表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
るろうがぁる   作者: 日暮蛍
名無し
14/54

十四話 自己紹介

戦う前に、名無しの権兵衛は聞く。


「なんでこんな事をしたの?」


こんな事とは流浪ぶっ殺すの会のもの達を裏切った事と【写し持ち】を殺し回った事だ。


「理由? …んーそうだな。」


裏切った後、アキノは変化の術で他人の姿になりすまし【写し持ち】達を騙して同士討ちさせたり、戦いの舞台に置かれているものを使って強力な爆薬を作り【写し持ち】が大勢いるところでそれを爆破させたりしてアキノは【写し持ち】を殺した。

そこまでした理由とは何か。


「きっかけは君と、撮影機を持った男だな。君と戦い、男と話をして気がついたんだ。私には私だけのものがない。物心ついた頃から私は忍びとして使われ、利用されてきた。」


自分自身でも確かめるようにアキノは話し始める。ここまでした理由を。


「ずっと我慢してきた。ずっと我慢してきたんだ。だってそれが当たり前だったから。」


そう言って顔を両手で覆い、うつむくアキノ。


「報酬がなくても褒めてもらえなくても冷遇されても罵倒されても我慢してきた。物心ついた時から私は我慢してきた。」


しゃべっていくうちに今まで抱え込んできた感情が溢れてきたのかだんだんと饒舌になっていくアキノ。

名無しの権兵衛はアキノの話に割り込まない。いつでも戦える姿勢でアキノの話を黙って聞いていた。


「だけど、君達と出会ってから我慢が上手く出来なくなって。気がついたら殺していた。皆を裏切ってしまった。」


アキノは顔を見せないまま肩を小刻みに振るわせる。今にも泣き出しそうな姿勢。だが、アキノの口から出たのは嗚咽ではなく


「ふふっ。ふふふ。ふふっふふふ。ふふふふっ。あっははははははははははははははははははっ!」


笑い声。


「あいつら、偉そうな事を言っておきながら【刀持ち】じゃない私にすら負けた! 頭領にいたっては隙だらけ! 散々私の事を弱いだの役立たずと言っておきながら全員私より弱い。弱い弱い弱い弱い弱い! ふふっ。ふふふふふふっ。」


両手をどけて顔を上げて大きく口を開けて高らかに笑う。

煙や血の匂いがあちこちから漂い地面には死体が転がっているこの状況下で、この状況を作り出したアキノは心底嬉しそうに、楽しそうに笑う。


「あぁ、もう我慢しなくていい。これからは自分のためだけに生きていける。もうあいつらの尻拭いをしなくてもいいんだ。もうあいつらのために働く必要はないんだ! まずは、そうだな。綺麗な服が欲しい。お菓子というものを食べてみたい。ここではたくさん人を殺せばそれらが手に入るのだろう? ふふっ。ふふふふっ。楽しみだな。」


アキノの反応を見ても何も言わない名無しの権兵衛を見てアキノは笑うのをやめ、名無しの権兵衛に問いかける。


「軽蔑したか?」

「いや、全然。」


アキノの問いに名無しの権兵衛は首を横に振る。


「いいんじゃない。自分で決めて自分で責任取れるなら。まぁそれとは関係なくお前を殺すけど。」


名無しの権兵衛は別にアキノに対して恨みはない。

【写し持ち】を殺し回った事に関しては【合戦場】では特に珍しい事ではないし、むしろ今まで嫌がらせをしてきた流浪ぶっ殺すの会のもの達を殺してくれたため感謝している。


しかし、今は【ムソウ】を行っている途中だ。目標の千人斬り達成まであと一人。それがアキノだった。ただそれだけが今アキノを殺す理由だ。


「清々しいな。まぁ、そのために【写し持ち】を殺したんだが。」

「どういう事?」


アキノの発言に名無しの権兵衛が首を傾げる。


「今日裏切って分かった事なんだが、私よりも実力の低いものを足蹴にした時、その。興奮してしまってな。調子に乗って爆薬を作って人が大勢いる所で爆破させたら、もう。とても楽しくなって何回もやってしまって。ふふっ。ふふふふ。」

「えっと。つまり?」

「どうやら私、弱いものいじめが好きみたいなんだ。」

「あー。確かそういうの性癖っていうんだっけ?」


頬を赤らめて少し照れ臭そうに話すアキノ。

アキノの発言に対して特に心を乱す事なく平然と受け答えをする名無しの権兵衛。


この場に二人の会話をつっこめるものがいない。

戦いの場を見ている観客達の反応は名無しの権兵衛とアキノには伝わらない。実況を担当しているせいらは二人の会話にどう反応していいのか分からないため無言の状態だ。


「だから、私の弱いものいじめがどこまで通用するのか確かめたくてな。実力を測る相手としてお前がちょうどいいと思い、こうして二人っきりになる状況に持ち込んだ。」

「ふーん。」

「それともう一つ。」


その一言で一転。

アキノは表情を切り替えた。笑みを消し、真剣な眼差しで名無しの権兵衛に向き合う。


「実力を発揮した上でお前と戦いたい。」


以前の【ツジキリ】では邪魔な存在のせいで名無しの権兵衛にもアキノにとっても不本意な形で決着がついてしまった。

しかし今回は違う。

今この場にいるのは名無しの権兵衛とアキノの二人だけ。この二人の戦いを邪魔する存在は一人もいない。そうなるようにアキノが【写し持ち】を大勢殺し、殺し合わせた。


名無しの権兵衛もアキノも相手に恨みはない。その上で二人は今から殺し合う。


「抜け忍。名はアキノ。いざ参る。」

「【火の島】所属。名は名無しの権兵衛。来い。」


アキノは名乗りをあげ、その後に名無しの権兵衛もアキノの真似をして名乗りを上げる。

その後、両者は動いた。理由はもちろん相手を殺すため。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ