自分勝手な自己嫌悪
今日、死にたくなった。
軽々しく、死にたいと言うのはいけない事らしい。
僕は、軽々しくなんかじゃない。
「嫌い」
これは、誰の声なんだろう。
他人の声だろうか。
大事な人の声だろうか。
それとも、
「分かった、分かった。要するに片思いの相手に素っ気なくされて、不貞腐れて、ナルシシズムたっぷりな文章書いてるって事だな」
肩をポンポンと叩かれて振り向くと、友人の憐憫な表情があった。
それが本当に自分を哀れんでいたから、頭にくる。
「うるせぇよ!ネットやゲームに沈んだ廃人には分かんないんだよ、このもどかしい気持ちは!」
「お前も沈めよぉ〜」
「やめろ、後ろから手を回して抱きつくな。
あと、これ他の奴に言ったら殺すからな」
「お前の思春期ポエム広めたって面白くねぇよ。
ていうか、ゲーセン行かね?」
「勝手に行ってろよ。俺はこれを書かないと、気が済まないの。取れもしないUFOキャッチャーに金突っ込んでろ」
シッシッと、手を振って追い返す。
そいつはヘラヘラしながら、教室を出て行った。
ふと、窓から校庭を覗く。
雨が降っていた。傘を差して下校する生徒を見下ろす。
「あ、俺傘持ってなかった……」
しまったと額に手を当てる。
あのバカと相合傘なんて凄く嫌だから別にいいのだが、制服をずぶ濡れにしたら、母さんに叱責をくらうのは明白だ。
「まぁ、いいや。書き終わった頃には、もう止んでるだろ」
楽観的な考えで心配を押し流して、またノートに目を移す。
………………………………
「あー、虚しっ」
カリカリと愚痴のような、惚気のような恥ずかしい言葉を並べる。一方的でストーカーの感じが凄いけど。
かれこれ二十分ぐらいでナルシシズムより、虚しさが勝ってしまった。
窓を見ても雨は止んでないし、今誰も教室に居ないし、怒られてもいいからダッシュで帰ろうとした。
「……あれ?どうしたの?」
俺の不貞腐れた原因が、いつもの可愛らしさで俺を見て首を傾げていた。
頭の中は、パニックだ。嬉しさと恐怖で。
でも、いちいち動揺していたらキリがない。
表情は穏やかに出来ているはずだ。
「ちょっと、忘れ物しちゃって……君は?部活、雨だからないはずでしょ?」
「私も忘れ物しちゃったんだ」
「そっか」
よし。なるべく素っ気なく答えれた。
机の中を探るフリをして、そそくさと帰ろうとした。
「それじゃあ、また明日」
「待って」
……マジですか。イベント発生ですか。
姉からパクった少女漫画にもそんなのあった気がする。読んだ時、「そんなのある訳ねぇじゃん。きもっ」ってバカにしてたけど。
期待したいけど、外れたら立ち直れなさそうだからやめて置く。
なんとなく、顔を彼女に向けずに聞いた。
「何?」
「これ、夢って気付いてる?」
……目が覚めた。
「……クソ。夢オチなんてクソすぎるだろ」
最低すぎる夢だった。寝起きは控えめに言って最悪だ。
「夢に出てくるほどウザったいならいっそ消えてくれ」という片思いをしている人間特有のゴミみたいな理由のストレスが溜まる。
好きだと思っているからこそ、嫌われることを何よりも恐れている。
でも、出来るだけ近くにいたい。
一度親しくなってしまえば、この負のスパイラルに身を投じることになる。
傷付かないためには、ずっと一人でいることだ。
そんなこと思っていると自分を慰めるためにぐっちゃぐっちゃで、意味不明な文章が頭の中で連なるもんだから自己嫌悪も深まる。
というか、これこそ負のスパイラルな気がする。
「俺、気持ち悪っ」
一人で自虐をかまして、一人で満足したところで窓を見る。彼女が友達らしき人と笑いながら、傘を差して帰っていた。
「……帰るか」
俺が帰ってしまえばこの教室は本当にがらんどうだ。
どうせ、明日にはいっぱいに埋まるんだろうけど。
頭がまた意味不明なワンダーランドにならないように、夢の時のようにそそくさと教室を出る。
ノートの続きはこう書くつもりだ。
「嫌い」
これは、誰の声なんだろう。
他人の声だろうか。
大事な人の声だろうか。
それとも、
自分自身の声だろうか。
「……こんなの書いてるとか、暇だな、俺」
雨の中走って、やっと気付いた。
相手を想っていると同時に、自分に酔っていることに。
ども、気怠げなシュレディンガーです。
完全に遊びました。
でも、真剣に考えて遊びました。
片思いしている方、いたらコメントお願いします。