようだ。


「これなら順位かなり上がるな。」


この【写し持ち】も高得点狙いで持ち場を離れて独断行動をとっている。

まだ獲物は残っていないかと見回すと、ふらついた足取りで歩くものが見えた。服装を見て【日の島】のものだと知ると【写し持ち】は誰かに殺される前に殺してやると急いで向かい、そのものの背中を刀で刺した。


「よし、もう一人!」


これでまた得点が入る。

そう思った【写し持ち】はつい口元が緩む。

その直後、刺されたものの首が【写し持ち】の方に向く。

【写し持ち】はその顔を見て血の気がひいた。

刺したものの顔が鈍器のようなもので潰されていた。この【日の島】のものはすでに誰かに殺されていた。しかし、動いていた。足取りはふらついてはいるが生きているように動いている。

死体が動いている。それに気がついた【写し持ち】は恐怖で体が固まってしまった。


「な、何なんだこいつ!」


恐怖心から逃げ出そうと刺した刀を抜こうとしたが抜けなかった。肉で刀を固定されてしまった。まだその事に気がついていない【写し持ち】が必死になって刀を抜こうとしている時、背後から接近する存在にも気がついていなかった。


「ぎゃあああああああああ!!」


先程【写し持ち】が殺したものが死体兵士となって【写し持ち】に襲い掛かり首元を噛み付く。

血が出るほど強く噛みつかれた【写し持ち】は絶叫を上げながら死体を引き剥がそうとするが尋常ではない力でしがみついているため逃れられない。

そんな時に。

前方にいた死体兵士が無理やり体制を変えて【写し持ち】に襲い掛かり後方の死体兵士ごと【写し持ち】を押し倒す。その拍子で刀を手放してしまったため【写し持ち】は完全に丸腰だ。抵抗できず死体兵士に噛まれ掴んでちぎられていく。


その様子を箒は黙って見ていた。


「たす、助けてくれ!」


【写し持ち】は箒の存在に気がつき助けを求めたが、箒は無視して穴を掘りながら【写し持ち】が死体兵士になぶり殺されていくのを見ていた。やがて【写し持ち】が生き絶えると箒は死体兵士に指示を出して【写し持ち】の死体を穴の中に入れさせるとすぐに土を入れて埋めていく。埋め終えて少し待つとそこから新たな死体兵士が這い出てくる。


「次だ。そろそろ盾恒のところに行くぞ。」


そう言って箒はある死体兵士を呼び寄せる。その死体兵士は【飛間】を持つ【刀持ち】だ。死体兵士にされた状態であろうと刀の力が使えるようで箒は【飛間】を使って短時間であちこちに移動している。

箒が死体兵士に触れて【飛間】を使わせるとあっという間に盾恒達がいる場所まで転移する。


「どのくらい集まった?」

「…そこだ。」


転移してすぐに盾恒に会えた箒は真っ先にそう聞くと盾恒は重い表情である方向へ指をさす。その先には死体が山のように積み重なっていた。


「よし。引き続き死体を集めておいてくれ。」

「いつまでこんな事をさせるつもりだ!」


死体の山を見るなり死体兵士を生み出すために穴を掘る箒に盾恒は怒鳴りつける。誰かに殺されたものを運ぶ作業が余程辛かったのか精神的余裕が無くなっている。


「お前達が何をしたいのかさっぱり分からないが、ワシ達を巻き込むな!」


嫌悪で表情を歪め今にも襲いかかってきそうな盾恒に対して箒はため息をつく。


「分かった。次の死体集めが終わったら剣に会わせてやる。」

「何?!」

「剣を助けたいのなら今は我慢しろ。機会を逃すな。」

「…分かった。」


箒の言葉に盾恒は少しの間考え込み、そして幾分か落ち着きを取り戻す。そして死体集めを再開させるために部下達に声をかけに行く。

盾恒が立ち去ると箒はすぐに穴を掘り進め【飛間】を使って死体を穴に入れていき埋めていく。


「いいのか? あんな事言って。」「いい。そろそろ我慢の限界だからな。」「いよいよか。どんな答えが出てくるのだろう。」「緊張するわ。」「分かっていると思うがどんな結果になろうとも俺達は剣の味方だ。剣の敵は俺達で皆殺しだ。」「おう。」「がんばるわ。」「もちろん。」


一人で手を動かし、口を動かしながら死体兵士を生み出していく。



◆◇◆◇◆



箒が生み出す死体兵士は【カッセン】をさらに混沌にしていく。

多くの【写し持ち】と【刀持ち】が離脱してしまい守りが薄くなってしまったため将の元に残ったもの達は苦戦を強いられていた。


一対一の殺し合いを死体兵士に邪魔された文太とアキノは邪魔をした死体兵士を倒した後も他の死体兵士と戦っていた。


「きりがないね。」

「そうですね。術をかけられた痕跡が全くないのでおそらく【刀持ち】のせいでしょう。こんな能力は初めて見ましたけどね。」


死体兵士が生み出された原因をいち早く見抜く文太。しかし根本的な解決にはならない。箒を殺さなければ死体兵士は増え続ける。


「各地、一斉に報告を。」


死体兵士と戦いながら文太は通信機器を取り出して各地に散らばっている諜報員からの通信をまとめて聞く。声が混ざり合って何を言っているのか分からない状態のはずなのに文太は一人一人の言葉を正確に聞き取っていた。


「報告ご苦労様です。引き続き戦闘は可能な限り避けて情報収集に徹してください。それでは失礼。」


通信を切り死体兵士を切り刻みながら懐にしまう。


「どうやら各地で動く死体が横行しているようですね。」

「全ての陣営が襲われているって事?」

「はい。あなたのところも襲われていますが行かないのですか?」

「姫様のところには強い護衛がたくさんいるし姫様自身強い。わざわざ行かなくても大丈夫さ。」


そう言って暗器を使って死体兵士を両断するアキノ。


「これは大変なことになりましたー! 突如現れた死体兵士によって【カッセン】は大混乱! これからどうなるのか分かりません。今年の【カッセン】は波乱続きだー!」

「今年がおかしいの?」

「はい。去年はここまで混沌としていませんでした。」


頭上から聞こえてくるしおんの実況を聞く余裕があるほど二人は死体兵士を圧倒的な力で切り伏せていくが、数が多すぎる。切っても斬っても死体兵士はまだまだいる。


「え、あれ? まさか。あの人って!」


さて、どう乗り切ろうと文太とアキノが揃って考えている時にまたもや頭上からしおんの声が聞こえてくる。その声からは戸惑いの色が強く実況ではなくつい漏れ出た言葉だと二人は気がついた。

文太やアキノだけでなく【カッセン】を行っているもの達も観客達も一体何が起きたのだろうと思っていた。

そんな時、戦いの場では空に映像が映し出され、受像器では映像が切り替わる。映像に映し出されたものにこんな状況にも関わらず皆一瞬ではあるが画面に釘付けになってしまった。


白い学生帽と白い襟巻きに白い水兵服。その上に無地の黒い羽織。足元は白い運動靴。

手元には黒い刀。その刀を使ってさくさくと単純作業のように死体兵士を縦半分に両断していく。


「名無しの権兵衛だ。」


映像を見てた内の一人がぽつりと呟いた。それがきっかけか他の人達も口々に彼女の名前を口にする。


「名無しの権兵衛だ。」

「名無しの権兵衛。」

「名無しの権兵衛がなんで。」


名無しの権兵衛が来た。

名無しの権兵衛が来た。

名無しの権兵衛がやって来た。

ここで名無しの権兵衛がやって来た。

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