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無垢な頃  作者: 鮎沢琴美
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序章


初!

連載作品です!

とりあえず完結させることが目標です!

評価・感想もぜひお願いします!


 桜はもうすべて散り終えて、青々とした葉がいっせいに茂りだす。僕はこの時期の桜が好きだ。そう、青春の色に見えるからだ。大人になってからはそんなこと思わないかもしれない。でも教室の窓からみえるその勇敢ともいえる青葉の桜の立派な姿には圧倒されるのだ。僕がこうもこの姿に憧れるのは、僕の青春の理想が叶っていないからかもしれない。この高校に入学してからはずっと退屈だった。毎日同じ時間授業を受け、友達と他愛のない話をし、部活動に参加していない僕はそのまま帰る。友達に何度も部活に入るよう薦められたが、集団に属するのが基本的に苦手で面倒に感じる僕はその誘いに乗らなかった。青春を謳歌したいなら部活というのはわかっている。わかっているけど面倒なのはいやだ。そんな自分勝手な論理を展開しながら毎日をこなしている。青春といえば部活以外にあるじゃないか。そうだよ、いちいち言わなくてもわかるだろう。そうだよ、漫画とかドラマの世界でよくあるやつだ。

 そうだよ、そうだけど。

 でも僕にはルックスが足りていないし、テクニックも足りていないし、努力すれば報われる的なものは存在していない。僕がその証明だ。告白しては振られ、また告白してはまた振られ。断られる理由はいつも決まっている。「そういう対象にはならない」その一言だけ。今にも顔がムンクの叫びになりそうだ。

 「なんかいいことないかな」

 それが最近の口癖になりつつある。窓の外には手をつなぐ恋人達が何組も見えるというのに。窓から教壇のほうに目線を移すとまだ担任の先生が話を続けている。早く終わってくれ。始業式の日にこのクラスの中に自分の名前を見つけ、ほぼ同時にクラス担任がこの先生だとわかった瞬間テンションは急落した。とにかく話が長い。他のクラスが掃除を始めていても、掃除が終わり、生徒達が部活に行ったとしても、話が続いていることがある。毎日毎日いったいどこからそんなに話を仕入れてくるんだ。その努力は一刻も早くやめてもらいたい。

 「よし、じゃあ今日はこの辺で終わろうか」

 教室の時計を見、話し終えた満足感でいっぱいの担任の顔で僕の長い高校での一日が終わる。みんなが立ち上がり先生に礼をし、掃除当番以外はいっせいに教室の外へ出る。そして僕も出口から一番遠い席からみんなに続く。その出口まで行くほんの数メートルの間に必ず友達が声をかけてくる。中学からの親友、鈴木優だ。

 「途中まで行こうぜ」

 部活によりおそらく青春を謳歌しているであろう優と学校の門を出るまで歩くのが、毎日の日課になりつつある。

 「帰ってもヒマだろ?部活入れよ」

 「入らないよ、前から言ってるだろ」

 「集団が苦手とか何とか言ってお前もしかしてコレがいるんじゃないか?」

 僕は優の立てている小指を手で制して

 「いるわけないだろ、あ〜早く欲しいな〜」

 「まあまあ、そう焦るなって。そうだ、バイトとかどうだ?」

 「バイトかあ、バイトねえ」

 「集団は集団だけど金が入るじゃん、そして俺になんかおごってくれ」

 「そんなことだろうと思ったよ、仮にバイトしたとしても何もおごらないよ」

 「なんだよ、ケチだな」


 「なにがバイトだ」


 その声に僕と優はビクッとした。生徒指導の先生だ。アルバイトって校則違反だっけ?

 「いえ、何でもありません・・・・・・じゃあ俺はこっちだから、バイバーイ」

 優がすごいスピードで駆けていく、そういえば彼は陸上部だった。

 「さ、さようなら」

 置いていかれた僕はすぐさま門を出た。少し走っただけで息切れがひどい。まだ高校生なのに情けない。何か運動しないとまずいな。そう考えるのも門から駅までの道のりですべて忘れてしまう。いつもそうだ、いろいろ考えてみるものの、それを実行せずに退屈な日常にすぐ戻るのが僕の悪いところだ。

 わかっている。

 そしてまた「何かいいことないかな」と帰宅ラッシュの中、車窓を見ながら思うのだ。ドラマのように何かのきっかけで何かが始まるみたいなことを想像してため息をつくのだ。

 僕の降りる駅が近づいてきて、かなり人も減ってきた。日によってはシートに座ることも可能になるが、今日は無理なようだ。仕方なく見慣れた景色を眺め続けるのだ。そして降りる駅に着くと学校帰りの自分とは別の学生服を来た高校生カップルとドアで行き違いになる。この二人にとっては、今まさに沈もうとしている夕日はロマンチックなのかもしれない、しかし、僕はこの夕日から寂しさしか感じられないのである。

 「なんかいいことないかな」

 心の中でまた言ってしまった。ここから15分くらい歩いて我が家につけば、またいつもと変わらないときが過ぎ、そしてまた明日いつもと変わらない朝を迎えるのだ。


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