小さな台風と大きな暴走
本来、超えることができないエネルギーの壁を超える。ガス星雲に見られる禁制線の論理を使うと説明できるかな・・・・
---SIDE B
「鈴ばあちゃん!」
昼下がりの時間帯はとっくに過ぎて、そろそろ子ども達が駄菓子を買いに来る時間。いつもなら、午前中かお昼には、商品の補充を済ませているのだが、今日は、誇希が納品せずに会社に戻ってしまったため、所々、駄菓子のスペースに空きがある。しかたないと思いつつ、なんとなく空いていることに罪悪感を鈴子は抱いているのだが。
「おや鈴じゃないかい。こんなに早い時間に、どうしたんだい?」
「えっとね。うんとね。お友達!」
いつもなら、夕方、琢美がやってきた後、追いかけるようにやってくる鈴が、今日は、まだ、3時半を回ったところだというのに、みせへとやってきた。それも、その鈴の後ろに隠れるようにして、鈴子の事を見つめる透き通るほどに澄んだ瞳が二つある。
「あらあら、お友達かい?」
「うん!えっとねぇ、みあちゃんです!」
「は、はじめまして、み、みあです」
鈴が友達を連れてここへやってくることは、稀である。なぜなら過去に一度、同じ幼稚園で、同じ組の男の子と鉢合わせになったことがあった。そのとき、なぜだか、鈴が大好きなお菓子にケチをつけ、あげく翌日の幼稚園で、あること無いことどころでは無いこと無いことを言いふらされた事があったからである。
「はい、いらっしゃい。みあちゃん」
鈴子は、そんなみあに優しく微笑み掛ける。が、どうも、みあは、人見知りのようで、先ほどよりはましではあるが、それでも少しばかり鈴の後ろに隠れるように立っている。
「みあちゃん、これが、あの美味しいやつなのぉ。ねえ、ばあちゃん」
と、鈴は、きな粉餅の少しばかり大きな箱を手に取ると、
「みあちゃん、大丈夫だよ。おばあちゃん、優しいから!」
「すずちゃん・・・・うん」
幼稚園児の覚悟というか、みあは、鈴の横に出てくる。すると、鈴は、手に取ったきな粉餅の箱をみあに手渡す。
「・・・ほんとだ・・・やさしい香りがする・・・・」
箱に入っているとは言え、きな粉餅の甘い匂いは、箱の外まで漂う。
「ねぇ、おばあちゃん、これ一つ。みあちゃんにあげていい?」
「・・・すずちゃん、悪いよぉ・・・」
「あらま、鈴が、おねだりかい?珍しいねぇ」
いつもなら、おねだりは、鈴の兄、琢美がやっているのことである。まあ、大体いつも、琢美がおねだりししているところに鈴がやってきて、それを、「母親に言いつける」と言われたり、「お兄ちゃんなんだから妹に少し分けなさい」とか言われて、少し鈴に取られていたりする。
「すずちゃん、駄目だよぉ・・・お店のものを・・・」
「でも、みあちゃん、おばさんのお見舞いに、あのお菓子を持って行きたいんでしょ?」
「お見舞い?どうしたんだい??」
鈴の言葉に、鈴子は、”?”となるのだが
「えっとね、あのね・おばあちゃん、みあちゃんのお母さんがね。入院しているの。でね」
鈴が言うには、いつもは、幼稚園へみあを迎えに来るのが、ここ数日一人でかえるみあのことが気になって、
『おばさんは、どうしたの?』
と、鈴が聞いたところ、みあちゃんのお母さんは、出産のために入院して無事出産したのだが、体調が戻らず、入院したままになっているということで、幼稚園児二人が、
「一緒に、おばさんのお見舞いに行くことにしたの」
と、鈴子に答ええるのだが、さすがに、孫とその友達だけで、『お見舞いに行く』と言う言葉に、
「そうなの?じゃあ、おばあちゃんも一緒に行こうか?」
と、鈴に言葉をかける。
「おばちゃん、ほんと?!」
「 二人だけでお見舞いに行くのは、危ないからね」
鈴子の言葉に、笑みを浮かべる鈴である。
---SIDE A
カツミは古い印刷機を、倉庫の中から引っ張り出した。引っ張り出すと言っても、地震のせいで、あれこれ物がくずれた倉庫の中からであり、そこは、
「絶対、後で、片付けに来よう!」
と、声に出して誓うぐらいひどい有様である。ただ、そこには若干埋もれているものの、なぜか、無造作におかれた机の上に、わずかながらの金属光沢が見える。
「えーっと、これだな」
とばかりに、カツミは、その金属光沢を掘り起こすように、上に崩れ覆い被さっているものを除けると、そこには非常に古めかしい機械があった。それは、カツミの探していた印刷機である。
「さてと、この印刷機、動くかな?」
カツミは、不安はあるものの味に間違いない商品のを売ると決めた以上、きれいで見栄えの良い賞味期限シールを作ろうと考えた。だから、両親が、昔、物珍しさから買ったものの、結局、使わなくなって倉庫にしまい込んだ印刷機があることを思い出してここに来たのだが
「運び出すか・・・・・・っと、嘘!」
流石に、ここで使うわけにはいかないず、両親も、店のバックヤードでこれを使っていたこともあり、カツミは、運び出すことにしたのだが、古い印刷機だけに、やたらと重い。下手に抱えると、腰を痛めそうなほどである。
「これ、手動でも動くから・・・」
と、一瞬、運び出すのを諦めて、ここで使おうかと、ぼやくようにつぶやくものの、ここは倉庫、電気も無ければ、窓も無い。灯りと言っても裸電球だけであり、冬冷房、夏暖房完備なこともあり、ここで作業するにはつらい。
「しゃーない・・・・はこぶか・・・・」
おおきなため息を一つ付くと、気合いを入れて、印刷機を抱えるのだが
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理・・・絶対、無理!重すぎるって!」
と、一人住まいの家で、叫ぶ羽目になる。しかたなく、印刷機が載る机ごと引っ張り出すというか、押し出す形で倉庫から外へと出そうと試みる。格闘すること、30分、ようやく、印刷機は机ごと倉庫を出た。印刷機を置こうと思っているところまでは、まだ遙かに遠い、カツミは気が遠くなりそうになるものの、裸電球だけの倉庫から通路ではあるが明るい場所へなんとか出したこともあり、半ば折れそうになる心をいたわるつもりで、印刷機が動くかどうかを確認することにした。
「えーっと、これ、ちゃんと動くかな?というか、これどうやってうごかすんだっけ?」
ただ、引っ張り出しただけでは、不要の長物、動かなければただのごみであり、運び出した苦労は水の泡である。そんなことを考えながらも、かって、両親がどう使っていたかとか、自分でも少しばかり使っていたこともあり、記憶をたどるように、機械をいじり回す。
ぱしっ!どん!
「いてっ!」
何かの留め金が外れたのか、勢いよくふたが外れ、機械の下を見ていたカツミの頭を殴打する。
「あいててて、そういや、これって、こう外れるんだった」
後の祭りである。
プシュッ!ドン!!
「いたっ!」
今度は、何かのレバーを触った途端、何かが外れたようで、またまた、何かのふたが、カツミの頭にあたる。先ほどより勢いがあったようで、これは流石に痛かった。
「うっ、そういえば、ここって、バネの力で勢いよく外れるから気をつけろって、父さんにいわれてたっけ」
機械を触りながら、昔の事を思い出すのだが、機械が動くことが確認できるまで、なんども同じようなことを繰り返し、あげく、またまた、ふたで頭を殴打することになる。
「うううう、いい加減、懲りろよな自分・・・・」
自身のふがいなさに、呆れつつも、長い間倉庫に放置していた印刷機の状態が良かったようで、原稿さえセットすれば、すぐにでも、使えることが確認できて、カツミは、ほっとするのである。
「さてと、あとはっと、原稿用のシートは、まだ、大量に部屋にあるし、えーっと、そういや、インクは、どこにしまったかな?」
カツミは、そう独り言を言う。もし、この場に誰かがいれば、変な奴だと思われたことだろう。結局、あれやこれやと記憶をたどりながら、インクを探し回るのだが、見つからない。
「あれ?ここだと思ったんだけどな・・・・どこにおいたんだっけ?」
なんだかんだと、店と自分の部屋以外はこれといって片付けていなかったのが災いとなり、探す端から全てを片付ける羽目になったことは言うまでもない。肝心のインクはと言えば、なぜか、両親が使っていた部屋の押し入れの中に、それも箱にして、5ケーズの黒インクを見つけることになるのだった。
---SIDE A Other Side
「ミオ!ミオはおらぬか!」
「姫様、いかがなさいましたか?」
「ミオを呼んでおるのじゃが、そちはミオがどこにおるか知らぬか?」
ココアは、昨日食べたChocolatの残りを食べたかった。だから、ミオを呼んだのだが、代わりにトメオがやってくると
「は、姫様、ミオでしたら、先触れとして、お城の方に戻るとかで、先ほど出立いたしましたが?」
「なんじゃと?」
トメオの思わぬ返事に、なぜかだか絶句するココア姫
「どういうことじゃ?」
「いえ、申した通りでございますが?」
「どうしてじゃ?」
「ですから、先ぶれとして城に戻られました」
昨日の残りをミオは持っていることを確信していた。それは、ココアが、ミオが持つ箱の中にChocolatがいくらか残っているのを目撃していたからであり、トメオの返事に呆然とする。
「なぜじゃ・・・・いつもなら、ミオが先ぶれで帰るなどないであろうが?」
「は、はぁ、そうなのですが、どうしても、今日は、姫様のために先ぶれで帰ると申しまして、姫様の許可もとっていると聞きましたし・・・」
「妾は聞いておらんぞ?どういうことじゃ?」
トメオは、『っ?』と驚いた顔をするのだが、
「ですが、ミオがそう申しておりましたし・・・姫様に確認した方がよかったでございますでしょうか?」
「なら、ミオが妾へ何かおいていかなんだか?トメオ?」
トメオは、ココアの問いかけに『?』を飛ばすだけである。
「ミオが、姫様にでございますか?」
「そうじゃ、何か、こう、甘い香りのするものをおいていかなんだか?」
怪訝な顔をするトメオだが、何かを思い出したのか。
「姫様、これでございますか?」
「そうそう、これこれ、この甘い・・・・って、違うであろうが!これは、甘いが甘納豆でであろうが!茶色い粒のようなものじゃ!」
「ああ、これでございますね?」
トメオは再び、何かを取り出すと、ココアに手渡す。
「そうそう、この小さな粒をたくさん入れた鍋を、弱火で煮ると・・・・って、違う!これは小豆ではないか!」
「だとしましたら、ミオは、姫様に、何もおいて行っておりませんが?」
トメオの言葉に、茫然自失のココア。
「姫様?」
「もう、よい!城へ帰るぞ。早う支度せい!」
ココアは、おそらくはミオが持っているであろうChocolatを食べたいことに変わりなく。いつもの冷静な姫であれば、前日の領主から訪問を受けた。翌日は、その視察も兼ねて、度領主の下へ挨拶に出向くのだが、どうも、今回は、いつもと勝手が違ったようで・・・・
「姫様、本日予定されております。アマミ殿へのご挨拶は、いかがいたしましょう?」
「ええい、また、あとじゃ!」
「姫様!それは、アマミ殿に対して失礼でございます!」
「かまわぬ!早う城へ戻るのじゃ!」
「姫様・・・・それはなりませぬ。父王様の名代としての任された仕事でございます。もし、ないがしろになさいますと、父王様よりお叱りを受けることになりますぞ?」
いつもなら、ココア姫がわがままを言うと、ほぼ専属の世話係でもあるハジメが諫めるのだが、今日は、その役回りをするのはトメオであり、立場上、少々、荷が重いのだが・・・
「うっ・・・・しかられるのは嫌じゃ・・・仕方ない。では、トメオ、早う、挨拶に参るぞ!支度せい!」
なんとか、ココア姫を押しとどめることに成功する。さて、珍しく、先ぶれとして城へ帰ったミオはというと・・・・
「ううう、毒味をしすぎて、食べ過ぎた・・・・」
ようは、姫様へお菓子であるChocolatをあろうことか、半分以上食べてしまい。姫様が、追加を所望したことから、それがばれるとまずいと思ったことから、その場を逃れるために、先ぶれを志願したのである。
「たしか、ハジメ様が、あの菓子の箱を、もうひとつ持っておられたから、戻ればなんとかなる!」
要するに、ミオは、一時的に逃げ出したのであり、城に戻ったミオは、ハジメに、姫様がChocolatが、非常に気に入ったことを伝え、姫が戻り次第、Chocolatを出すことを進言するのだった。
SIDE Bの世界は、今の地球をモデルとしてます。
SIDE Aの世界は、昭和の雰囲気漂いつつ、歴史が異なります。例えば、ヨーロッパでは、フランスがなく、フランク王国が千年王国となっています。また、第2次世界大戦はあったようですが、太平洋戦争はありません。なので、SIDE Bの世界とは、異なった歴史を歩んでいます。なので、国ごとの元号が違っていることも当然ですが、西暦(共通歴)のような統一した年号表記もありません。




