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Introduction

どこにでもあるような日常の話です・・・きっと・・・・多分・・・・おそらく・・・・・

ある著名な博士は語った。


 「マルチヴァースを懐柔させてみよう」


 SIDE 0---


 そこには、何も無い。無の世界。それを認識出来る存在もすらない。時間の概念もない。そんな世界に、あるとき、誰かが、何かを投げた。波が起きた。周りに拡がる波。重なり合う波。やがて真空が生まれ、それが、波の上に乗る。その中につかず離れず、二つの塊が連なるように、別れていく。やがて、それらは、それぞれ、真空中で爆発する。似て異なる二つの塊が、離れもせず。つかず離れず、互いのそばにいた。


 SIDE A---


 王歴2609年12月30日、深夜、草木も眠る丑三つ時。日本の西方地域にある地方都市である。


「もうおなか一杯・・・ぬははは・・・ZZzzz」


 ゴーッ!突然の音。


「はひ?・・・・えっ?」


 ゴーッ!


 それは、はるか地の底から響いてくる。さらに大きな”ゴーッ”という音と共に、家が大きく揺れはじめた。


「じ、地震だぁ!」


 慌ててベッドで起き上がる。が、目の周りが大きく揺れ、部屋の家具がぐらんぐらんと揺れている。


 ドスン!ドスン!


「えっ?」


 枕元の本棚の上から、分厚い本が落ちてくる。


 ゴーッ!


 揺れが治まることもなく、家具が今にも倒れそうなほど揺れている。


男は、はっとして部屋から逃げだそうとしたのだが


「痛!」


 部屋の中は、真っ暗。頭上から何かが落ちてきたものが頭にあたり、寝起きの頭は、さらに身体をふらふらさせながら、床の上の何かを蹴飛ばしていた。「そういえば、昨日寝る前に、鞄をおいたっけ?」てなことを思い出し、「散らかったなぁ・・・後で片付けないと」とか考えながらも部屋を出た。


 男が、部屋の外へでると、地震のせいなのか、あっちこっちで、本棚や家具がひっくり返っていた。片づけることを考えていると気がどんどん重くなる。そんな中、家の揺れはますますひどくなっていく。それでも、男の頭の中には


「片づけなきゃ」


という言葉が、絶えず浮かんでいるのだが、もはや、それなことを考えている場合ではないぐらい揺れている。本能が”早く外へ逃げなさい”と、呼びかけてくる。男は思い出したかのように、玄関へ向かうが、内側からのカギを開けても扉が開かない。


「嘘!」


 男の顔に焦りが浮かんでいた


 ガチャガチャガチャ


 何度やっても、扉は開かない。揺れは、ますますひどくなってくる。”このままでは家の下敷きになって死ぬ”。絶望感に襲われるも、「そんな死に方は嫌だぁ」とばかりに、男は、扉に体当たりをする。


 ドスン!ざざざぁ・・・・


 さっきまで開かなかった扉は、男の体が触れる前に、突然開いた。当然、男は、あるはずに扉にぶつかることもなく、そのまま外へ飛び出しすと、防犯用にと、昨日敷いたばかりの砂利に思い切り顔から滑り込んだ


「いってぇ・・・・・って、え?あれ?」


 顔面擦り傷だらけになりながらも、外へ出たのだが、微妙な違和感。揺れてない・・・・男は、驚いて家の中を覗くとまだ少し揺れている。


「え???? なんだ??? うちだけ????」^^」


 何が起こったのか理解出来ないまま、男は、家の中に戻る。男の名は、カツミ・スカリ。町外れで、生活に必要なものを売り、お客さんを笑顔にすることを目的に雑貨屋をやっている男である。やがて、家の中の揺れがおさまるにつれ、カツミの頭も冴えてくる。


「家の中がこれだと・・・・あああ、もう・・・店の中、見るの嫌だな・・・・ぐちゃぐちゃだろうな・・・・」


 はっきり言って気が重いという表情を浮かべていた。救いなのは、今日が休みであることで、後でゆっくり片付けられる代わりに、せっかくの休みが潰れてしまう。


「それにしてもなんだったんだ・・・・あの地震は・・・」


 カツミは、少し心配になって、もう一度外へ出ると、家の周りを見て回る。


「やっぱり壊れてるところ無いよな・・・・でも、中はぐちゃぐちゃ・・・・」


 大きなため息をつくと、家の中へともどる。


「今何時だっけ・・・・げっ、丑三つ時かよ・・・真夜中じゃん・・・もう一眠りして、朝になった片付けよう」


 カツミは、なんだか独り言が多いなぁと自嘲しながらも、自室へ戻る。当然、自室もぐちゃぐちゃである。


「もう、あとあと!全部朝になったら、片付ける!」


 ひときわ大きな独り言のあと、顔中擦り傷だらけなのだが、カツミは、妙に疲れていたこともあり、ベットに倒れ込むように突っ伏した。


 カツミが横になったベッド、いつもは、枕のある位置のほんの少し上、先ほどの揺れで、壁の表面が、剥がれて、縦30 cm、横90 cmほどの扉が、現れていたのだが、この部屋の主は、暗闇の中、そんな事に気づくわけも無かった。



 SIDE B---

 ここは、日本、瀬戸内に面した某地方都市。平成も、後少しで終わろうとしているころ。


 学校帰りというか、小学生の男の子が、家の近所にある駄菓子屋へと走っている。


「鈴おばあちゃん!」

「あらあら、どうしたの?」

「遊びに来たよ!!」

「まあ、まあ、たくまちゃん、お母さんには、おばあちゃんのとこに行くって言ってきたのかい?」

「えーっと、えーっと・・・」


男の子の視線は、宙を泳ぐ。男の子の名前は、佐藤 琢美。そして、この駄菓子屋の主人である鈴ばあちゃんこと佐藤 鈴の孫である。


「仕方無いわね。おばあちゃんから連絡しておくわね?」

「えーっと・・・・ごめんなさい」

「まあ、いいわ。その代わり、ちゃんと中でおとなしくしているのよ?」

「うん!宿題をしようと思って来たんだ。でね。鈴ばあちゃん、これ、食べてもいい?」

「売り物なんだから、たくさん持って行っちゃダメだよ?」

「うん!わかった!」


 琢美は、駄菓子屋の店先におかれた小さな容器に入ったヨーグルトのようなあたり付きのお菓子を2つほど取ると、早速、一つ開ける。


「あ、あたった!!」

「おやおや、まあまあ、琢美ちゃんは、運が良いね。もう一つ持って行っていきなさい」


 琢美は、鈴ばあちゃんのやさしいところが大好きなおばあちゃん子。暇さえあれば、駄菓子屋の鈴ばあちゃんのところに入り浸りである。まあ、目的は、お菓子って言うところが、子どもらしい。


 ピロロン~♪


 鈴ばあちゃんのスマホからメールの着信を告げる音がする。


「お義母さん、家の琢美がお邪魔してすいません。あとで、迎えに行きますので、それまでよろしくお願いします」


 短い内容ではあるが、息子の嫁からのメールを読み終えると


「琢美ちゃん、おかあさんが、後で迎えに来るそうよ。」

「えーっと、鈴ばあちゃん、明日日曜だから泊まる!」


 鈴子は、孫の琢美が泊まりたいと言う言葉はうれしかったのだが、息子から”母さん、孫が可愛いからって、少々甘やかしすぎ!”と言われていたこともあり、


「あらまあ、たくみちゃん、それはさすがにお母さんに確認しないとダメよ」

「う~ん・・・わかった。じゃあ、迎えに来たときに、泊まっていいか聞くから、良いって言われたら泊まっても良い?」

「そうね。泊まって良いって言われたらね」


 夕方も7時過ぎ、駄菓子屋は、6時半には、閉めるのだが、閉店間際の店には、大きな子ども、駄菓子を懐かしむ会社帰りの大人達が、あれやこれやと大人買いをして行くので、閉店間際はいつもなんだかんだ、忙しい。一段落して店を閉めるのが、7時ぐらいになる。


「今日も、忙しかったわね」

「おばあぁちゃん、鈴おばあちゃん」


 ちっちゃな女の子が、閉めかけも店に入ってくる。


「おやま、誰かと思えば鈴乃じゃないかい。どうしたんだい?」

「うんとね、鈴ねぇ、おにぃちゃん迎えに来たの」


 琢美の迎えに来たのは、琢美の妹、幼稚園年長組さんの佐藤 鈴乃である。まだまだ、幼児といわれる年齢なのだが、妙に大人びているというか、世間を悟りきった感が強い女の子である。


「あらまあまあ、お母さんは?」

「お母さんは、鈴にね、おにぃちゃんが、帰りたくないって言うだろうからって、鈴に、おにぃちゃんを迎えに行って来てくれないっていってたの。だからね、だからね」


 琢美や鈴乃の住む集合住宅は、鈴子の駄菓子屋から、100mも離れていない。市内を流れる川を挟んで、反対側にある高層マンションである。


「あ、鈴乃・・・・」

「おにぃちゃん、鈴、迎えにきたんだよ。おうちに帰ろうよ」


 なんとく絶望的な表情の琢美である。


「琢美ちゃん、今日は、お帰りなさい。ばあちゃんが、二人とも、送っていくから」


 琢美は、なんだかんだといつも鈴乃の口では勝てない。なので、


「う、うん・・・・わかった。鈴ばあちゃん」

「また、いつでも、ここに来たらいいから」


 鈴子は、そう言うと、


「鈴乃ちゃん、ちょっと待ってね。お店を閉めたら、ばあちゃんが二人を送っていくから。それまで、これを食べてなさい」


 鈴子は、そういうと、金平糖が入った小さな袋を手に取ると、鈴乃に渡していた。


「わーい。鈴おばあちゃん、ありがとう!」


 袋を開けると、中からi色々な色の金平糖が、小さな手の上にこぼれでてきた。鈴乃は、それを見ると、目をキラキラさせながら


「お星さまが、いっぱーい」


 と、無邪気に喜んでいる。そんな妹を横目に、琢美は、ちゃぶ台に拡げていた教科書やら、問題集やら宿題をするために拡げていたものを鞄にしまい込んでいる。


 琢美が帰る準備ができた頃、おばあちゃんが、店の方から二人を呼ぶ声がする。


「さて、二人とも、準備ができたら、表に出てらっしゃい」

「「はーい!」」


 鈴乃は、勢いよく表に出てくると、おばちゃんの手を握る。いつもならば、真っ先に手を握るのは琢美であり、琢美のポジションでもあるのだが、鈴乃は、兄である琢美に少し意地悪をしたようである。なので、なんだか、少し拗ねている琢美、鈴乃は、


『おにぃちゃん、残念でした!』


と、幼児らしくないどや顔であった。孫二人のそんなやりとりを知ってか知らずか


「二人とも、喧嘩しないで、たくみちゃん、右手ね。鈴乃ちゃんは、左手ね」


 二人をなだめるように、そうというと、店の入り口、引き戸にカギを掛け、孫二人と手をつなぎ歩き出す。

 遠くから、電車の走り音が聞こえ、町の灯りが、夜空を照らし、2月半ば、オリオン座の一等星だけが見えている。その中でも、赤いベテルギウスだけが輝いて見えていた。


「ねぇねぇ、鈴ばあちゃん。あそこに見えるのは何?」

「どれどれ?あれは、なんだろうね」


 見上げるは、オリオン座、いつもはぼんやりと霧が掛かったように見える所が、妙にくっきりと、そして、何故か、蠢いているような感じで力強く輝いて見えた。


「ふむ・・・・あれは・・・・」


 見慣れた冬の夜空なのに、どこか、違和感のある夜空。


「なんだろね・・・ばあちゃんにも、わからないねぇ」

「鈴乃が、大きくなったら、おばあちゃんに、教えるね!」

「僕が教えるの!」

「たくみも、鈴乃も、喧嘩しないの。二人で、一緒に、ばあちゃん教えておくれ」

「「うん」」

「二人とも、いい子だね」


 川に架かる橋を渡り、息子夫婦の住むマンションが見えてくる。


「鈴おばあちゃん、ここからは、大丈夫だよ?おにぃちゃん、早く帰ろ?」


 鈴子に迷惑をかけられないと鈴乃が思うというあたり、年相応では無いのだが、お約束というかぐずるのは、琢美である。


「ばあちゃん、もうちょっとだけ!もうちょっとだけ!」


 夜とは言え、まだポツポツと通りを行き交う人も多く。


「おにぃちゃん、早くぅ!」


 鈴乃は、少し恥ずかしいようである。


 なんやかんやとマンションの前まで来ると


「二人とも、ここからは二人で行きなさい」


 鈴子なりに、孫達の母親に気を遣う。


「うん!」

「おうちまで、おうちまで!」


 まあ、おばあちゃん子の琢美には、そんな事はお構いなしであるが、嫌がる琢美を、鈴乃は、引き摺るように歩く。まあ、後は、マンションのエントランスにあるインターホンを押すだけなので、孫達二人でも大丈夫なのだが。


「たくみちゃん、鈴乃ちゃん、ばあちゃんは、おうちの片付けしないと行けないから、帰るわね」


 鈴子の言葉に、琢美も、観念したのか


「鈴ばあちゃん。明日も行くから!」


 鈴乃が呆れたような目で兄の琢美を見ているのだが、琢美は、気にしていないようである。


「はい、はい。二人とも、気を付けるんだよ」

「「うん!」」


 鈴子は、二人がエントランスの扉に入るまで見送っていた。琢美と鈴乃は、鈴子に手を振りながら中へと入っていく。そんな二人を姿が消えるまで、見送ると、鈴子は、来た道を戻る。ふと、先ほど妙に力強く輝いていたあたりを見上げる。


「おかしいわね・・・あそこは、確かオリオン大星雲があるあたりよね・・・ぼんやり波わかるかわからないかなのに・・・それがあんなはっきり見えるなんてことは無いはずよね・・・・」


 鈴子は、学生の頃、地元の大学で、天文学を学んでいたこともあり、星の事は非常に詳しく、今も、たまにではあるが、その類いのニュースを見ているのだが、それでも、今の状況を説明出来ないでいた。


『だれかがこの状況をネットに上げていないかね・・・』


と、手に持つスマホで最新情報を調べてみるのだが


「ないわね・・・・・何なのかしらね・・・気にしすぎたかしらね」


 疑問に思ったものの、歩いている内に店まで帰り着く。引き戸のカギを開けて中に入る。振り返り空を見上げると、いつもの見慣れたオリオン座。


「気のせい?」


 翌朝、鈴子が気がつくのだが、店頭に並べる商品を取り出しそうと商品を入れている倉庫に入り、商品箱を手に取ると、その奥に。小さな扉があった。


「ここに扉なんかあったかしら????」


 疑問に思いつつ、「後でいいか」と、倉庫を出るのだが、この後、このことを思い出すのは、仕入れた商品を置きに来るときであった。


日常でしょ?

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