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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
名無し
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二十九話 三日月 直近

流浪と殺し合いたい。そう思った直近の行動は速かった。


塁とはぐれたふりをして単独行動を行い、その日のうちに多くの【写し持ち】達を殺した。

別の日では当時【刀持ち】であった鯏丸から【柔氷】を奪いとった。

そして【土の島】の将になった後も朧は流浪に挑み続けその数だけ殺されてきた。

直近は意図せずに短期間で【合戦場】の高い地位についてしまった。


単独行動をした時や相手の都合を考えずに殺し合いを申し込んだ時は塁や直近の側近になってくれた鯏丸からこっ酷く怒られたが、それでも直近は流浪に殺し合いを挑むのをやめなかった。

流浪は直近と殺し合いを申し込まれた時、最初のうちは他のもの達と同様に切り捨てたが、何度もめげずに殺し合いを挑んでくる直近に興味が湧き、個人的な付き合いをするようになり、一緒にお茶を飲む仲にまでなった。

ある日、流浪の家に遊びに来た直近は流浪からこんな話をした。


「俺は後継を探している。」

「こうけい?」

「この人になら俺の大事なものをあげてもいいと思える人の事だ。」

「へー。そのひとみつからないの?」

「あぁ。もう長い事ずっと探してきたが全然見つからないんだ。」

「ぼくじゃだめなの?」

「あぁ。だが、三日月が悪いわけじゃないんだ。後継というのは強い人だからいいというわけではない。あの人のようであり、俺以上の才能を持った人でなければならない。」


寂しそうに笑いながらそう言う流浪の事を直近はよく覚えていた。自分では後継にならないとはっきりと言われた事に少し悲しくなった。それでも直近は早く流浪が探している光景が見つかりますようにと願っていた。


それからしばらくして、直近の元に流浪がやって来て直近にある報告をした。


「ついに後継が見つかった。」

「ほんとう! よかったね。」

「あぁ。もし気が合うのならば俺の時のように仲良くしてやってくれ。きっとお前の相手をしてくれる。」

「うん!」


その時は二人とも笑顔で話をしていた。

直近はその後、どうなるのかまるで予想していなかった。ただ、流浪の望みが叶って良かったと純粋に喜んでいた。


だから、【ぶっ殺ランキング】から流浪の名前が消えた時、直近は嘘だと思った。天野がやったたちの悪い冗談だと思った。


「三日月。落ち着いてよく聞け。流浪さんが、鬼丸さんが亡くなったって。」


だけど、電話越しで流浪の、鬼丸 綱吉の死を知った鯏丸からそう言われた直近は流浪の死を受け入れざるを得なかった。



◆◇◆◇◆



深い悲しみの中、直近は鯏丸と一緒に綱吉の友人として葬式に参列した。

告別式が終わり、火葬の間は一人で葬式場内を当てなく歩き回っていた直近。その途中で誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。何となく気になった直近は声がする方に行くと一人の女性が少女に向かって怒鳴りつけているのが見えた。

少女の顔に直近は見覚えがあった。

少女の名前は井上 真琴。綱吉の孫娘だ。

なぜ怒鳴られているのか直近には分からなかったが、家族を失ったのに怒鳴られている真琴の事が可哀想だと思った直近は真琴に怒鳴り続ける母親に声をかけた。


「ねぇ、やめたら。」

「ん? 何ですかあなたは。関係ないでしょ。」


直近に話しかけられた真琴の母親は鬱陶しそうにし真琴を連れて行こうとしたが、直近は真琴の母親の腕を掴んだ。

それに驚いた真琴の母親は腕を振り払おうと抵抗したが、直近は手を離さなかった。


「ちょ、やめてください! なんなんですかあなたは!」

「じーちゃんのともだち。」

「いいから、離してください!」

「はなしたらそのこにおおごえあげるでしょ。そっちこそやめなよ。かわいそう。」


可哀想。

その言葉に真琴の母親は抵抗をやめ、ようやく真琴の顔を見た。

無表情で自分を見続ける真琴を見て少し怯えた様子を見せた母親に直近はようやく腕から手を離した。


「おそうしきではしずかにしてね。」

「…分かりました。」


直近の言葉と真琴の目線に耐えきれなくなったのか真琴の母親はその場から早足で立ち去って行った。


「ありがとうございます。」


直近に向かって礼をすると真琴もその場から立ち去って行く。

直近はその後ろ姿を黙って見ていた。それ以上誰かに話しかける事なく綱吉の葬式を最後まで見届けた。



◆◇◆◇◆



その後、直近は【合戦場】で暴れた。【刀持ち】【写し持ち】関係なく殺しまくった。殺して殺して皆殺しにして、そして屍の山の上で泣いた。もう流浪に会えない。もう綱吉に会えない。それが悲しくて悲しくて悲しくて、また他のもの達を殺した。

八つ当たりで多くの【写し持ち】【刀持ち】を殺し、いつしか【合戦場】最強の男と呼ばれるようになった。最強と言われても直近は全く嬉しくなかった。直近にとって最強の男は流浪ただ一人。直近にとってその称号はなんの価値のないものだった。


流浪が死んだ日から一年後、直近は名無しの権兵衛の存在を知った。流浪が持っていた刀、【無名】を持つ【刀持ち】が【火の島】にいる。

それを知った直近はすぐにでも【火の島】に行こうとしたが、鯏丸に止められた。【土の島】の将である直近が事前連絡無しに行ったら大騒ぎになると言われ、直近は渋々と【火の島】の将であるクリムゾンに立ち入りの許可を通信機越しで頼んだ。

しかし、許可は降りなかった。理由は【火の島】に流浪ぶっ殺すの会のもの達が暴れその後始末で忙しいため直近の対応まではできないと断られてしまったため。

直近は流浪ぶっ殺すの会のもの達に対して激しい怒りを感じた。以前にも直近の目の前で流浪の悪口を言っただけでなく流浪を痛めつけてから殺すから協力しろと言われた事があるため直近は流浪ぶっ殺すの会のもの達の事が大嫌いだった。見つけ次第殺すほど嫌悪していた。


なかなか名無しの権兵衛に近づけない事に苛立ち、とうとう我慢できなくなった直近はこっそりと【火の島】に侵入した。後で鯏丸達に怒られると分かっていながら直近はどうしても我慢できなかった。

変装のために更衣室に忍び込み、サイボーグオチムシャくんの着ぐるみを見つけた直近はそれを身につけて名無しの権兵衛に近づこうとした。

そして、名無しの権兵衛が【ムソウ】を終えた時に近づき名無しの権兵衛に向けて【果たし状】を投げつけ【ケットウ】を行った。


名無しの権兵衛は流浪と殺し合って【無名】を手に入れた。

そう思った直近は流浪を殺された事への仕返しとして。そして流浪の言葉を信じて名無しの権兵衛との殺し合いを熱望していた。


[あぁ。もし気が合うのならば俺の時のように仲良くしてやってくれ。きっとお前の相手をしてくれる。]


かつて流浪が行っていた事を思い出し、直近は口元を緩める。

きっと楽しい殺し合いになる。

直近はそう思い名無しの権兵衛と殺し合いをしたが、直近にとっては期待外れだった。

まずは様子見でただの手斧で相手をしていたのだが、【ムソウ】の後で疲労困憊の名無しの権兵衛にはそれさえもきつかった。

流浪であればたとえどんなに不利な状況でも戦い殺し勝ってきた事を知っている直近は疲労でうまく戦えない名無しの権兵衛に失望し、憂さ晴らしに名無しの権兵衛の首を絞め、握り潰して殺した。返り血まみれになっても直近の心は晴れなかった。【ケットウ】を行う前よりも気分が沈んだ。


【ケットウ】が終わった後、勝手な行動をしたため案の定鯏丸に怒られた直近。しかし、叱られている最中でも直近は名無しの権兵衛に対する不満の気持ちは消えなかった。そんな時、再び現れた名無しの権兵衛は直近に【果たし状】を顔に投げつけた。

それによって名無しの権兵衛に対する怒りがさらに爆発した直近は名無しの権兵衛を必ず殺すと意気込んだ。


が、二回目の【ケットウ】ではガマばぁのおかげで体力が回復した名無しの権兵衛に翻弄されて両手を失っただけでなく、直近の目の前で名無しの権兵衛は自殺した。

お前に殺されてたまるかという名無しの権兵衛の意思表示に直近の怒りは最高潮に達し、癇癪を起こし暴れて壊して凍らせた。



◆◇◆◇◆



一人で叫びながら大暴れして殺し合いの場をめちゃくちゃした後も朧の苛立ちは収まらなかった。

その場で寝転がり氷で傷口を塞いでいる両腕と両足をバタバタと動かしていた。


「むかつくむかつくむかつく!」


【刀持ち】になった時に願って手に入れた年齢操作の能力で大人の姿になっているが、中身は子供の朧は傷の痛みをものともせずに腕をバンバンと地面に叩きつける。


「あいつ、ななしぜったいぼくがぶっころす!」


奥の手を使い両手を斬られてもまだまだ体力が有り余っている朧はそう叫んだ。

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