問.『生きる』を簡潔に説明せよ。
答.ちょ、『生きる』て(笑)。何カッコ良く二重鉤括弧まで付けてるんすかw。
先生からの一言
この問題を作ったのは最近ボケが始まった校長先生です。
答.『生きる』とは我を見れば分かるだろう。我こそが全てで他は塵芥。説明など『我故に』で足りるわ。
先生からの一言
なら『我故に』で済ませてください。
答.『生きる』is『live』です!
先生からの一言
それは説明ではなく直訳です。
答.あのさぁ『生きる』とかクソどうでもいいんだよねというかさぁそんなこと考えるのは思想の自由だからいいにしてもこういう場でこの問題はどうかと思うんだよねだったらちゃんときちんとした問題提起をすべきだと思うんだねぇそう思わない採点者さん?
先生からの一言
簡潔に書いてくださいそして敬語使え。
答.わ、我思う故に我あり!
先生からの一言
一生懸命考えたという必死さが伝わって先生嬉しいです。
答.これ、模範解答あるんですよね?
先生からの一言
………。
答.『生きる』と自覚した時から我々は生きている。『生きる』と無自覚になった時から我々は死んでいる。
先生からの一言
オブラートに包みましたね。
答.『生きる』っていうのは、生々しいの『生』に、かきくけこの『き』に、らりるれろの『る』ですよ!
先生からの一言
先生はこういう答えが出ると期待してました。
答.ああ俺、不死のアンデッドなのでちょっと『生きる』っていうこと分からないですわ。すみませんね本当に。
先生からの一言
今すぐ精神科病院へ行ってください。
答.知らない。
先生からの一言
先生も知りません。
答.我が生と死を司る神故に『生きる』という現象の定義は我が自在に転換してるが故にこの問い自体に意味が無いが故に我は答えぬという答えを表明する。
先生からの一言
『故に』を多用し過ぎです、あと、あなたは神じゃありません人間です。
答.生物として活動できる状態にある。
先生からの一言
…それ、辞書ですよね。
先生は用紙を返却した。すると当然生徒たちは騒ぎ始め、そして発する言葉が一つに絞られていく。
即ち、
『先生これの模範解答教えてくださ〜い!』
ということだ。
先生は昨日採点中に一生懸命模範解答を考えた結果、ある答えを導き出した。
故に今この場面で冷静に対処することができたのだ。
先生はチョークを持ち、教師人生最速のスピードで一気に黒板に文字を書き出していく。
カカカカカカカッ!
そして素早くチョークを置き、先生は出口の扉へと早歩き。
生徒たちのざわめきは大きくなる。その中には「投げやりだー!」「ちゃんと答えろー!」「私の努力返して!」などと文句が聞こえてくる。
「では、自習!」
先生はガララッ、バンッと教室から逃げ出した。
教室から凄まじい怒りの熱気が伝わってくる。
「………」
先生はそっとハンカチで冷や汗を拭い、コソコソと急ぎ足で職員室へと向かう。
黒板には、一言。
『答えはいつも、己の中に!』
と、大きく殴り書きされていたのだった……
少しでも楽しんで頂けたのなら嬉しいです! 短かったですが最後まで読んでくださりありがとうございました!