三十七話 横種
様々な思惑が交差している。
突然の【ショケイ】に大混乱の戦いの場。
忠誠心の高いもの達は将を守るために奮闘し。
そうでないもの達は得点を稼ぐために命令を無視して【日の島】に所属しているもの達を殺して。
殺された【日の島】のもの達の死体を盾恒達と箒が集めて何かをしようとしている。
そんな中、そんな事知るかと言わんばかりに暴れるものが一人いた。
◆◇◆◇◆
『報告します。援護射撃担当の魔術師達がやられました!』
「全滅ですか?」
『はい。敵の正体はふめ』
通信機ごしで話していたものの言葉が途中で途切れた後、通信が切れた。
「やられましたか。」
魔術師達を殺したものと同一犯と考えた文太。殺されたもの達がいた現場に向かいながら通信機を取り出してクリムゾンと連絡をとる。
「クリムゾン様。」
『文太か。どうした?』
「侵入したものがいるので今から殺しに行きます。」
『分かった。気をつけてな。』
「クリムゾン様もお気をつけて。」
通信機を切り懐にしまう。
そして現場に着いた文太は魔術師達の待機場所に向かうとそこにあったのは血溜まりの中で倒れている魔術師達。報告の通り全員生き絶えている。
文太は死体に近づき観察する。死体は鋭利な刃物によって切り裂かれている。傷口を見てかなりの手練れの仕業と考えた文太は殺害を実行したものを探そうとした時、文太の背後から金属がぶつかり合う音が鳴る。
襲撃だ。
襲撃したのは可愛らしい絵柄の模様の黒い運動着を身につけている。手には刃物。付着している血液からそれが魔術師達を殺した凶器。
凶器を使って文太も殺そうと攻撃してきたが、見えない何かにぶつかり刃物は文太に当たらない。
一瞬拮抗した後、襲撃してきたものは後ろに飛び退き文太から距離を取る。
襲撃したものと面と向かった文太はしばらく見た後、正体に気がつく。
「アキノさんでしたか。こんにちは。」
名無しの権兵衛と会った時とはまた別の姿が変わっているが文太は言い当てる。
「こんにちは。凄いね。こうもあっさりと見破られる事があるなんて。少し自信を無くすよ。」
「謙遜しないでください。化ける技能。気配の消し方。そして殺人術。どれをとってもあなたは一流ですよ。」
「嬉しいね。君に褒められるとより一層嬉しく感じるよ。」
会話は和やかだが、空気は張り詰めている。
「それはそれとして。クリムゾン様の手駒を潰した報いは受けてもらいますよ。」
「それは嫌だな。君を殺して回避しよう。」
両者、武器を構える。
アキノは忍刀を。
文太は両手を広げて。
アキノが文太との距離を詰めようとした時、アキノは上体をひねり何もないところで忍刀を振るう。すると金属音が鳴り響く。アキノは再び忍刀を振るう。何度も何度も。その度に金属音が鳴り響く。
それを見て文太は少し目を細める。
その一瞬の隙をアキノは逃さない。苦無を手にしそれを文太に向けて投擲する。
苦無の狙いは文太の額。狙いは寸分違わずだったが、見えない何かに弾かれる。
「君、想定以上に厄介だね。さすがは大陰陽師、奈江未亜。恐れ入るよ。」
「…僕の事、調べたんですね。しかしそれは昔の名前。今の私は菊一 文太です。」
「そうだったね。」
「あっ。そうだ。話は変わりますが先日あなたから受け取った情報、かなり有益でした。ありがとうございます。」
「それは良かった。君には恩があるからね。役に立って何よりだ。」
和やかな口調で会話をする二人。しかし、殺意に満ちた目でお互いを睨み合っている。
「【火の島】所属。名は菊一 文太。クリムゾン様のためにあなたを殺します。」
「【金の島】所属。名はアキノ。私のために死んでくれ。」
こいつを殺す。今ここで。
ほぼ同時に思った両者は武器を構え、名乗り、その後すぐに相手を殺すために動いた。
◆◇◆◇◆
【ぶっ殺ランキング】、六位。菊一 文太。
【刀持ち】である文太の持つ刀の名前は【開盲】。義眼の形をした刀であり、使わない時は眼帯によって隠されている。
【開盲】が入れてある方で瞬きすると最大五つの手のひらくらいの大きさのひし形の目の模様が付いている刃を出現させる事ができる。宙に浮かぶ刃の操作は念じるだけで可能。さらに刃に付いている目と文太の視界は共有できるため遠く離れた場所を観察する事も可能。
さらに文太は刃に不可視の術がこめられているお札を貼り刃を見えなくする細工をしている。
【ぶっ殺ランキング】、千十一位。アキノ。
【写し持ち】にも関わらず【刀持ち】を何人も殺し、【写し持ち】を数えきれないほど殺して一気に順位を上げてきた。
それを聞きつけた青桐から声をかけられ、【金の島】の所属になった。
実力が高く注目の的の二人が殺し合う姿を受像器ごしで見ている観客達は大盛り上がり。興奮した様子で気に入った方の応援をしたり殺せ殺せと叫んでいる。
その熱気を一気に奪い場を凍り付かせる存在が現れる。
◆◇◆◇◆
「ん?」
「あれ?」
前兆に気がついたのは文太とアキノだ。
二人は殺し合いを一時中断して魔術師達の死体があった場所を見る。しかし、魔術師達の死体が消えていた。
「アキノさん。何かしました?」
「いいや。」
二人共原因に心当たりがない。
二人が死体があった血に染まっている地面を眺めていると背後から攻撃を仕掛けられた。
背後からの奇襲を危なげなくかわす二人。
攻撃は着弾した地面を抉り、強熱で地面を焦がす。
「これは、魔法ですか。」
そう。
この攻撃は魔法による火炎球。
二人が攻撃が来た方を見るとそこにはアキノによって殺されたはずの魔術師達が宙に浮いていた。その中の一人が魔法を放つための杖を二人に向けているため先ほどの攻撃は魔術師達の手によるものは確実だ。
「これはどういう事ですかね。」
「おかしいな。確かに殺したんだけど。」
「…そうですね。見た限り呼吸をしていませんし傷もそのまま。生き返ったわけではないようです。」
二人が話をしている間にも魔術師達は攻撃してくる。
「一応聞くけど、どうする?」
「それはもちろん。」
文太の操る刃の一つが別のお札が貼られた状態で姿を現し魔術師の胸元に突き刺さる。そして突如、魔術師達のうちの一人が燃える。全身を包むほどの炎が魔術師を燃やし尽くす。刃に貼られたお札に対象を燃やす効果があったようだ。
「私達の殺し合いを邪魔したんです。排除します。」
「賛成だ。」
それに続いてアキノは鎖鎌を取り出し目に止まらぬ速さで鎖鎌を動かし魔術師の首に鎖を巻きつけると力を込めて魔術師を地面に叩きつける。
「あぁ。しかし心が痛みます。部下に死体蹴りするような真似をする事になるなんて。」
「よく言うよ。そんなこと思っていないくせに。」
思いもしなかった乱入であろうとも二人は調子を崩さず死体兵士になってしまった魔術師達に向き合った。




