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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
名無し
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二十五話 再戦

蘇生された部屋から出て少し歩くと名無しの権兵衛は見知った顔に出会った。


「お疲れ様でした。名無しの権兵衛さん。」


名無しの権兵衛を出迎えた文太は軽くお辞儀をする。


「【ムソウ】千人斬り達成おめでとうございます。そして急な【ケットウ】ご難でしたね。」


名無しの権兵衛の快挙を祝し、その後の朧との【ケットウ】について憐れむ文太。


「申し訳ございません。まさか朧さんがあんな方法をとってまであなたと接触するなど考えつきませんでした。」


文太は朧の流浪に対する執念を知っている。この場にいないクリムゾンも知っている。【合戦場】にいる他の多くのもの達も知っている。

だからこそ文太とクリムゾンは流浪の持っていた刀、【無名】を持つ名無しの権兵衛に対して朧が何かしらの行動をとってくると思っていたため、朧と名無しの権兵衛が接触しないよう気をつけていた。

しかし、朧は監視の目を掻い潜り名無しの権兵衛と【ケットウ】を行い、そして圧倒的な力で名無しの権兵衛を殺した。


初めて殺された名無しの権兵衛はガマばぁのおかげで蘇生され傷と疲労はなくなっているが、心はきっと疲弊しているだろう。そう思っているクリムゾンから名無しの権兵衛を励ましてくれと言われた文太がこうして自らやって来た。


そうとは知らない名無しの権兵衛は唐突に口を開く。


「そうですか。ところで詫びの品を貰えるという話、今でも有効ですか?」


詫びの品というのは【ムソウ】が始まる前の時に文太が話した事だ。


「えぇもちろん。何か欲しいものがあるのでしたら遠慮なく言ってください。可能な限り用意しますよ。」


それを覚えている文太はもので名無しの権兵衛の気が少しでも晴れるのならばと快く了承する。


文太の返事を聞いた名無しの権兵衛は言葉通り、遠慮なく今欲しいものを要求した。



◆◇◆◇◆



「三日月! ちゃんと謝れ!」


名無しの権兵衛との【ケットウ】を終え戻ってきた朧は真っ先に鯏丸に怒られた。別室に案内された現在も鯏丸に叱られているが隣に立つ鯏丸に本名で呼ばれ謝罪を促されても朧はそっぽ向いて何も言わない。


「お前なぁ! 大将が勝手に他の島に行ったら騒ぎになるって前に教えただろ!」

「落ち着けよ鯏丸。朧が無口なのは昔からなんだろ。」


怒りで興奮している鯏丸を宥めようとしているクリムゾン。


「名無しの権兵衛は俺達で何とか励ますから早く朧を連れて帰った方がいいぞ。鉢合わせしたらまずいだろ。」


【ケットウ】で酷い殺され方をした名無しの権兵衛の事を労おうとしているクリムゾンはこれ以上名無しの権兵衛に朧を関わらせないようにと鯏丸にそう言う。


「確かにそうだな。分かったすぐ帰る。ほら、帰るぞ三日月!」


クリムゾンとほぼ同じ考えだった鯏丸は素直に聞き入れ朧を引っ張ってでも連れ帰ろうとする。


「少々お待ちを。」


その行為に待ったをかけたのは文太だ。文太の後ろには名無しの権兵衛がついている。


「文太。それに名無しの権兵衛も。どうしてここに連れてきたんだ。」

「名無しの権兵衛さんの方から朧さんに用事があるそうなので連れてきました。」


クリムゾンは文太に名無しの権兵衛と朧を接触させないよう気をつけてくれとあらかじめ言っていた。にも関わらず文太は堂々とこの場に名無しの権兵衛を連れてきた。

クリムゾンと鯏丸は顔を合わせた朧と名無しの権兵衛がどんな反応をするのか落ち着かない様子で見ていた。

朧は今もそっぽを向いているが、名無しの権兵衛の方はゆっくりと朧の方に近づいていく。

それに危機感を感じた鯏丸は朧と名無しの権兵衛の間に立つ。


「な、なあ。名無しの権兵衛。三日月が疲れているところにいきなり【ケットウ】申し込んだのは悪かったよ。だから」

「大丈夫です。別にその人に仕返しをする気はありませんから。」


名無しの権兵衛がそう言うと鯏丸は安心してほんの少し気が緩む。もし名無しの権兵衛が先ほどの事で怒り、朧に襲い掛かったら名無しの権兵衛はまた、あるいはさらに残酷に殺されるとひやひやしていたからだ。


「まぁ、嘘だけど。」


だからこそ、鯏丸と朧が油断した隙に名無しの権兵衛が朧の顔面に【果たし状】を叩きつけた時は思わず失神してしまうほどの精神的衝撃を受けた。


「な、なななな名無しの権兵衛!? 何やってるんだ!?」


同じく名無しの権兵衛の事を心配し、名無しの権兵衛の嘘に騙されたクリムゾンも名無しの権兵衛の行動に驚き、慌てふためき真っ先に名無しの権兵衛の行動理由を問いただす。

しかし、名無しの権兵衛が答える前に朧が顔面に投げつけられた【果たし状】を握り潰したのをきっかけに【巫女】であるすぅが現れた。


「次は名無しの権兵衛か! 【果たし状】を確認した。今すぐやるか?」

「もちろん。」

「なら行こうすぐやろう! 【刀持ち】同士が戦う【ケットウ】をしに! 場所は?」 

「隠れられるところが多いのでお願い。」

「了解。」


誰かが口を挟む間も無く名無しの権兵衛と朧は戦いの場へと即座に転送されてしまった。

残された鯏丸とクリムゾンは頭を抱えた。


「嘘だろおい。あんな殺され方をされてすぐに挑むか? というか、なんであいつは【果たし状】を持っているんだよ。」


【果たし状】は【写し持ち】だけでなく【刀持ち】も使う事がある。

【刀持ち】同士が戦う場合、【ぶっ殺ランキング】の順位にかなりの差があると戦えない。下位のものが下剋上をするために、上位のものが自分の地位を脅かす存在を潰すために使う。

【写し持ち】も【刀持ち】も【果たし状】は常に欲しいと思っているため【果たし状】はすぐに売り切れになってしまう。


「あぁ、私が渡したからです。」


それについて、文太はすんなりと話した。


「はぁ?!」

「文太が!?」


それを聞いた鯏丸とクリムゾンは衝撃を受け文太の顔を見る。


「名無しの権兵衛さんから詫びの品に【果たし状】を要求されたので渡しました。」


二人に注目されている文太は落ち着いた様子で微笑んでいた。


「まぁ、すぐに使うとは思ってもいませんでした。名無しの権兵衛さんの行動は私にも予想がつきませんでした。」

「いや、名無しの権兵衛が朧に会いたいって言った時に察しただろ。」

「さすがクリムゾン様。お見通しですか。」


悪びれなくそう言う文太に鯏丸は憂鬱そうに眉間に皺を寄せる。


「どうするつもりだよ。三日月、相当怒ってたぞ。また酷く殺されるぞ。」

「怒っているのは名無しの権兵衛さんも同じかと。」

「そうだけど。そうなんだけど!」


理由があって名無しの権兵衛に【ケットウ】を申し込み殺したのだろうが、名無しの権兵衛からすれば疲れているところに殺し合いを申し込まれ、腕を斬られ首を絞められて苦しめられた後に殺された。それに対して怒るのは当然だと鯏丸は分かっている。しかし、朧の実力をよく知っている鯏丸としては実力差があり結果としてこっぴどく負けたにも関わらず挑戦する名無しの権兵衛が危なっかしく見えるため放っておけなかった。


「まぁ、起きたものはしょうがない。せめて見守ろう。」


クリムゾンも名無しの権兵衛に気にかけ、名無しの権兵衛がとった行動に驚いたが、今は落ち着いていた。

端末を取り出し操作すると映像が映し出された。最初に映ったのは上下左右に構わず縦横斜と角度を変えて数多くの柱が立てられている空間。

しばらくその映像が映し出されると、画面が切り替わる。

次は柱が立てられていない円を描くように開けた場所を上から映し出された。円の中心あたりに人が二名いるのが確認できるがこの場面では二人の姿はよく分からない。

再び場面が切り替わる。

今度は円の中央にいた二人の姿がはっきりと映し出された。

片方は名無しの権兵衛。

片方は朧。

両者は向かい合う形で睨み合っていた。



◆◇◆◇◆



「ん?」


蘇生され、野暮用を終わらせた後目的もなく【火の島】のあちこちに歩き回るアキノは大広間に設置されている大画面に映し出されたものに興味を惹かれ一旦立ち止まり、よく見るために近づいていく。

大画面に映っているのは同時刻、クリムゾン達が見ているものと同じもの。名無しの権兵衛と朧の【ケットウ】の様子が映し出されている。


「名無しの権兵衛。」


アキノは何気なくつい先ほどまで殺し合い、そして自分を殺した相手の名前を言う。

アキノは自分を殺した名無しの権兵衛が今度はどんなふうに戦うのか興味が湧き、そして次に殺し合う時のための参考に人が集まる前にいい位置に着いた。そして早く始まらないのかと待っていた。


『注目だ画面の前のお前達! 今回の【ケットウ】の相手はこの二人! 殺されたその日に再戦、名無しの権兵衛。相手はもちろん朧だ。今回も余裕で勝つのか? それとも下克上をされるのか。見逃し厳禁だ!』


画面の向こう側にいるすぅが二人の紹介をすると名無しの権兵衛と朧の名前を聞いた通行人達が大画面の前に集まりだした。


『さぁ【ケットウ】の始まりだ!』


多くの人達に注目されている中、名無しの権兵衛と朧の本日2回目の殺し合い、【ケットウ】が始まった。

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