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虚偽の現実  作者: NGM
3/3

第2話

友達が投稿を始めたのでそれを見て書かなきゃなと思い書きましたw

ごく一般的で平凡な人間とはどんなものだろうか。


テストの点数はいつも平均点近く。

身長は全国平均とさほど変わらない。

運動音痴と言われたことはない。

高校は近いという理由で入った偏差値50辺りをウロウロしているような場所。

毎日ちゃんと学校に通って、友達と談笑し、退屈な授業を受け、家に帰ったら家族と会話し、課題や自分がしたい事をする。


もしそんな人間がいたらこんな人は自分のことをごく一般的で平凡な人間と言うだろう。

まさに黒兎はそんな人間だった。

そして黒兎も聞けばそう答えるだろう。


しかし、黒兎は知ってている。

自分がごく一般的で平凡な人間ではないことを。





学校からの帰り道、黒兎は住宅街の真ん中を歩いていた。

黒兎が通っている学校は家から一番近いと言う理由で入学した学校なので家は歩いて15分くらいのところにある。なぜ一番近い以外の利点がない学校に入ったのか。

それは黒兎の体質に関係している。

つまりは朝に弱いのだ。毎朝幼馴染が起こしに来るまでは爆睡している。目覚まし時計などなっても気づくわけがない。だから近いところでないと確実に遅刻してしまうのだ。

まぁ藍美が中学三年の時に半泣きになりながら頼んできたという理由もあるが


学校で長いこと喋っていたのでだいぶ遅い時間になっている。

日はほとんど沈み、大きな月が出ていて、もう夜と言ってもいいかもしれない。

暗くなる空を見上げながら藍美を1人にしてよかったかなと思うが、その考えを否定する。彼女はおっとりした顔をして実は武術を習っている。もちろん武術など習ったことない素人の俺に比べ、強い。運動神経も彼女の方がいいので逃げるにしても俺がいたら足手まといになるくらいだろう。

……っえ?情けないって?言うな、悲しくなるだろ。現実逃避気味に空を見上げ呟く。


「今日は満月だな。」

『そうだね』


現実逃避をしている俺の独り言に答える人物がいた。

先程まで教室で喋っていた2人は、倉山は家の方向が違うため別れていて、藍美は金曜日はいつも一緒に帰っているのだが、今日は図書館に本を返し忘れたとかなんとかと言い出し、今はいない。

待つよ、と声をかけたが、迷惑になっちゃうから、と断られてしまった。


そんなわけであの2人ではない。

では誰だろうか。

黒兎は自分の右隣を見た。


そこには少女がいた。

その少女は、藍美とはまた違う可愛さを持っている少女だった。

身長は黒兎の肩くらいなので150cm弱だろう。

顔は全体的に幼く、身長と合わせてみることで小学生くらいに見える。

綺麗な茶髪は少し癖っ毛でもう少しで地面に着きそうなほどの長さがある。洗うのが大変そうな長さだ。


そして少女は『透けていた』

後ろにある普通の家の外壁がこちらから見えている。


「今日は珍しく学校で出てこなかったな」

『いや、出てたよ?お兄ちゃんは寝てたけどね。いや〜可愛かったな〜お兄ちゃんの寝顔』

「……」

『あれ?お兄ちゃん怒ってる?

……あっ!なるほどお兄ちゃんは一方的に寝顔を見られたから怒ったんだね!ゆいのかわいくてかわいくてそしてかわいい寝顔が見たかったんだね!も〜、しょうがないな〜そんなにゆいの寝顔が見たいなら言ってくれれば良かったのに〜、ゆいはお兄ちゃんの言うことならなんでも聞いてあげる可愛い妹なんだよ?そんな願いならお安い御用だよ!もちろんもっと先のお願いでもいいけど、そういうお願いはちゃんと前日までに声をかけてね!じゃないと心の準備ができないから!』


浮いて俺の周りをクルクル回りながら一方的にまくし立てる少女。

少女の名は小野瀬 ゆい。さっきからお兄ちゃんと呼んでいたからわかるとおもうが、俺の妹だ。

だが俺の妹は2年前に事故で死んでいる。

ではなぜここにいるのか。


透けている

浮いている

死んでいる


これでわからないひとはいないだろう。

そう、ゆいは幽霊なのだ。

そして俺には彼女が、いや、彼女たちが見える。


いまだって民家の屋根に座って笑っておしゃべりをしている老夫婦がいる。

道路を通っていて近くの家で飼われている犬に鳴かれてびっくりしてる中年のおっさんがいる。

家の外壁の上で伸びをしている猫がいる。

他にもたくさんの透けた生物がいる。


俺が最初に幽霊を見たのは2年前のゆいが事故に遭った時だったか。

現場に一緒にいた俺がゆいを揺すっていたら突然ゆいの中からアニメで見た幽体離脱みたいに透けているゆいが出てきたからびっくりしてしまった。

その時から俺は幽霊が見えるようになった。

もちろん父さんや母さんにも言ったがゆいの死で混乱しているんだろうと精神科に連れていかれた。


そんな訳で2年間俺は幽霊と関わりを持って過ごしてきた。

今ではこの近くの地域のほとんどの幽霊が顔見知りだ。

だから犬に鳴かれてびっくりしていた中年のおっさんがこちらに気づき近づいできたりもする。


『やぁ、黒兎くん、ゆいちゃんこんにちは。今日も仲がいいね。』

「こんにちは、おじさん」

『こんにちは!お兄ちゃん、聞いた?夫婦みたいだねだって!よかったね!』


どうやら俺の妹はとてつもなく重たい突発性難聴を発症したらしい。

……とりあえずデコピンをしておく。


『痛いよっ⁈どうしたの⁈もしかして妹をいじめて楽しむ性癖を持っていたの⁈そうなんだねお兄ちゃん!でもゆいはそんなお兄ちゃんでも受け入れるよ!私はお兄ちゃんのためならSでもMでも何にだってなるよ!だからほらもっとデコピンしてもいいんだよ!』

「お前はこれから喋るな、喋っても無視するからな」

『えぇ⁈なんで⁈』


幽霊といえば触れないのが基本だと思う人がいるかもしれない。そんなあなた、大正解です。普通の人は触るとかができない。ではなぜ黒兎は触れるのか。黒兎自身もわかっていないが、見えるのだから触れる、みたいな感じで無理やり納得している。見えても触らないものなんていっぱいなると思うのだが。煙とか光とか。


『ははは、黒兎くんも大変そうだね』

「はい、ほんとに迷惑してます」

『ねぇねぇお兄ちゃん、ゆい泣いていいよね?』

「では帰る途中なので」

『うん、またね』

『っえ⁈無視なの⁈ほんとに無視なの⁈まさかおじさんまで無視するなんて!』


とても想像力が豊かな(悪い意味で)妹を無視しておじさんと別れる。

そこからは完全に妹を意識からシャットアウトして黙って歩いた。

というよりも、ゆいと喋っていると独り言を言っている痛い子だと思われるのでできるだけ喋りたくない。

たまに幽霊とすれ違って挨拶をする。これは藍美と帰っている時にはしない。誰もいないのに挨拶するやつなんて藍美からというより一般的な人から見たらただの変人だしな。


「ただいま」

『たっだいまー』


家に入ってしっかりと挨拶をする。ゆいは聞こえないのにいつもしっかりしている妙なところで律儀な奴だ。


「お帰りなさぁーい」


廊下の奥から間延びした母さんの声が聞こえてくる。いい匂いが漂っているので晩御飯を作っているんだろう。

靴を脱ぐと、ゆいも靴を脱いでいた。浮けるのに。まぁ関係ないか。

俺は自分の部屋に入るために階段を登り自分の部屋のドアを開けた。

後ろからふわふわとゆいが付いてくる。

荷物を置いて上着を脱ぐ。

そしてベルトを緩めるのだが……


「……なぁいつまでいるの?」

『……っえ、ゆいにいってるの?いつまでってお兄ちゃんがこの部屋を出てくまでだけど?』

「俺は着替えようとしているよな?」

『うん、それがどうしたのお兄ちゃん?』

「いやいやいや、出てけよ!なんでいるんだよ⁈」

『大丈夫だよ、ゆいたちは兄妹だよ?そんなの気にしない気にしない。さぁさぁ私はいないものとしてもいいからすぐに着替えて!』

「……はぁ、しょうがないな」

『そうだよしょうがないんだよ、わかったらすぐにきがえ…っえ?どうしたのお兄ちゃん私の首根っこ掴んで、え…え?これはまさか無理やりベッドに連れていかれてあんなことやこんなことを……ねぇ、お兄ちゃんそっちはベッドじゃないよ窓だよ⁈窓なんか開けてどうするの⁈まさか可愛い妹を窓から締め出すなんてことしないよね⁈いくら幽霊でも壁をすり抜けたりはできないんだよ⁈うわぁーんやーめーてー』


ピシャリ カチャリ よし、戸締り完了。

外で浮いた妹が何か言っているように見えなくもないが、きっと疲れて幻覚が見えているのだろう、気にしないことにしよう。しっかりとカーテンを閉めて、私服に着替える。


ゆいが言ったように意外にも幽霊たちは明らかに自分の体よりも小さい隙間からどこかにはいったり壁をすり抜けたりなどはできない。つまり、物理的法則に従っている。まぁ俺みたいに見えてる人にしか触れないし、重力は無視できるらしいが。なぜなんだろうな?まぁ学者でもオカルトマニアでもない俺にはわからんが。


「黒兎くぅーん、ご飯よぉー」


さて母さんが呼んでるしご飯を食べに行こう。ご飯を食べたら、虚偽の現実(ファルスリアリティ)をする予定だし。机の近くにあるヘルメット型のゲーム機を見てふと思う。


「……これ、いつ買ったっけ?」

「黒兎くぅーん?まだー?」


まぁいいや後で考えよう。

俺は泣きべそをかいて窓にへばりついていた妹を地球の海の一番深いところよりも深い慈悲深さで中に入れてから食卓へと向かった。

マイペースに投稿します

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