メイリーフの脱走劇
本編中でさらっと流されている、メイリーフがテロリストのもとを自力脱出したときのお話。長めです。
荒野の中、くぼんだその地形に隠れるように日干し煉瓦の建物があった。
今は、月光に照らされ静まり返っている。
哨戒の〈兵士〉は、変化のない光景にあくびをかみ殺す。次の瞬間、彼は後頭部に衝撃を受けて、どさりと地に伏した。
〈兵士〉を背後から襲撃したそれは、手早く武器を取り上げ、服を脱がせていく。
「くっさ!汗臭っ!何これマジ勘弁!」
悪態をつきながらも、襲撃者――メイリーフははぎ取った揃いの上下を身に着ける。〈兵士〉との体格差のせいで、袖や裾を何度も折り返すことに時間を取られつつも着替えと武装を完了した。
動かなくなった〈兵士〉の首筋に手を立てて、まだ生きていることを確認すると、物陰に引き込む。
「殺すのも面倒だから生かしといてやるよ。人質逃がした罰の名目でリンチされて死ぬ方が、〈兵士〉らしい死に方でしょ?」
そんな言葉を残して、メイリーフはその場を後にした。
道なき乾ききった荒野を、無骨な車が走っていた。悪路に耐え、たとえ故障しても自力修理が可能というのが売りで、隣町まで車で二日というのも珍しくないこの国では重宝されている。
「製造五年前ぇ?冗談、くそ骨董じゃん、ほんと嫌んなる!」
運転席で悪態をつく小柄な人影の正体は、メイリーフである。
運転支援システム、自動運転機能などが当たり前の時代に、すべてマニュアル操作というこの車は、確かに骨董扱いされても仕方がない。
「食料もない、武器もそのほか備品も積んでない。ばっかじゃないの。ほんと甘っちょろい組織だとは思ってたけど、甘すぎるっつの」
埃避けに口を布で覆っているが、乾いたこの地で口を開けば、当然異物の侵入を許し、メイリーフはせき込んだ。わかっていても、悪態をつくことをやめられない。
「くそ暑いし。サングラス欲しいし。帽子欲しいし。ていうかおなか減ったし!」
ちらりと太陽の高さを見て、進んでいる方向を確かめる。
この荒野には目印がない。車の構造は単純で、位置特定の機能などがない。頭に叩き込んだ地図と、方向感覚だけが頼りだった。
やがて日の傾きも大きくなってきたころ、メイリーフの目は街の姿をとらえた。
イジェ国、地方都市エスラナ。
メイリーフは車のアクセルを踏み込んだ。
暗くなってから、ようやく街までついた。
昔ながらの、壁に囲まれた荒野と同じ色をした建物の群れ。
紛争地域からも近いが、街は活気に満ちていた。
メイリーフは脱出の際〈兵士〉から奪い取った服を脱いだ。申し訳程度に髪を手櫛で撫でつけて見た目を整えると街に入っていく。
「まずは金。それから服、食い物、交通手段」
丸い輪郭と丸い目で幼く見られがちなその顔が、真剣みを帯びる。
メイリーフが最初にやったことは、もっともにぎわう通りの雑踏に紛れ込むことだった。隙なく周囲に目を配り、やがて雑踏を抜け出た時にはその手に財布持っていた。
「ああ・・・貧乏人だったな」
少なくない罪悪感を覚えた。
財布の中には当面の逃亡生活には心許ない金額が入っている。この時間帯を過ぎれば人通りも少なくなると思ったメイリーフは、さらにしばらく雑踏を歩いた。
最終的に四つの財布を掏ったメイリーフは中身だけ抜き、財布をばらばらに捨てた。
金が手に入ったら服だ。
店じまいしかけていた布屋に飛び込む。
「着ていくから、全部揃えて!」
閉店間際だったため不機嫌そうな女店主の前に相場より多めの金をまとめて出せば、一気に機嫌が良くなった。
「あんた、小さいねぇ。こども用にする?」
「普通のでお願い。ちょっと折ればいいんだから。それと巻布も頂戴。頭が目立って仕方ないから」
「苛められるかい?あんたくらいの年代だったら、珍しくないだろ?」
メイリーフの髪は亜麻色だ。歴史的にこの地域には黒い髪の人間が多いが、国際化が激しい近年では取り立てて目立つと言うほどではない。
「外国人扱いが嫌!ぼったくりの客引きがうざい!」
「まあ、毛色が違うと外国人って可能性が高いからねぇ」
頭に布を巻くのもこのあたりの文化であり、観光客が多いここでは巻かない人々もちらほらと見られる。
「あんた、言葉は上手いけどどこから来たんだい。それに服一式だなんて、どうしたね」
「旅行。で、ちょっと前に荷物全部盗られたの。着替えも端末もカードも全部!ほんと信じらんない!――ああ、出身はアーロウだよ。ごめんね、言葉汚いでしょ」
イジェ国とアーロウ国は同じ言語を使っているが、それぞれに癖がある。特にメイリーフが使うのはアーロウ首都の下町言葉で、同じ語圏で最も汚いと定評があるのだ。
「汚いとも思わないが・・・しかし、そりゃ災難だったね」
「アーロウで荷物盗られたことなんてなかったのに!エスラナの方が治安いいなぁって油断してたせいかな。もう・・・ほんと災難だよ」
適当に話を作って店主の同情を買い、いろいろとおまけしてもらった。
すっかり風景に溶け込み、地元民のようになったメイリーフは露店で腹ごしらえをした。
「臭くない飯!久しぶり!」
羊肉のミンチを野菜と炒めを、無発酵の薄いパンにはさんで食べるファストフードだ。
別の露店の一件で、交渉して乾燥ナツメヤシを譲ってもらう。これは日持ちがするので重宝する。さらに店を回って、水筒と水を買った。
次にメイリーフが向かったのは、バスの発着場だった。ごちゃごちゃしてわかりにくい乗り場を回り、目的地を示す乗り合いバスを探し出した。
今にも出発しようとしていたところを引き留めて、無理やり乗り込む。
行先は、近隣の小さな町だった。
着いた頃には真夜中を過ぎていたが、町で唯一の宿に押しかけて一部屋確保して眠った。
次の日、朝日と共に起きだして、再びバス乗り場へと行く。
今度はこの周囲では一番大きな街である、テテラ行に乗った。
テテラ市は、イジェの第二の都市だ。そのため、乗客は多く、バスの床にまで人が座っている状態だった。この状態で、四時間。
途中乾燥ナツメヤシを齧りながら、どうにか昼前にテテラ市に辿り着いた。
バスから降りて、がちがちに固まった体を軽く解す。
「さってと!一仕事!」
テテラ市は、エスラナに比べて歩く人々の人種も恰好も様々だった。人も多く、雑踏を歩けば人にぶつかる。
メイリーフはエスラナでやったよりもはるかに容易く、他人の懐の中身を拝借することに成功した。
今度手にしたのは、携帯用端末だ。
それほど混んでいない広場に出ると、携帯端末を立ち上げた。
持ち主ではないメイリーフの指紋や声紋に、携帯端末は警告画面を表示してきた。普通、登録者以外は触れないようにできているのだ。しかしメイリーフは動じない。
「緊急回線」
警告画面がぱっと切り替わり、警察か消防のどちらかを選択するよう求めてくる。
こういった緊急時の連絡は誰にでもできるように設定されているのだ。
「航空宇宙開発研究所VOHS356247_malt-s11メイリーフ、所属コードを省略。カダロイ基地対外対策室に接続」
そばを通りかかった人間が聞いていたとしても、仕事の話かと聞き流すような固い単語の羅列。
端末はそれを正確に聞き取り、メイリーフの望む答えを出した。
すなわち。
『――一般端末からの接続を確認しました。こちらカダロイ基地。所属コードと名前を明らかにしてください』
堅苦しい喋り方の女が応えた。
「所属はない。名前はメイリーフ」
『所属が・・・』
「問答してる暇はない。緊急事態だ。マルティバースのラボ・チャイルドと言ってわかる人間にすぐ代われ」
『しかし』
「くそめんどくせぇっ、VOHS356247_malt-s11メイリーフ!今ので声紋照合もできたでしょ?!コンピューターは何と言ってる?許可してるから、今あんたと会話で来てんだよ!今すぐ室内で声張り上げてマルティのラボ・チャイルドから連絡だと言え!」
『え?え・・・し、しつちょう・・・!』
戸惑いながらもメイリーフの指示に従う女性の声がする。
彼女が助けを求めたのは室長――つまり、対外対策室のトップだ。カダロイ基地の対外対策室の室長は誰だっただろうかとメイリーフが考えていると、男の声がした。
『こちらカダロイ基地対外対策室、室長のダリオ・ブタインだ』
「残念、知らない人だ」
『俺は話だけしか聞いていないが、よく知っているよ、マルティバースのラボ・チャイルド。何事だ』
「端的に言う。テロ組織〈創世の蒼〉に拉致されて、アジトをどうにか脱出してきた。保護を願う」
『なんだと?!』
「現在地はわかってると思うけど、テテラだ。敵もこっちの行動を読んでいるはずだから下手に身動きが取れない。支援と、指示を頼む」
『今は、安全なのか?』
「さあね。一応、方向の違う街を二つほど経由して誤魔化そうとはしたけど。できればもうしばらくほとぼり冷ましたかったけど、事情が事情だから仕方がない。協定地域までわざわざ出向いてやったんだから、さっさとガーディアン寄越せ」
『わ、わかった』
「この端末は間もなく放棄する。一時間後に別の端末から連絡するから、その時はスムーズに話が通るようにしておいて」
『いや、待て。その端末はどうしたんだ』
「無断拝借だよ」
『こちらから個人登録を解除して、君でも使えるようにする。しばらくそれを持っていろ』
「却下。敵さんも、うちがそちらと連絡取るために端末を盗むってことくらい読める。つまり通信会社の紛失情報を監視している恐れがある。持ち主に害が及ぶ前に放棄するよ」
『しかし!』
「予定時刻の十分を過ぎても連絡がなかった場合、敵に捕まった想定して動いて。奪還なんか考えず、敵と一緒に撃ち殺してくれていいから。じゃあね」
メイリーフは一方的に通信を切った。
ふう、と一つ息をつき、周囲をさりげなく見渡した。見張られている気配はない。
端末を物陰に置き去りにして、メイリーフは歩き出した。
途中でジェラートの露店を見つけたので一つ買う。日差しのきついこのあたりでは好んで食べられるおやつだ。まさか逃亡中にこんな呑気なことをしているとは、相手も思わないだろう。そういった思惑も多少ある。
メイリーフが保護を求めた先――システム研究所は、世界各国に基地を持つ。そしてシステムの維持と保全のために軍隊にも似た「特殊警備隊」という戦力を保持しているのだが、これは動ける範囲が厳密に決められていた。
ここイジェ国の場合は、カダロイ基地とそれに隣接するテテラ市だ。少なくともテテラ市に入らなければ、メイリーフは保護してもらえないという意味である。この、研究所が特殊警備隊を動かしてもいい地域を、協定地域と呼ぶ。
それは、メイリーフを拉致していた敵にとっても明らかなことだった。メイリーフを再び捕まえようと思えば、テテラで網を張っていればいい。さらにメイリーフを確保後、テテラを出てしまえば研究所は手出しできない。
カダロイ基地からテテラ市街は車で約三十分かかる。
基地内部で連絡に手間取っても、一時間あれば充分メイリーフ保護のための人材が駆けつけるだろう。そして、例え先ほどの端末の紛失情報から敵がメイリーフを特定しても、この大都市の中でなら逃げ切れる可能性は大きい。
逃亡から丸二日。さすがに疲れが出始めていた。しかしメイリーフはどこかに身をひそめようとは思わない。自分が敵ならば、身をひそめられそうな場所をくまなく見張ると考えるからだ。
それに対して、大勢の人が行き交う場所で特定の人間を探し出すのは慣れていても難しい。
「端末を確認される建物はアウト。つか、現金しかないし。あー、やだやだ。なんか食べよ」
世の中、カードや端末での支払いが一般的になっているが、さすがに露店では現金でのやりとりが主である。
日干し煉瓦の建物が建ち並ぶエスラナ市と違って、テテラは超高層ビルが立ち並ぶ大都市だ。公共の建物は、出入りする人間をすべてチェックしている。このチェック機能は、個人が持つ端末と、建物の出入り口に設置された機械とのやりとりである。生体認証と併用の場所も多く、他人の端末を持っていては出入りできない。端末を持たずに入るならば身分証の提示を要求されるが、メイリーフは現在身一つである。人の出入りが多くて警備員も常駐するショッピングモールは逃げ場としては最適なのだが、断念するしかない。
だが一方で、そのチェック体制は大きな建物に限られていた。テテラ市ほどの規模で、公共交通機関を身分証なしに利用できる都市は他にない。
その分治安は悪いのだが、あまりに厳しくするとここでは弊害が出てくる。
というのも、紛争地域が近いのだ。外国籍の傭兵から、紛争の影響で食えなくなってホームレスになった者まで、様々な人間がここで暮らしている。
清濁も善悪も貧富も、混じり合った街がテテラなのだ。
メイリーフは、テテラのそういう懐の深さが好きだった。
香辛料のきいたスープと短く平たい麺を合わせた料理を売る屋台を見つけたので買ってみる。
露店というのも、近代的な大都市には普通は存在しない。街の景観を壊す、衛生管理上問題がある、などなど理由を挙げて禁止するところが多いのだ。
テロ組織に拘束されている間、ろくなものを食べていない。その後も屋台の簡単な料理か、ナツメヤシを齧るかだったので、うまい飯に飢えている。
「セイファのごはん食べたいなぁ」
料理上手な幼馴染を思い出す。
このままうまく研究所に保護されれば会うこともできるだろう。その時は、自分の好きなものを作らせてやろうとメイリーフは心に決める。
スープを飲み干して食器を店に返すと、メイリーフはまた歩き始めた。
体格のいい、いかにも戦闘職の男性の姿を見つけてぎょっとする。――軍服だから、紛争地域に派遣されている軍人だろう。
テロリストたちも戦闘職といえばそうなので、ああいう体格のいい人間が多い。どうしても過敏に反応してしまう。
〈創世の蒼〉は、もともとこの地域の紛争がもとで生まれた組織だ。
隣国との国境線問題を抱えるイジェでは男子の兵役が義務化されている。共通の敵があるため国民は団結力があって、愛国心にあふれる若者も多い。
そんな中で、〈平面世界〉を維持しているシステム研究所としては戦争なんてものに体力を使ってほしくない。そんなものに金と労力をつぎ込むのならば研究所に協力しろ、基地も近いのに暴れられては迷惑だ、と主張する。
そうして時折介入し、双方が主張する国境の、ちょうど真ん中に線を引いてはどうかと提案するのだ。
愛国心にあふれる国民は、自分たちの主張が正しいと強固に信じているので、この介入が気に食わない。そもそもイジェの土地に基地を作り、軍隊とも遜色ない特殊警備隊をテテラに出入りさせている。これこそ侵略ではないか。
こうして、システム研究所をイジェの地から追い出そうと若者が集まってできたのが〈創世の蒼〉だ。やがて研究所が管理維持しているシールド・システムそのものを壊そうという活動に変わり、立派なテロ組織となった。研究所を惰性で受け入れている一般国民さえも敵視しているから本当に立派だ。
懐が深いテテラはそんなテロリストさえも受け入れる。
人ごみに紛れるというのは、メイリーフが思いつく限りもっとも勝率の高い選択だが、賭けでもある。
出来るだけ人の多いところを渡り歩き、時にはバスにも乗った。
四十五分経過したところで、再び人の多い道を歩いた。携帯端末を掏るためだ。
テテラの治安の悪さをいまいちわかっていなさそうな人間を狙う。地元民は簡単には掏らせてくれない。
何かに気を取られたふりをしてカモにわざとぶつかり、咄嗟を装ってその肩をつかむ。
「すみません・・・っ」
顔を赤くして慌てて頭を下げると、「いや、こちらこそ」と言葉が返って来た。忙しげなビジネスマン風の男で、気にした様子なく早足で去っていった。
「お借りしますよっと」
罪悪感がないわけではないのだが、メイリーフは割り切れる人間だった。隙間がないほどの人ごみを抜けた先で時間を確認すると、予告した時間の五分前だった。もういいだろうと思い、歩きながら緊急回線を使って同じようにカダロイ基地と連絡を取る。
『無事だったか!』
先ほども応対したダリオ室長がほっとした様子で言う。面識のない赤の他人をここまで心配できるその人間性に、メイリーフはひそかに驚いた。
「一応ね。ガーディアンは?」
『すでに到着している。君は・・・わかった、現在地を確認した』
携帯端末の位置情報を拾ったのだろう。
「どうすればいい?」
『ガーディアンは少し離れた場所にいる。街の地理は把握しているのか?』
「おおよそ。細かいことを言われてもわからないな」
『わかった。そのあたりで待っていてくれ。特殊警備隊の側に君の位置情報を送って迎えに行かせる』
「ちなみにうちが知ってるガーディアンはいる?」
『ユース・アンノとリック・シュタインはわかるな?』
「わかるわかる。ここへの到着予定時刻は?」
『五分後だ』
「オーケィ。でも端末は放棄する。今の場所から半径二十メートル以内にいるから、探して。端末が移動を始めたら、それはうちじゃない」
『・・・わかった』
用心しすぎだろうと言いたそうだったが、ダリオは了承した。
携帯端末はなければ困る。これの持ち主はビジネスマンのようだったから、すでにないことに気づいているだろう。
そして多くの人間が、携帯端末を複数台持ち歩く。補助端末のほうからメイン端末を探す機能も当然あって、本人が取りに来る可能性がある。事情を説明するわけにもいかないから、放棄せざるを得ない。
同時に、紛失情報が通信会社に届き、リストに載る。持ち主以外が使えば、声紋などの情報を取られてデータベースで照会し、犯罪者ではないかどうかが判定される。
たとえばテロ組織がこの通信会社の情報を盗み見ることができるならば、メイリーフがこの場所で他人の端末を使っていることがばれるのだ。
端末を置いて、十メートルほど離れた。
端末の周囲を窺っていると、間もなく、ぶつかったビジネスマンが現れた。補助端末の画面を見ながらきょろきょろし、やがて盗まれた端末を見つけると慌てて手に取った。
あと少し遅かったら見つかっていたところだ。心の中で、そっと詫びる。
周囲を見回すが、まだ特殊警備隊の姿は見えない。おそらくは平服で来るだろうから、記憶に残る顔が頼りである。
その時、雑踏の向こう側にひどく目立つ人を見つけた。背が周囲の人間より頭一つ分高くて、スキンヘッドだ。一般的な若者の服装だったが、足元は軍用ブーツ。――そんな男が、メイリーフを見ていた。
嫌な予感が、背筋を一気に這い上がって来た。
(テロリスト!)
捕まっていたあのアジトで見た顔だった。あれほど目立つ人間だ。ちらりとすれ違った程度でもしっかりと覚えている。
メイリーフはごく自然に視線を逸らし、背後の店の中にある時計で時間を確認した。
合流予定まであと三分。
微妙な時間だ。
遠くまで動いてしまったら、特殊警備隊と合流できない。
(紛失情報から確認された?いや違う。たとえそうだったとしても、今のタイミングでこの場にいるのは偶然だ。あいつ一人の可能性もある。目が合ったように見えたけど、相手が気づいたと決まったわけでもない)
相手が一人ならばその目をごまかして三分間をやり過ごせるだろう。
メイリーフは持ち前の小さな体を生かして、他人の影に隠れるようにして少し移動する。
だがスキンヘッドの目は相手からは見えないはずの位置にいるメイリーフの方角をちゃんととらえていた。
(落ち着け。この街中で、相手だって出来ることは限られてる)
メイリーフは腰を探った。この地方の服は、布を何枚か重ねたスカートのような作りで、内側の布にはポケットがついている。中に手を突っ込み、固い感触を指に引っ掛ける。
震える息をごまかすために、深呼吸した。
あと二分。
前から来た若者を避けようと体を少し逸らした。
(え?)
違和感に気づいた時にはもう遅い。
すれ違うと思っていた若者が、メイリーフの腕をつかんでいた。
(くっそ!やられた!)
平均的な体格で、かっちりした服を着ている彼は、ぱっと見で戦闘職と判断できる要素がなかったのだ。
腰に銃であろう、固いものを押し付けられる。
「このまま歩き続けろ。仲間と合流する」
低い声で命令された。
「妙なことをしたら、命はないぞ」
「あーもう・・・なんでこの場所にいるんだよ・・・」
「神のおぼしめしだろう」
「偶然か。くそが!」
悪態をつきながらも、メイリーフは指示に従った。
「逃げ出すとはいい度胸だ。覚悟しておけ」
「はいはい、覚悟ね」
いらいらと頭を掻きむしった。そのせいで頭の巻布が乱れる。片手を取られたまま直すこともできないので、取り払う。
あと一分。
メイリーフはさりげなく相手が持つ武器を確認した。どうやら懐かどこかにしまったらしく、今はメイリーフの腕を拘束しているだけだった。
甘いテロリストだ。ほくそ笑むほどの余裕はないが、相手がメイリーフのことを侮ったなら幸運である。
周囲を窺うと、最初に確認したスキンヘッドが左方向から、もう一人体格のいいサングラスの男が正面から、こちらに向かって来ていた。
歩幅で数えて、二十メートルを超えようとした直前、メイリーフは隣を歩く男の脇腹を肘で打った。
腕が自由になって間髪入れず、ポケットの中の銃を抜いて容赦なく引き金を引いた。
ぱんっ、という軽い銃声は、それほど人の興味を引かなかった。悲鳴を上げて倒れる男にも多少の注目は集まるが、治安のよろしくない街特有の無関心が、見事に働く。
非致死性のこの銃は、スタンガンの一種であり、電気が流れている間だけ相手の動きを封じる。
――テロ組織のアジトを抜け出す際にぶんどって来た武器の一つだ。殺傷性の高い銃もあったが、衝撃が強すぎてメイリーフの手では扱いきれないので、これを選んだ。
早くも弾切れの銃を捨てて、メイリーフは来た道を走って戻る。
「メイリーフ!」
周囲の雑音を押しのけて聞こえて来た怒号に、メイリーフは足を止めて、声の聞こえた右の方を見る。
「――リック!」
記憶にあるものよりも大人びた男の顔がある。リックが走ってくるが、それよりもテロリストとの距離が近い。武器はもうない。
メイリーフは覚悟を決め、軽く腰を落として迎え撃つ体勢を整えた。――狙われる身であることは重々承知していた。だから、多少の戦闘訓練は受けている。
正面から来たサングラスの男の手がメイリーフへと伸び、メイリーフはそれを避けようとした時だった。
「メイ!」
突然背後から腕を引っ張られる。そのままメイリーフは後ろに倒れた。
予期せぬ衝撃に受け身を取り切れず、メイリーフは腰と肘を打った。
「いってぇな!くそ!」
罵りながら半身を起すと、目の前ではテロリストが茶髪の男に襲い掛かっているところだった。茶髪の男にも見覚えがある。特殊警備隊隊員、ユース・アンノだ。
ユースはメイリーフを庇ったせいか体勢が整わず、テロリストのこぶしを顔で受け止めた。
ユースがふらついた隙に、サングラスの男はナイフを取り出した。そのままユースへと、刃が振り下ろされる。
「ユース!」
メイリーフはとっさに動けない。
ユースは辛うじて一撃を避けたが、次を避けられる体勢ではない。
そこへ、追いついたリックが男に跳び蹴りを食らわせた。軍隊式の訓練を受けたはずなのに、この男は喧嘩の動きが抜けていない。こんな時だと言うのに、そんなしょうもないことにメイリーフは気づく。
「っだあ!てめ、物騒なもん振り回してんじゃねーぞ!」
汚いイジェ語で罵りながら、リックはテロリストの手を踏みつけてナイフを蹴とばした。ついでにサングラスも吹っ飛んでいた。
「リック!後ろ!」
もう一人のテロリスト――スキンヘッドの男が銃を構えていた。
すぐに調子に乗って油断するからいけないのだ。悪態をつく間もなく、白昼に銃声が響き渡った。
銃型スタンガンとは違って、その鋭い音は周囲の人々の足を止めた。
リックが倒れ、あちこちで悲鳴が上がる。
「くそ!」
メイリーフは歯を噛む。
テロリストの銃口は、今度はユースへと向かった。
だがさっきの間にユースは体勢を立て直している。
ユースは腰から細い何かを抜き取ると、銃を構えるテロリストへ投擲した。今にも引き金を引きそうだったテロリストの手が突然弛緩し、銃が落下する。銃が地面に触れるより先に、ユースは低い体勢からテロリストを襲う。ただ単にぶつかったように見えたが、テロリストの巨体は地面に伏した。
ユースの手には黒い金属光沢のある物体が握られており、何らかの武器であることを予想させた。
息つく暇もなく、再び銃声が響いた。――撃ったのは、メイリーフを最初に捕まえた若い男だ。電気ショックから立ち直ったらしい。
銃声は注目を得るためのものだったようで、誰も倒れていない。
「次から次へとよく湧く。ゴキブリか、てめぇら!」
「るせぇ!武器を捨てろ」
「馬鹿だな、さっさと逃げりゃいいもんを。仲間想いなとこは個人的に褒めてやりたいけどな」
ユースが気だるげに言う。
確かにこの若いテロリストは、そのまま逃げていれば見逃されていたはずだ。例えこの場を切り抜けても、顔がばれてしまえば今度はイジェ国軍に追われることになる。
ユースは素直に手に持っていた武器を投げ捨てて、両手を上げた。歩くハイテク兵器とまで呼ばれる特殊警備隊だから、とても武装解除したとは言えないが。
「ぶっ倒れたお仲間を背負って連れてくかい?言っとくが、こいつら当分おねんねだぞ?」
「るせぇよ!」
「やめておけ、あんたは手詰まりだ」
「だまれ!」
「もう一つ教えてやる。あんた余裕が足りてねぇ。余裕がないとモテねーぞ」
ユースの視線が、銃を構えるテロリストの背後へと移る。
メイリーフにも見えていた。テロリストの背後に立つ、すらりとした女性の姿が。
ユースの視線の動きから察したらしく、テロリストは慌てて振り返ろうとするが、間に合わず呻いてその場に崩れ落ちた。
「余裕がない男性って、場合によっては可愛いからいいのよ?」
場にそぐわない、ふんわりとした柔らかい声だった。
もちろん彼女も特殊警備隊だろう。彼女はメイリーフの背後にいたはずだが、野次馬に紛れてテロリストの背後へと回ったのだ。
「助かった。ありがとな」
「どーいたしまして。――シュタイン、あなたも平気?」
地べたと仲良くしていたリックがひょっこり起き上がった。
「うー・・・無事だと思う・・・」
「応援は呼んだけど、この場をどうにかしなきゃいけないわよ。さっさと起きて」
「くっそいてぇ・・・」
「油断するからでしょ」
メイリーフはため息をつき、リックに手を差し出した。
研究所のハイテク装備の一つに、全身防弾がある。今回は至近距離から撃たれたので衝撃をいなしきれなかったのだ。メイリーフも冷やりとさせられたのだが、出血していなかったので無事であると気づいていた。
「おっ、守ってやったのにそんなこと言うー?」
リックはメイリーフの手を素直にとったが、頼ることなく自力で立ち上がった。――体重をかけられても、メイリーフではよろけるだけだろうが。
誰かが通報したのだろう、警察車両が到着した。中から警察官がぞろぞろと出てくる。テロリストさえ出入りする街の警察は、軍人並みの武装で物々しい。
ユースが前に出て、敬礼した。警察官も敬礼を返す。
「システム研究所管理維持室警備部特殊警備隊、ユース・アンノだ。我が研究所の客員技能者がテロリストに狙われたために迎撃した」
「ご苦労様です。被害は?」
「おかげさまで。周囲の方々にも、今のところ被害は聞いておりません」
他の警察官たちが散って、その場の封鎖と、テロリストたちの拘束を始めた。滞っていた人の流れがゆっくりと再開する。普段から治安の悪い街は、立ち直りが早い。
「あなたがメイリーフ?思った以上に小さいんですねぇ」
先ほど最後のテロリストを倒した女性隊員が近づいて来た。全体的に細いが胸はあって、しなやかで長身だ。出来る女性といった雰囲気漂うが、顔立ちが柔和なのでとっつきにくさがない。喋り方もふんわりとしている。それらが合いまった結果のにじみ出る色気が、メイリーフの癪に障る。
そもそもメイリーフの身長は平均値だ。ところが幼顔と、華奢な骨格のために小さいという評価が下る。
「一応お礼言っとくよ」
「どういたしまして」
含みのない、柔らかい声で返された。天然か計算か、判断に迷うところである。
「おい、俺には?」
リックが不満そうな顔でメイリーフを小突いた。
「なにが」
「お・れ・い!」
「ありがと」
煩いのでとりあえず礼を言う。ところが、それでは物足りなかったらしい。
「感謝が足りてねぇ!」
頭を抱き寄せられ、髪をぐしゃぐしゃにされた。
「ああああっ!うっとうしい!やめろ!脳筋!」
メイリーフは必至でリックの身体を押し返すが、びくともしない。
「リーック!仕事中だ、後でやれ!」
ユースが怒鳴る。
リックは口を尖らせ、メイリーフを解放する。その様子に女性隊員がくすりと笑った。
「メイリーフ。要請通りあなたをカダロイ基地に保護します。間もなく、応援が到着いたしましたらご案内します」
「はいはい、よろしく。――ああそうだ、ちょっと頼んでいい?」
「なんでしょう?」
「基地についたら最初にシャワー。次においしいごはん。この順番は譲らないからね」
女性隊員は目を丸くした。
「――と、こんな感じかな」
幼馴染たち――イーニアス、ヨハン、セイファの三人と、アンドロイドであるユニ――を前に、メイリーフは先の出来事を語り終えた。
三人と一体の反応はさまざまである。
「メイリーフは危ないことをし過ぎだよ」
イーニアスは情けない顔になってそんなことを言う。温かい研究室の中で好き勝手に研究している甘ちゃんには想像もできない世界なのだろう。
「私はニアスが包丁持つほうが危険だと思うの」
ユニが皮肉か天然かわからないような発言をする。
「というか、そもそもアジトをどうやって抜け出したんだ。ざっくりしすぎてよくわかんなかったぞ」
これは車いすに座るヨハンの発言だ。――彼はひと月ほど前に服毒し自殺を図り、一命をとりとめた。長かったベッド生活のせいで体力が落ちたので長時間活動できないのだが、順調に回復している。
「隙を狙って監視の人間張り倒して武器と車と水奪って逃げたんだよ。あ、車は二台もらっちゃったかな。細工して、別の方向に走らせてかく乱を狙ったけど。――それくらいだね、それ以上どう言えって?」
「普通そこが一番難しいんだよ」
「まったく参考にできないね」
イーニアスとヨハンは肩をすくめた。
「それよりもメイリー、お前、なんでそんなに掏りが上手いんだよ」
そう言いながら現れたのは、湯気のたつ料理を持ったセイファである。非常にあきれた表情でメイリーフを見遣り、料理を三人と一体が待つテーブルの上に置いた。
「おおっすげぇ」
大皿に乗っているのは、鶏を一匹丸ごと使ったローストチキンだ。
さらに無発酵パンに、蒸された温野菜、スープが並べられた。
「掏りの手口知らないと、掏りは防げないから。アーロウの首都歩いたらわかると思うよ」
「理屈知ってんのと実践できるかはまた別な気がするけど。――まだ手つけないでよ。ユースも来るから」
ここはイスヴィラ、ウルダン基地の中にある、研究者用のアパートだ。現在セイファはその一部屋を借りている。
メイリーフもここから遠くない場所に似たようなアパートを借りているが、食事時は必ずこのセイファの部屋にたかりに来る。
研究所内では重要な地位にあるイーニアスはもっと内部に住んでいて、ヨハンはいまだに医務室生活をしている。メイリーフがセイファに食べさせてもらっている話をしたところ、二人が自分たちにも作れと言い出し、この集まりが開催された。
間もなく部屋の呼び鈴が鳴らされ、セイファが迎えに出た。
「おおおおおっマジすげぇ!セイファマジすげぇ!」
ユースが入ってくるなり頭の悪そうな感想を言っているが、これでもエリート部署に所属している。
「ヨハン、調子はどうだ」
「おかげさまで」
「イーニアス、サボりか」
「昨日徹夜したからいいんですよ」
イーニアスはのらりくらりと応える。
「とりあえず座って。揃ったし、食べよう」
セイファは器用に鶏を切り分け、それぞれの皿に置く。
「――ユース、せっかくなので乾杯を」
「俺に音頭取れ?うーん、そういうの苦手なんだけど。――じゃ、みんな無事だったことを祝って!」
水の入ったグラスが打ち鳴らされる。
――メイリーフとセイファは飲む趣味がなく、イーニアスは下戸、ヨハンは体調不良ということで、酒は出されていない。ユースからしたら物足りないだろうが、休みの日でも出動要請が来る部署だから飲まない方が彼のためだ。
無発酵パンに野菜や切った肉を挟んで食べる。このスタイルはメイリーフの出身地域のものだ。
メイリーフを見ると心底嫌そうな顔をし、ひとしきり文句を言うセイファだが、なんだかんだでこうして合わせてくれる。
メイリーフからしてもセイファは気持ちよく友人だと言える相手ではないが、けっこう好きだ。
「おいしー!」
「さすが病院食とは違う」
「鶏皮ぱりぱりだねー」
「セイファ!嫁になれ!」
「何馬鹿なこと言ってんですか。もうちょっとマメになればすぐ結婚できますよ」
「まめー?無理無理、忙しくてやってらんねぇ」
「じゃあ職場恋愛でもしたらどうです?」
「おいおい、同じ部署の女なんて女じゃねぇよ・・・あれは背中を預ける仲間なんだよ・・・」
「背中を預けて戦える奥さん、いいじゃないですか」
「なんか違うの」
他愛のない話をしながら料理を頬張る。
食が細っていたヨハンが食べているので、メイリーフはほっとする。
食が細ったことなどないユースは豪快に食べている。
イーニアスが嫌いな野菜を避けているのを見つけて、セイファとユニが注意する。
(ああ、いいなぁ)
食べれば心が満たされる。
「ところでユース、よく休みが取れましたね」
ヨハンが何気なく言う。
それはメイリーフも思ったことだ。特殊警備隊はもっとも人員の足りていない部署である。
「何言ってんだ。仕事中だよ仕事中。イーニアスと一緒にすんなって」
何を当然のことを、とユースは主張する。
それを聞いていた四人と一体は首を傾げた。
「おまえら厄介なのが集まって変なことしないか見張りってやつだよ!こういうこと言いたかねぇけど、お前らちょっとは自重しろよ。問題行動を起こした自覚持てっての」
――彼らが厄介な立場になったのは、そもそもイーニアスがマルティバース・システムにアクセスできる人間を限定してしまったからだ。
ヨハンはテロ組織と取引してサイバーテロのきっかけを作った。メイリーフは勝手に出ていってテロ組織に拉致され、研究所に助けを求めている。セイファもメイリーフと似たようなもので、拉致された挙句に、特殊警備隊をイスヴィラとの協定範囲外にまで出動させる超法規的措置で救出された。
ヨハンの顔に影が差す。
セイファがあからさまに落ち込む。
だが一方で、イーニアスはけろりとしていた。この男はマルティを取り上げた研究所が諸悪の根源であると心の底から信じているので罪悪感がないのだ。
メイリーフは小鼻を膨らませた。
「ユース。仕事とうちら、どっちが大切?」
なにかシチュエーションが違うようなセリフをぶつけると、ユースは微妙な空気に気づいた。
「――はいはい、おまえらだよ。仕事ってのは名目。こうでも言わなきゃ、同僚に恨まれるだろ?」
きっとメイリーフらを監視しているのも本当。けれどユースの本音は今彼が語った通りのはずだ。
「ユース」
「なんだ」
「助けてくれてありがと。イジェの時も、その前もずっと、うちらのこと助けてくれてありがと」
さすがに少し照れくさくて、はにかみながら礼を言う。
ユースも大いに照れて、そして得意げな顔になった。
「まあ、いつでも俺を頼れ!」
たぶんこれだから結婚できないのだ。誰に対しても「いい人」だから。
セイファが安堵して表情を緩めた。
「デザート、持ってきますね」
「おー、そんなもんまで作ってたのか!」
「さすがだよね。私も結婚するなら同業者よりも家庭を守る人の方がいいなぁ」
イーニアスがしみじみ言うので、メイリーフとヨハンはそろって驚いた。
「てっきり2.5次元がいいのかと・・・」
「いや妄想だろうから、2.5で合ってるよ。現実はこいつにはハードすぎる」
「二人とも何言ってるの?」
ユニが無垢な顔で聞いてくる。
道は随分前に分かれたはずだった。メイリーフにとって、学習室で過ごした日々はそれなりに楽しかったが、自分のやりたいことを犠牲にするほど過去にとらわれてやるつもりはない。友人とは思っても、親友とまでは思えない。
けれどこの瞬間は確かに楽しくて、心地いい。
間もなくここを出ていくつもりだが、それでももうしばらくこれに浸るのも悪くないと思うのだ。




