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るろうがぁる   作者: 日暮蛍
名無し
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十六話 新たな戦い

『勝者は名無しの権兵衛様です! 見事千人斬りを果たした名無しの権兵衛様に皆様、拍手をお願いします。』


遠くから聞こえてくるせいらの声と観客達の拍手を聞いたクリムゾンはさらに焦った様子で鯏丸の方に顔を向ける。


「やばい終わっちまった!」

「焦るな。あいつのそばには文太がいっうぉ!」


突如二人の間に出現したそのものに鯏丸は驚愕で思わぬ声が出てしまった。


「文太!?」


突如出現したもの、文太を見てクリムゾンは信じられないものを見るかのように目をひん剥く。

文太もこの状況に驚いているのか険しい表情を見せている。


「なんで、どうしてここに!?」

「…【ムソウ】が終わった後、すぐにここに転送されました。天野の仕業ですね。」

「てことは今あいつは一人かよ!」

「えぇ。かなりまずい状況です。早く朧さんを見つけないと。」


クリムゾンや鯏丸ほどではないが、文太もこの事態に焦りを、そしてこの状況を作り出した天野に対して僅かながら苛立ちを見せている。


「よし、急いで名無しの権兵衛のもとに」

「おうさま!」

「クリムゾンさま!」


クリムゾンが走り出そうとした時、子供達が近寄ってきた。おそらく【ムソウ】を観に来た親が連れて来たのだろう。

駆け寄ってくる子供達にクリムゾンは足を止めて文太の方に目配せをすると文太は頷き目を閉じた。文太の反応を見たクリムゾンは少し屈み子供達の話を聞く体勢になる。


「どうしたんだお前ら。」

「オチムシャくんを叱って!」

「オチムシャくん、テレビばっかり見ておれ達の事無視するんだ。」

「オチムシャくんが?」


子供達の言うオチムシャくんとはサイボーグオチムシャくんの着ぐるみの事だろうとクリムゾンはすぐに思い当たる。しかし、サイボーグオチムシャくんがいるという情報にクリムゾンは首を傾げる。


「今日ってオチムシャくんが出る日だっけ?」


クリムゾンの記憶ではこの日、サイボーグオチムシャくんの着ぐるみを使用する予定ではない。にもかかわらず、子供達はサイボーグオチムシャくんを見たと言う。


「着ぐるみならいたぞ。」


さらに鯏丸も着ぐるみを見たと言う。


「えっ、どこで?」

「休憩所にいたぞ。お前がいたところは死角になってたから見えなかったのかもな。」

「何ですって。…まさか!」


子供達と鯏丸の話を聞き、目を見開く文太。が、すぐに目を閉じて何かに集中するように眉間に皺を寄せる。


「着ぐるみ、着ぐるみ。…いた! だけど、まずい! 接触する!」

「おい、一体どういう…まさか!」


いち早く着ぐるみを着ているものの正体に気がついた文太。

少し遅れて察したクリムゾン。

二人が何を言っているのか分からず首を傾げたり顔を見合わせる子供達と鯏丸。


しかし、気がついたところでもう間に合わない。



◆◇◆◇◆



一方その頃。


【ムソウ】による千人斬りを終えて血塗れの体を洗おうと近くにあるシャワールームに向かおうとする名無しの権兵衛の前にサイボーグオチムシャくんの着ぐるみを着たものが立ち塞がる。


「えっと。何か用?」


疲労困憊の名無しの権兵衛は早く帰りたかったのだが、目の前にいる着ぐるみを着たものが邪魔で通れない。着ぐるみを着ているものから避けて道を通ろうとするが名無しの権兵衛の動きに合わせて着ぐるみのものも動く。着ぐるみを着たものにどいてほしくて話しかけるが、着ぐるみを着たものは何も話さない。着ぐるみのものが一体何をしたいのか分からず、さらに疲労と血のベタつきで苛立つ名無しの権兵衛。


名無しの権兵衛が【刀装】についた血に気を取られ着ぐるみから視線を外した時、着ぐるみを着たものが動く。

着ぐるみのものが動いた時、名無しの権兵衛は咄嗟に【無名】を手にしていた。

名無しの権兵衛が刀を手にしているのを気にもせず着ぐるみを着たものは名無しの権兵衛に向けて何かを投げた。

名無しの権兵衛はそれを危険物の判断し迷わず刀で突き刺す。


その時。


「よぉお前ら! 元気にしてるか?」


突然、場違いなほど明るい少女の声が聞こえた。

着ぐるみを着ているものに注意しながら名無しの権兵衛が声がした方に目線を向けるとそこにいたのはすぅやせいらのように巫女服を着ている少女が名無しの権兵衛と着ぐるみを着ているものの間に立ち通路の壁に寄りかかっていた。


「【ムソウ】を終えたばかりで悪いが、新たな挑戦者だ名無しの権兵衛。」

「え?」

「刀に突き刺さっている物をよぉく見てみな。」


少女に言われるがまま先ほど突き刺した物を見てみると、名無しの権兵衛は着ぐるみのものが投げた物の正体に気がついた。

着ぐるみが着たものが投げつけてきたのは【果たし状】だ。

これが何を意味するのか名無しの権兵衛が理解した時に少女は声をあげる。


「【果たし状】を突きつけたな朧! 今すぐやるか?」

「もちろん。」


少女の言葉に返事を返したのは着ぐるみを着たもの。着ぐるみの中から聞こえた声は男性のものだ。


「なら行こうすぐやろう! 【刀持ち】同士が戦う【ケットウ】をしに! 場所は?」 

「なにもないところ。」

「了解。」


少女が腕を高らかに上げたと同時に名無しの権兵衛と着ぐるみを着たものが別の場所に転送されていく。



◆◇◆◇◆



オチムシャくんをちゃんと叱ると子供達と約束して子供達を探していた親に引き渡した。

そのためクリムゾン達は今観客席のある場所にいる。

観客席には今も客達が座っており、【ムソウ】を見終わった後も客達の興奮冷めず会場内は熱気にあふれていた。

その時、今回の【ムソウ】のために用意された巨大なテレビ画面に映る映像が切り替わる。


『やっほー会場のみんな。』


画面に映ったのはニコニコと笑みを浮かべている天野。

テレビ画面に突如天野が映った事に観客達は困惑し騒めいている。

クリムゾン達はテレビ画面に天野が映った瞬間、これから起こる事を予想し、そしてそれは必ず当たると確信していた。


天野 一は【合戦場】を盛り上げるためなら例えどんな非人道的な事であろうと平気でやる。


それをよく知っているクリムゾン達は固唾を飲んでいた。


『色々とトラブルはあったけど無事に千人斬りを成功させた名無しの権兵衛。すごいね。【刀持ち】でも千人斬りを成功させるなんてなかなかできる事じゃあないよ。』


会場内の様子を知ってるのか知らないのか分からないが、天野はニコニコと笑みを崩さず楽しそうに話していく。


『名無しの権兵衛の鮮やかなまでの千人斬り。これにはみんな楽しめたんじゃないかな。』


そこで言葉を止めると天野はさらに笑みを深める。


『でも、みんな欲張りだからまだまだ足りないよね。』


天野のその言葉を否定するものはいない。

ここにいる客達のほとんどが血で血を洗うような殺し合いを鑑賞し楽しむためにここにやって来た。新たな殺し合いが開催されるとなればここにいる客達のほとんどはその殺し合いを映像越しから見るだろう。


人の欲は底なしだ。

それを知っている天野は両手を高く上げる。


『そこで、ここからはオイラとビッグゲストからのサプライズ! この場を借りて新たな殺し合いが行われまーす。今度は【ケットウ】。【刀持ち】対【刀持ち】の一対一の戦い。それを今からやるよ。見逃し厳禁だからね!』


天野がそう言った後、観客達は興奮を抑えられず歓声をあげる。中には立ち上がるもの達もいるくらいだ。天野の言うサプライズもといこれから行われる【ケットウ】を、殺し合いを早く見たいと観客達は騒ぎ出す。


観客達の様子が伝わっているのか天野は満足そうに頷く。


『現場にいるすぅ、対戦相手の発表をよろしく!』


天野がそう言うと映像が切り替わる。


映し出された場所は草原と青空以外何もない場所。

そしてそこに立つ二人の姿。

一方は今だに返り血まみれの名無しの権兵衛。

もう一方はサイボーグオチムシャくんの着ぐるみを着ている誰か。


そして今回の【ケットウ】を仕切る【巫女】、すぅが今から殺し合う事になる両者の紹介を始める。


『対戦するのはこの二人だ! つい先ほど千人斬りを果たした名無しの権兵衛対(おぼろ)! またの名を【()の島】の将、三日月(みかづき) 直近(なおちか)だ!』


朧。

三日月 直近。


この名前を聞いた観客達はより一層大きな歓声をあげる。この組み合わせで行われる殺し合いを待ちきれないと言わんばかりに早く、早くと興奮しながら急かす観客達。


そんな中、名無しの権兵衛と朧の対決を回避したかった三名がいる。

クリムゾン。

文太。

鯏丸。

それぞれ頭を抱えたり眉間に皺を寄せたり顔を両手で覆うなど形はそれぞれ違うが、今から行われる殺し合いに対して好意的な反応をしていないのは同じだ。


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