三十三話 将集結。
一悶着はあったがその後は何事もなく時間は進み、今年も【カッセン】が行われる事になった。
巨大な映像機が設置されている全会場はすべて満席となり、会場に入らなかったもの達は受像機や通信端末を使って【カッセン】を観ようとしていた。
多くの観客達が見ている中、【カッセン】の開会式が始まろうとしていた。
「お待たせしました! 今年もみなさんが待ちに待った【カッセン】が始まります! 今年の実況はこのボク、しおんでお送りします。」
人が一番集まっている会場に空飛ぶ円盤に乗って現れたのは【巫女】の一人、しおん。
「では早速、代表の人の紹介に移らせていただきます! 順番は月、火、水、木、金、土、日の順番でやります。これはカミサマが決めた順番なので決して。決して! 優劣を決められてこの順番になったわけではありません。分かりましたね?」
険しい顔で念押ししてくるしおん。それに対して誰も文句を言っていない事が分かると表情を少し柔らかくする。
「それじゃあ紹介させていただきます。今年も【月の島】は今回の負傷、死傷した人達の治療を全てやる事を条件に【カッセン】は不参加のためとばして、最初はこの人! 彼はまだ幼い身でありながら【刀持ち】となり魔術師としての才を手にし、子供達の味方となった。【ぶっ殺ランキング】、三十七位! 【火の島】代表、クリムゾン・ビックベル!」
まず紹介されたのはクリムゾンだ。
身につけているのはいつも着ている動きやすい服ではなく、【刀装】だ。
赤い燕尾服の上に金糸で鳥の形で刺繍がされている赤い外套を身につけている。
頭上には金の冠が輝き、両足には金の足輪がつけられており、両手には宝石のような大粒の色鮮やかな石が連なっている金の腕輪がつけられている。首元には赤い石がついた金の首輪がはめられている。
そして顔には鳥を模した仮面がつけられている。
「おうさまー! がんばれー!」
「クリムゾン様! 応援しております!」
「今年も派手な魔法をお願いしますよー!」
クリムゾンの登場に観客達が沸く。
会場の中央に向かって歩きながらクリムゾンは観客達に向けて手を振る。中央に着くとしおんは円盤の高度を落としクリムゾンに小型拡声器を向ける。
「クリムゾンさん。観客の皆さんに何か一言!」
「皆、俺達の活躍見逃さないでくれよな。」
クリムゾンの言葉に【火の島】のもの達を応援している観客達を中心に歓声があがる。
「この勢いでどんどんいくよ! 妖怪達の希望! 妖怪大連合の二大頭の一人であり龍の血をひく数少ない存在。【ぶっ殺ランキング】、八位!【水の島】代表、霧丸 洞元!」
しおんの紹介で現れたのは一人の男。
【刀装】は青色の唐装漢服の形をしている。
龍を模した青色の仮面を着用しており、仮面と髪の間から見える尖った耳が特徴的だ。
「洞元さん。観客の皆さんに何か一言!」
「もちろん。」
画面の下からは物腰の柔らかそうな声音が聞こえてくる。
洞元はしおんが向ける小型拡声器で観客達に向けて目標を告げる。
「今年こそは僕が率いる連合の目の上のたんこぶを切除するよ。」
洞元がそう言った直後、洞元に向けて一振りの刀が飛んできた。しおんの目の前すれすれで飛んできた刀を洞元は刀を出して弾く。
弾かれた刀は宙をまい、持ち主の手元におさまる。
「でたらめを言うんじゃねぇよ。連合一の邪魔な存在はお前だろうが。」
洞元に向けて刀を投げた男の【刀装】は緑色の唐装漢服の形をしている。
龍を模した緑色の仮面を着用しており、仮面と髪の間から見える尖った耳が特徴的だ。
色違いではあるが【刀装】の形そのものは洞元のとほぼ同じだ。
男の【刀装】を見た洞元は声を荒げる。
「おい。また僕の真似をしたのか君は!」
「してねぇよ! 真似したのはそっちだろうが!」
今にも取っ組み合いが始まりそうなほど険悪な雰囲気にどうしようと内心慌てながらも自分の仕事はしようとしおんは声を張り上げる。
「こ、この人は妖怪達の希望! 妖怪大連合の二大頭の一人であり龍の血をひく数少ない存在。【ぶっ殺ランキング】、同じく八位! 【木の島】代表、霧丸 加賀見!」
しおんの紹介に洞元と加賀見は揃ってしおんの方に首を動かし、仮面の下からしおんを睨みつけ揃ってしおんに詰め寄る。
「おい! なんでこいつと同じ紹介なんだよ!」
「そうだ! ちゃんと区別してくれ! これじゃあまるで僕とこいつが同じ存在だと思われるじゃあないか!」
「すすすすみません!」
「おい止めろよ二人とも! しおんは何も悪くないだろ。相変わらず仲悪いなお前ら。」
怯えるしおんを見かねたクリムゾンは慌てて仲裁に入る。
「いいぞー! そのまま殺しあえ!」
「洞元様! 今日こそ加賀見様を倒しちゃってください!」
「加賀見さん! そんないけすかない奴やっちまってください!」
険悪な雰囲気の洞元と加賀見を煽るような声援を送る観客達。
それを聞いたクリムゾンは何とかしおんと二人を引き離す。
「しおん。早く次の紹介をしてくれ。このままじゃあの二人この場で殺し合いをする。」
「わ、分かりました!」
クリムゾンに促され、しおんは次の紹介にうつる。
「気を取り直して、次の方の紹介です。【合戦場】の姫! その愛らしさは天下一か? 【ぶっ殺ランキング】、九位! 【金の島】の代表、珠珠 円寿!」
次に紹介されて現れたのはしおんの言う通り、姫という言葉がとても似合う少女だった。
二つ結びの髪に淡い桃色の花飾りがついているかんざしが飾られている。
絵本に出てくる姫が着るような淡い桃色の華やかな洋装の形をしている【刀装】を身につけている。
袖はないが透かし模様の入っている長手袋や足が隠れるほど丈が長いため肌の露出は少ない。
羽根飾りのついた持ち手付き仮面で顔の上半分を隠している。
「円寿様ー!」
「あぁ、今回の【刀装】もなんて素敵! 円寿様!」
「こっち向いて円寿様ぁ!」
円寿の姿が見えた途端、観客達は一番大きな歓声をあげる。中には立ち上がって少しでも近くで円寿を見ようと前に出る観客達もいるほどだ。円寿がゆっくりと会場の中央に行く途中に何回も観客達に視線を向けたり手を振るたびに観客達は大きな歓声を上げる。クリムゾンや洞元、加賀見の比ではない。
自分達にかけられたものよりも大きな観客達の歓声によって横槍の入った洞元と加賀見は取っ組み合いをやめ、不機嫌そうにそれぞれそっぽ向く。
「みんな。今日はよろしくね。」
会場の中央に着きクリムゾン達と合流した円寿はクリムゾン達に向けて微笑み挨拶する。
「あぁ。今年もお前達に負けないからな円寿。」
「こちらこそよろしくね。」
「まぁあんた達と戦う事はないかもな。」
円寿の登場で幾分か和やかな雰囲気になる。それを見たしおんは安心した気持ちで円寿に近寄り小型拡声器を向ける。
「円寿さん。観客の皆さんに何か一言!」
「はい。精一杯がんばりますので応援してください。」
円寿の一言に観客達は再び大きな歓声をあげる。
「続きましてこの人! 数々の挑戦をことごとく潰し殺してきた【合戦場】最強の男! 【ぶっ殺ランキング】、堂々の一位! 【土の島】代表、朧!」
拘束服を思わせる白い服に踵が高く細く鋭い靴。
長い髪は三つ編みでまとめている。
顔はサイボーグオチムシャくんのお面をつけて隠している。
しおんの紹介で現れた朧は以前と変わらない姿でいた。
「出た。あいつが朧か。」
「想像よりも小さいな。」
「それでも怖いよ。だってあいつ一人で何千人も殺してきたんだぞ。」
朧の登場に会場内は一斉に静まり重苦しい雰囲気になる。観客達が朧を見る目つきはまるで獰猛な猛獣を見ているようなものだ。
朧はそれに気にする事なく早足で歩き、クリムゾンの前に立つ。
「ななしがでないってほんとう?」
朧は突拍子もない発言にクリムゾンは朧に見下ろされても臆する事なく頷く。
「あぁ。用事があるから参加できないってさ。」
「そう。」
お面をつけていても朧が不機嫌な事はクリムゾンに伝わっている。
「あ、あのー。朧さん。観客の皆さんに何か一言お願いします。」
怯えた様子で朧に小型拡声器を向けるしおん。
「ない。」
それに対して朧は短く返答する。
朧の素っ気ない答えにしおんは少しまごついたが、朧の事が怖いのかそれ以上聞き出さず次の代表を紹介をする。
「そ、それでは次の人です。規模の大きさで有名な夢花の教祖! 謎の多い彼女が今日、姿を表す! 【ぶっ殺ランキング】、五万三千百五十一位! 【日の島】の代表、金字義 流魑縷!」
その登場で現れた人物を見てしおん、観客達、クリムゾン達は騒めく。それは歓迎によるものでも恐怖によるものではない。困惑からくるものだ。
「誰だあいつ?」
「さぁ。男みたいだ。」
「流魑縷さんではなさそうね。」
現れたのは顔全体を隠せる防毒面を身につけている。
藍色の軍服の胸元には銀色、黄色、青色、桃色、赤色の五つの星飾りがついていた。
体格からして男のように見える。
「あのー。金字義さんではないですよね。あなたは一体誰ですか?」
謎の人物の登場に戸惑いながらしおんは近づき小型拡声器を向けて質問をする。
「俺の名は箒。今井 剣を不幸にする存在を全て殺す。そのためにここにやって来た。」
「えー。」
流魑縷ではないと人物、箒が現れただけでなく堂々と殺害予告をした箒にしおんは言葉に詰まった。
観客達もクリムゾン達も箒の存在と発言にさらに騒めく。
「いやいやいや! 箒さんでしたっけ? あなたは【日の島】の代表ではないでしょ。流魑縷さんはどこに行ったんですか!」
「俺は【日の島】の代表の代理だ。俺の発言は【日の島】の代表の言葉だと思え。」
「えー。」
箒の答えにしおんはまた言葉が詰まり、一時的に思考が停止してしまった。




