不思議な挙動と姫の涎?
異なる歴史を歩む二つの地球。時間の流れも少し違う。
---SIDE C
「あっちには、俺がいるのに、鈴子がいない・・・どうしたものか・・・」
死者(?)の戯言・・・・
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---SIDE B
「鈴子会長様。大変、お待たせいたしました!」
見事な土下座をする誇希が、いつの間にか、鈴子や鈴、みあの前にいた。鈴子は、”またか”といった風であるのだが、鈴とみあの幼稚園コンビは、誇希の”ザ・土下座”にどん引きである。
「えーっと、誇希君、孫達がびっくりしているから、それは止めて・・・・」
「そう申されましても、鈴子様に商品をお持ち手前、無礼があってはなりません故、平に、平にご容赦くださいませ!」
鈴子にすれば、彼に鼓動は、迷惑極まりないというか、それにもまして、どうして、彼の”ザ・土下座”の後ろに、山のように、箱が積まれているのか、やはり謎である。どう考えても、ベン○のバンに詰める量では無い。余りにも深い謎のような気がして逆に聞いてはいけないようなと言うより、とりつく暇が無いぐらい突っ込みどころ満載であった。
「鈴ばあちゃん、このお兄ちゃんなんか怖い・・・」
鈴の非常に実直な感想である。
----SIDE A Other SIDE
古都の大路を、ココア達一行は、この地を治める領主アマミの屋敷へと進む。さながら大名行列のような雰囲気を漂わせているが、決してそうでは無く、ココアはにこやかな表情で、往来を行き交う人を眺めている。
「もう少し、はようつかんか?」
「姫様、これが精一杯でございます。これ以上は、周りに迷惑を掛けます故、ご容赦ください」
「妾は、早く、城へ戻りたいのじゃが、駄目か?」
「はい、昨日、アマミ様からお願いされました件もございますし」
「どの件じゃ?」
「特産品の話でございます」
「おお、そうじゃ、知恵は無いかともうしておったのう・・・それぐらい、自分で考えて欲しいものじゃて」
「そうは申されましても、若い女子に受けるものとかおしゃってましたし、アマミ殿のお年では、大層難しいかと存じます」
「うむ、食えぬ爺さんじゃ、じゃが、妾のように、甘味に詳しいとは言え、若輩者に頭を下げるとは、見上げたものようのう?」
「は、誠に、アマミ殿は正しい選択をなさいました」
「うむ、して甘味であるか・・・・甘味、うむ・・・甘味」
ココアは、これから合うアマミ殿に提案すべきものを考えるのだが、甘味のことを考える度に、昨日食べたChocolatの事が思い出される。
じゅるり・・・
「ひ、姫様、どうなさいました?」
昨夜の甘いお菓子を思い出したようで、思わず流れ出たよだれが垂れそうになるも、慌ててすする。
「なんでもないぞ、何でも!さあ、アマミ殿が待っておられるのじゃ、急げ!」
「は!」
話題を慌てて切り替えて、さも何事も無かったように、そば付きのトメオに命じる。
「ですから、姫様、この大路は、人が多くて、これ以上は・・・」
「お、そうであったな。それでも、できる限り急ぐのじゃ!」
「それはそうと、姫様、甘味について何かご提案するようなものについて、何か決まりましたでしょうか?」
”甘味”という言葉を聞く度にじゅるりとよだれをすするココア姫。普段は、まだまだ10代と若いながらも、凜として美しく。両親よりも聡明であるのだが・・・・・、昨日の今日では、どうにもこうにも締まりが無い。
「姫さま?ココア様?」
同行する従者が、いちいちトリップするココアを呼び戻すことが数回続く中、一行は、この地を治めるアマミの公邸にたどり着く。入り口には、ココアを待つ者たちが建ち並び、その後ろにはココアの姿を一目見ようと、住人達が集まっている。
「大王家、ご息女、ココア様、御入邸!」
ココアの到着を告げる声と共に、歓声があがる
「姫様!」
「「ココア様!万歳!」」
「ココア姫!」
「姫様がこっちむかれたわぁ~きゃーっ!!」
アマミのいる公邸前では、ココアを一目見ようと衛士が人混みを整理するのだが、その勢いは、激しい。それだけ、ココアの人気は高い。流石のココアも、昨夜の甘味の事ばかり思い出している訳にもいかず、にこやかに微笑みながら、手を振るが、
「「「姫様ぁ!」」」
「私に手を振ってくださったわ!」
「何を言ってるのよ、私よ!」
「違うわよ、私よ!」
「ひ、め、さ、ま!」
「ココア様が、可愛い!ココア様ぁ!」
一つの動作がいくつもの騒ぎを引き起こす。
「こら、まて!」
とうとう、衛士の制止を振り切った観衆が、ココアの乗る車を取り囲むように殺到する。
「姫様をお守りしろ!」
「そこのおまえ、下がれ!」
「ココア様、握手して!」
喧噪はとどまらず、車は衛士達の誘導の中、速度を落として公邸への滑るこむ。そんな騒動どこ吹く風のココア、なんだかんだ、やはり甘味の事にとらわれていたようで。
「姫様、つきましたぞ」
「・・・」
「姫様?・・・姫様!」
「ん?なんじゃ?甘味か?」
「そうではございません。アマミ様のお屋敷につきましたでございます。」
「もう着いたのか?早いのう、これで早く帰れる」
「姫、本音がダダ漏れでございます・・・・」
「おお、そうじゃった。はよう、アマミ殿の挨拶をして帰るぞ!」
ほぼほぼ、突発的と言っても良いであろうココアは、車をさっと降りると、屋敷の中へとすたすた入っていく。当然、周りにお付きの者も、ココアにつられるというよりも、その行動に慌てているようである。その場に残されたトメオは
「姫様、アマミ殿へのご提案の件は?」
と言葉を口にするのだが、その声がココアに届いたかどうかは、定かでは無い。
----SIDE A
「ハジメ様、このChocolateという甘味は、もうこれだけでございますか?」
ミオは、こてんと首を傾げて、ハジメを見つめる。
「うむ、私の行きつけの店には、これが二箱あったのみでな。店主も、これで売り切れだとか、言っておったな」
「そうで、ございますか・・・姫様が、大変、気に入られておりましたのに・・・残念でございます」
「そうだな。では、この後、町に行く用事がある。そのとき、いつ入荷するか、聞いてこよう」
ハジメが、そう答えるなり、ミオは、目をキラキラさせながら、
「誠でございますか?」
「ああ、姫様が気に入られた言う以上、確認した方が良かろう?」
「そうでございますね。それでは、私もお供いたします!」
と、なぜか、おめめをキラキラさせているミオ。いつもなら、姫様の気に入られたものを買いに行くとなっても、城にとどまり着いてくることなど無い。
「着いてくるのは良いが、いったい、どういう風の吹き回しだ、ミオ?いつもなら、そんなこと言いもしないだろ?」
「いえいえ、そんなことは”これぽっちも”ございません!」
ミオの挙動が怪しさを増していくにつれ、ハジメは、その理由に思い当たる。
「おい、ミオ、おまえ、まさか、姫様への菓子を食ったな?それもかなり?だから、慌てて古都から帰ってきたんじゃ無いのか?」
見透かされてミオは言えば、やや顔を真っ青にしつつ
「そ、そんなことあるわけ無いじゃ鳴りませんか?姫様にお仕えする身で、姫様の甘味を食べるなどと言うことあるわけないじゃありませんかぁ~」
「そうか?それにしても、ミオ、おまえ、なんでそんなに汗をかいているんだ?」
「あ、あ、汗ですか?気のせいです!熱っぽいから、風邪で、体調がぁ」
「ふむ、風邪か、なら、連れて行けないな、部屋へ戻って休め。ミイ、ミイはおるか?」
『げっ!』と言う顔をするミオ、呼ばれたのは、ミオの姉であり、どちらかというと、ミオはこの姉を苦手にしていた。
「は、こちらに」
音も無くというか、それこそ、その気配がふっとわいたように、ハジメの後ろにミイが控えていた。
「ミオが体調をくずしたようなので、すまんが、部屋へ連れて行ってもらえるかな?」
「承知いたしました」
「え゛っと、自分で、行きます・・・・」
「何を遠慮してるのかしら、ミオ?」
「あう・・・・姉様・・・・」
「ミイ、ミオのことは、頼んだぞ?」
「かしこまりました。ハジメ様」
何やら絶望的な表情を浮かべたミオは、ミイに引きずられるように、自室へと連行されていく。ハジメにすれば、姫様が城に戻られた際、いくらほぼ専属とは言え、体調の悪いミオをそばで仕えさせるわけにはいかないための処置であり、もし、ハジメの言ったとおり、ミオがつまみ食いをしたのであれば、それ相応の罰として、自室謹慎を課すつもりでいた。
「ミオが、本当のことを言っていたにせよ、嘘であったにせよ。しばらくは自室待機ではあるな」
ハジメはそう言うと、ふーっと、大きくため息をつく。まあ、だれが見ても、ミオの振る舞いが挙動不審である事に変わりなく、滝のように流れ出る汗の大凡の原因は、ハジメの思うところ、後者の理由であり、それで慌てて城に戻ってきたのだろうとは思ったが、
「さて、姫様の事です。あの甘味を気に入られたということでしょうから、あの店へ行って店主に確認すべきでしょうね」
やれやれといった感じで、再び大きなため息を吐くと、ハジメは、胸元から手帳を取り出して、今日の予定を確認する。予定と行っても、城の主は、国内視察に出かけられており、留守の間。代理を務めるココアも留守であるため、重要な仕事といっても、ほぼ無いに等しく、軽くその確認を終えると
「ミエはおりますか?」
「お呼びでございますか?」
やはりいつの間にか、ハジメの正面に、一人の女性が膝をつきかしずいている。
「すいませんが、この後、町へ出ます。すぐ戻りますが、姫様がお帰りになるかもしれません、その間、お願いできますか?」
「かしこまりました。姉様と留守の間。お任せください」
と、言うなり、ミエの姿はいつのまにか消え・・・
ドン!
「痛いですぅ」
なぜか、頭を抑えていたミエがいた。
「・・・・えーっと、相変わらずですね・・・」
ハジメは、一言そう言うと、頭を抑えて涙目のミエを見ないようにその場を後にすると、町へ、カツミの店に向かうために、少しばかり準備をする。いつもなら、そのまま出かけるのだが、少しばかり雲行きが怪しい。
「雨の匂いかな?」
ハジメは、城の通用口で、傘を手に取る。
「すぐ戻りますが、あとは頼みましたよ」
そう告げると、町へと出かけるのだった。
---SIDE B(
孫とその友達が、誇希の振る舞いに、”また”、どん引きしていた。
「ちょっと、誇希君、もう少し普通にできないの?」
「会長様、そうたまわりましても難きそうろう」
なぜか、床に頭をすりつけての土下座スタイル。先ほどから、荷物を運んでいるかと思えば、瞬時にこのスタイルと取るというのを繰り返していた。
「・・・・おばあちゃん、怖い・・・・」
あげく日本語のようで有り、そうで無いように聞こえる言葉をはっしていることから、鈴達は、鈴子の後ろに隠れて怯えている。
「誇希君!」
「はっ!」
「いい加減、普通に話してくれない?孫達が怯えているのよ?」
「は!」
と、威勢良い返事はするものの、どうしたものかと言う表情とともに、首をこてんと横にした瞬間、怯えささないようにと誇希は、『ニコリ』と笑みを浮かべるのだが、みあは、小さく”キャッ!”と、声を上げて、鈴子の後ろに隠れている鈴の後ろに、隠れる。
「えーっと、それだと、ホラー映画みたいだから、やめなさい」
「・・・・・かしこまりました」
誇希自身、良かれと思ったことが、はっきりと裏目に出たようで、明らかに困惑の表情を浮かべている。
「鈴、みあちゃん、このお兄ちゃんは、怖くないのよ。ちょっと緊張しているだけだからね?」
「「・・・・」」
二人からの返事は無く、鈴が震えているのを、鈴子は感じる。鈴子は思った。
「どうしてこうなった?」
誇希は思った。
「何がいけないんだろう?」
幼稚園児二人は思った。
「怖いよぉ」
いつものように夕暮れが迫る町、いつもならこども達が立ち寄る駄菓子屋、本来なら、ほのぼのとした空気の漂う店内が、混沌してしまっていることに変わりなく。誇希が納品をおえて帰るまで、この空気のままで、後日、改めで、誇希は、鈴子からいろいろと説教されることになり、幼稚園児二人が、彼に怯えなくなるのに数ヶ月を要したことは、別の話である。
同じ名前の人物でも、世界が変われば、役割が変わる。それでも、性格は変わらなかったりするかもしれない。いや、違うか・・・




