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鈴子、微笑みの中に・・・

駄菓子屋の非日常時間帯・・・・

 SIDE B---


 結局のところ、誇希が、古文めいた口調やら、どこかの緑色した軍曹の口調やら、敬語を使っているのかいないのかわからない不思議な口調に、鈴子は「どうしたものか」と考え込んでいた。

 そんな中、


「ガラガラガラ」


 申し訳なさそうに、駄菓子屋の入り口である引き戸が、申し訳なさそうに開けられる。


「鈴子大奥様、うちの誇希が失礼を」


 開口一番、謝罪の言葉。店に入ってきたのは、50代ぐらいの中肉中背の男が、引き戸を開け方同様に、申し訳なさそうに入ってくる。


「あら、ずいぶんと早かったわね。水菓子君。昔のあなたじゃ、考えられないくらいだわよね?」


 水菓子の昔を知る鈴子の直球が、その水菓子を直撃する。


「ところで、あなたたちは、いったい、こんな若い新人君に、私のことをどう説明しているのかしら?」


 鈴子は、にこやかに微笑んではいるのだが、投げかけられる言葉に、水菓子の何やら冷たいものを感じていた。


「いえ、わが社の創業なされた鈴子大奥様にして会長様に、失礼がないようにと・・・」

「あらそう、創業者は、家の旦那。それに、私は、何の執行権もない。ただの名誉会長で、会社を離れた身よ?それなのに、高級外車のベ○ツを使わせて、礼服まで着せて、ここに来させたというの?」

「は、はい!」

「朝からの得意先回りに遅刻して、挙げ句、直接、先方様に向かいますといって、ズボンが、パジャマのままだったあなたが、それを言う?」


 誇希の表情が、一瞬「えっ?」となる。


「いえ、あの、それは、その・・・」

「あのとき、うちの人が、あとからどれだけ、先様に頭を下げたことか」


 水菓子は、痛恨の一撃を受けた。水菓子が滅びた。


「まあ、それは、それとして、この商品だけど・・・ん?ちょっと、水菓子君?」


 水菓子は、HP1で復活した。鈴子は、一度、箱書きを読んでいるのだが、改めて、少々意地悪くそれを読み返す。


「はい」

「この原材料、どうなっているのかしら?私の見間違い?」

「え?なにがでございますか?」

「これよ。北海道産の大豆に、和三盆、上新粉に使ったうるち米が、銘柄米・・・原価率、どうなってるのかしら?」

「えーっと・・・それはですね」


 心なしか、水菓子の目が宙を泳ぎつつも、誇希の方をみる。その視線に気が付いた誇希は一瞬ビクンとするのだが、新人の誇希が、そんなことを知るわけもない。そんな水菓子を見逃さないのは、鈴子である。


「水菓子君!新人の誇希君に、余計な助けを求めない!あなたが、責任者でしょ?」

「あっ、はい・・・・」


 水菓子の回復しかけたHPが再び1となる。


「ちょっと確認するけど、この商品の企画は誰がしたの?開発部の天海君?それとも・・開発君?あたりかしら?」


 水菓子は、自分のところに回されていた開発部からの企画書のことを思い出していた


「そ、その通りでございます」


 鈴子の質問にノータイムで返事をしていた。 水菓子は、なんとか痛恨の一撃を躱した。


「やっぱりね。前にも注意したし、私が社長職にいた時も、何度となく注意したわよね?二人を使うときは、しっかり手綱を締めなさいって」

「は、はい」

「手綱を締めてないと、どうなったか言ってごらんなさい」

「原価率を無視した上で、製造ラインがないにも関わらず、商品化できると言い切って商品企画をあげて、工場から作る羽目になりかけました・・・・・・・・」

「それがわかってて、二人にやらせたの?」


 水菓子は、冬だというのに、なぜだか背中は、汗でぐっしょりと濡れていた。


「え、いや、その・・・・」


 商品企画課の部長も兼任する水菓子の元に、商品企画課の天海から企画書が上げられたのは、ほんの二か月前のこと。企画書には、高級駄菓子と書かれており、原価はかなりの高額になることがかかれてはいたが、具体的な数字が書かれていなかった。それでも、使用される原材料が安価な商品ばかりが提示されていた。


「部長!ご覧いただいたとおり、この原材料ですと、これまでの製造ラインをそのまま使うことができますから大丈夫です」

「でもなあ。おまえらの企画って信用できないところあるからなぁ」

「心外な。絶対大丈夫ですから!」

「わかった、わかった。なら、試作を作ってこい。ただし、前にみたいに作りすぎるなよ?いいな?」

「さすが部長、わかっていらっしゃる!」


 この時点では、水菓子も、普段きな粉餅の製造しているラインを使えることと、初期製造の数量が、今後、製品化に踏み切れるかどうかを見極める試験ロット数であること、それに加えて、最近の健康志向から、天然素材を生かした商品であることから、かなり迷いはしたのだが、


「そういえば、部長。最近、外国人観光客向けの駄菓子はないのかって、いわれてましたよね?」

「ああ、そうだ、問い合わせがあってな・・それがどうした?」


 水菓子は、天海にそう答えると、企画書に書かれた一文が目に入る。


『最近のインバウンド特需に乗り遅れないため、これぞ日本という駄菓子というコンセプトです』


 と、書かれていた。この一文は、この企画書を読んだ鈴子の息子であり、現社長も、水菓子同様に、納得させられてしまい。これぐらいならと、ゴーサインを出していた。水菓子は、そういった事情についても鈴子に、説明したのだが、その説明を聞くうちに、鈴子の表情が次第に険しくなっていた。


「天海君の言葉に、あれほど惑わされるなと言っておいたのに・・・・うちの子も、うちの子だけど、あなたまでその言葉にのって、どうするの!」

「は、はい?!」


 水菓子の足元には、水たまりができているかのような錯覚するぐらい汗をかいている。とはいうものの、目の前にある商品を前に、鈴子も、怒ってばかりでいるわけなく、いかにして、すべてを無駄にせずに、売ればよいのかを考えていた。そのあたりは、たとえ執行権がないといっても会長職にある鈴子である。


「企画書のことは、乗せられたことは、目を瞑るとして、販路は?」

「へ?販路?」


 再び水菓子のが、緊張し始める。


「あ!」

「ちゃんと、説明受けたの?それとも、試作を見てから、決めましょうとかいわれて、決めてなかったんでしょ?」


 鈴子の直球が、水菓子のせっかく回復しかけていたHPを、またまた根こそぎ奪い取る。


「やっぱり」


 と言う鈴子の表情は、はっきり言って、あきれていた。


 SIDE A---


 カツミは、覚悟をしたうえで、倉庫に入っていた。そこは、棚も崩れていなければ、商品が、床に散乱しているでもなかった。いつもなら、休み前の土曜に、店頭に商品を並べるということをしないのだが、先週に限っては、滅多にしない商品を並べるということをしていた。それもあってか、地下倉庫においてあった商品数は思いのほか少なかった。


「あれ?なんで?」


 それでも、店なり家なりの家具や商品は軒並み床に倒れていたしていたことから、地下倉庫に何の変化もなく、それどころか土曜日のままの状態というカツミにとって、ありえない光景が、目の前に広がっていた。


「どういうこと?なんで?どうして?え?」


 カツミは、多少なりとも混乱はしたのだが、よくよく落ち着いて考えれば、後片付けをしないで済むということになるので。少しばかりホッとしていた。が、もし、土曜日に、いつもはやらない商品だしをしなければ、店頭でゴミと化した商品の数が、多くならなかったことに気がつくと


「うっ・・・これって、なれないことはしちゃいけないって言うことなのか・・・・・・」


と、つぶやきつつもやや落ち込んでいた。結果的に、自分でゴミを増やしてしまった。それが、さっきまでは、いつもよりも多いゴミと悩んでいたのだが、今のカツミにとっては、ゴミの量よりも最大の問題点となっていた。


「ふう。明日、ごみを捨ててから、店頭の商品補充するとして、いま、ここに何がいくつあるか、確認しておかないといけないな・・・」


 カツミは、一度、倉庫を出ると、地下倉庫を片づけなくてすんだことから、軽快な足取りで階段を上がると、持って降りるために準備していたゴミ袋の代わりに、商品リストを挟んでいるファイルをつかむと、もう一度、地下倉庫へをかけ下りるのだった。


どこかで登場人物紹介かな・・・・

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