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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
ふあゆう
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三十一話 会議

二章の始まり。

【合戦場】は殺し合いを主にした娯楽施設だ。そのため飽きが来ないように定期的に催しものが行われている。

そのうちの一つが【カッセン】。

【カッセン】は年に一度に行われる団体戦だ。代表のものを決めれば人数や武器の有無関係なく参加する事が可能。その上【カッセン】では勝利したものは負かしたものが保有するものを選び奪い取る事ができるため毎年大勢の者達が【カッセン】に参加し盛り上がっていた。


近年ではある理由で【カッセン】が行われる前には島の将達が集まり話し合いが行われている。

今年もそれは行われる。今年は【火の島】に集まり島の代表である将達が今後の話をする、はずだった。



◆◇◆◇◆



「【(にち)の島】の代表はまだ来ないな。」


円卓と一緒に用意された椅子の一つに座っているクリムゾンが呟くとすぐ近くに座っていた鯏丸が言葉を返す。


「お前が【日の島】の奴らの立ち入りを禁止したからだろ。」

「いやいや。俺が禁止にしたのは流浪ぶっ殺すの会の奴らだけだ。【日の島】の全員が所属してるはずないから来れるはずだ。」

「じゃあ嫌がらせだろ。あんな奴らの事はほおっておいてさっさと会議をしよう。」

「んー。みんなもそれでいいか?」


クリムゾンは他に座っているもの達に向けて言葉をかける。


「賛成。あいつらがいない方が話が進む。」


それに対して先に返事を返したのは襟元に花の刺繍が入っている背広を着ているたれ目の男性。


「あんなやつらを味方する奴なんていないしな。」


続けて男性の隣の席に座る深緑色の運動着を着ているつり目の青年も賛成の意を示している。


「僕もそれで構いません。」


青年の隣の席に座っている書生服を着ているぱっちりとした目つきの青年も反対する様子はない。


「私も。」


そして青年の隣の席に座っている薄桃色の服の上に白衣を身につけている少女は視線を下に向けたまま短く返事をする。


少女の隣の席には【日の島】に所属するものが座れるために用意したものなので誰も座っていない。


他にこの場にいるのはクリムゾンの後ろに控えている文太。


全員の意見が一致したと判断したクリムゾンはこの場にいる全員で話を進める事に決めた。


「それじゃあ早速話を進めよう。今年の【カッセン】について。」

「といっても、話し合う事なんてあるか? 去年と同じ感じでいいだろ。」

「そんな事言わないでください兄さん。今年の【カッセン】も円滑に進めるために会議は必要な事です。こうして顔を合わせて話し合ってこそ見える何かがあるかもしれないんですから。」

「タローの言う通りだぞジェロ。」


会議に対して不服そうにしているのは深緑色の運動着を着ている青年。【合戦場】で使っている偽名はジェロ。

そしてジェロを兄さんと呼んだのは書生服を着ている青年。【合戦場】での偽名はタロー。


「タロー。こういう場で俺を兄さんって呼ぶのをやめろって言ってるだろ。」

「? 僕はおかしな事は何も言っていませんよ。ジェロ兄さんを兄さんと呼ぶのは当たり前じゃあないですか。」

「色々とややこしくなるからやめろって言ってんの。」

「二人は相変わらず仲良いな。」


タローとジェロのやりとりを微笑ましく見ているクリムゾン。


「今年の【カッセン】はややこしくなりそうだよ。何せクリムゾンのところには名無しの権兵衛がいるんだ。今年は荒れるよー。」


会話に割り込んだのは刺繍の入った背広を着ている男性。


「あーそうだった。名無しの権兵衛がいるんだった。」

「【カッセン】に参加すれば名無しの権兵衛を殺す絶好の機会。【日の島】の奴らが見逃すわけがない。」

「…青桐さんの言う通り。今年は去年よりたくさん人が死ぬ。」


刺繍入りの背広を着た男性、青桐(あおきり)の言葉に賛同したのは白衣を着ている少女。


「そう先生が言ってた。」

「ガマばぁが。だけど名無しの権兵衛の事なら心配いらないぞ。あいつは【カッセン】には参加しない。」

「あらそうなの。よかったね(まえ)ちゃん。」


青桐に前と呼ばれた少女は頷く。


「不参加に何か理由でもあるのですか?」

「用事があって行けないって言ってた。」


タローの質問に答えるクリムゾン。

名無しの権兵衛が【カッセン】に参加しないと分かった途端その場にいるもの達は安心したのかほんの少し気を緩める。


「あぁ、よかった。あんなのとは戦いたくなかったからな。」

「兄さん。言い方。」

「お前だって同じ事考えてただろ。ここにいる奴らだってあんないかれた野郎と戦いたくないと思っている。違うか?」


ジェロの言葉を誰も否定しない。ジェロの言い方を咎めたタローも否定はしない。他のもの達も無言ではあるがタローと同じ意見だった。

それだけ、名無しの権兵衛の存在は【合戦場】において存在感があった。悪い意味で。


「名無しの権兵衛がいなけりゃやっぱり今までと同じ感じでいいだろ。」

「んー。どうだろ。名無しの権兵衛がいないと分かったら夢花の奴ら怒って暴動起こすんじゃない?」

「あー。あいつらならやりそう。てか絶対にやる。」

「できれば話し合いで解決したいのですがね。」

「そうだ。夢花の事についてみんなに伝えておきたい事があるんだ。文太。」

「はい。」


クリムゾンに呼ばれた文太が一歩前に出ると全員の視線が文太に向けられる。それに対して文太は臆する事なく報告を始める。


「クリムゾン様の命令により夢花のもの達を調べた結果、ある事が判明しました。」

「ある事?」

「夢花のもの達が様子がおかしくなる前、夢花の拠点で不思議な香りのするお香が焚かれるようになったそうです。」

「お香?」

「はい。匿名希望で証言をしてくれた元夢花所属のその方曰くそのお香は拠点の至る所で焚かれていました。それから数日後には夢花のもの達のほとんどが感情的になり凶暴になったそうです。」

「ちょい待ち。それが本当ならその匿名希望さんはなんで平気なんだ? いや、平気なのか?」

「匿名希望さんは無事ですよ。本人曰く、本拠地にいる間は呼吸をせず、他にも香りを体内に取り込まないように色々と工夫していたそうです。」

「は? なにそれ怖。」

「お香ですか。毒でも焚いているのでしょうか。」

「誰がなんのために?」

「そもそも、その匿名希望さんの証言は信用できるものなの? 俺達を混乱させるために嘘をついているんじゃないの。」

「匿名希望さんの証言は信用できますよ。それはあなたも分かっているはずです。」

「それはどういう…!」


青桐が言いかけたところで何かを察したかのように目を見開き言葉を途中で切る。


「なるほど。確かに、その匿名希望さんが俺の予想している奴ならその証言は信用できるな。信用しなくちゃならない。」

「「?」」


青桐の言葉の真意が分からないタローとジェロは揃って首を傾げる。


「…そんなお香は、危険。」


黙って話を聞いていた前は口を開く。表情はほんの少し強張っている。


「えぇ。人の精神に害をもたらすものが夢花の本拠地だけでなく【合戦場】のあちこちに撒き散らされたらどれだけの被害が起きるか。あぁ、考えただけで恐ろしい!」

「【カッセン】前にこんな厄が転がり込むなんて最悪。」

「あぁ。そのお香とやら、俺達が思っている以上に危険な代物かもしれない。」

「警備を固める必要があるな。」


タローもジェロも青桐も鯏丸もお香の存在に危機感を感じているため眉間に皺を寄せたり表情を曇らせたりとさまざまな反応を見せている。


「いいじゃん。変化は必要だよ。」


場に漂う重苦しい空気に場違いなほどに明るい声。全員揃ってその声が聞こえた方に視線を向けると誰も座っていなかった【日の島】のもののために用意しておいた椅子に天野が座っていた。


「げっ。」

「あなたですか。」

「はぁ。」


天野の姿を見た途端、鯏丸は眉間にしわを寄せ、ジェロは露骨に嫌そうな表情になり、タローは不機嫌そうな様子を隠さず、青桐は大きなため息をつき、前は一瞬だけ天野に視線を向けた後そっぽ向いた。


「お、天野。その言い方、もしかしてお香はお前の仕業か?」


クリムゾンは調子を崩さず単刀直入に天野に話しかける。

クリムゾンの質問に対して天野ははっきりと答える。


「お香にはオイラは直接関わっていないよ。」

「それじゃあ間接的には関わっているのか?」

「んー。そうだね。そのお香ができた原因はオイラも関わってるね。」


天野の答えを聞いた全員が思わず息を呑む。


「でも、作ったのはオイラじゃない。別の誰かだよ。」

「別の誰かって、誰だよ。」

「それはまだ教えられないよ。最初から真実を話したら面白くないじゃん。」

「面白くないって。そんな理由でですか。」

「そんなってなにさそんなって。最近マンネリ気味だった【カッセン】に新しい変化が欲しくなるのは当然だよ。というか君達、もっとやる気を見せてよ。ここ最近の【カッセン】すっごくつまらない。」

「つまらないって言われてもねぇ。争い合う理由は今の俺達にはないからね。無駄に血を流す必要はないでしょ。できれば【カッセン】をしたくないって思ってるしね。そのための会議だ。」


そう。この数年間、将達は【カッセン】に関しては消極的な態度だ。わざわざ大規模な殺し合いをしてまで手に入れたいものがないので【カッセン】が始まる前に将達が集まって話し合いをし、被害を最小限に収まるよう段取りを決める事が恒例になってしまった。


「やる気ないなー。そんなんじゃあお客さん達もオイラも満足しないよ。もっとド派手に血生臭い殺し合いをしてくれなきゃ困るよ。」


その事に不満そうにする天野。しかしすぐに笑顔に戻る。


「まぁ、今年の【カッセン】は今までとは一味も二味も違うから楽しみなんだけどね。」

「それはどういう」


その時。

クリムゾンの言葉を遮るように突然入り口の扉が乱暴に開けられた。扉を開けたのはクリムゾンの部下だ。息を切らしている様子から急いでここにやってきた事が充分伝わってくる。


「どうしたのですか。今は大事な会議中ですよ。」

「も、申し訳ありません! しかし、早急にクリムゾン様達にお伝えしなければならない、事がありまして。」


走ってきたせいで苦しそうに呼吸をしながらもクリムゾンの部下はその場にいたもの達に伝える。


「現在、【火の島】に外のもの達が来襲してきました!」

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