妖語り
昔、人はいろんな現象におびえていた。
そんな目に見えない現象にある男が絵を描き姿を与えた。こうして妖怪が生まれ、人はそんな妖怪がこないよう気をつけるようになり、姿がわかることでおびえない人もでてきた。
時がたち、人から恐怖心が消えると妖怪の存在は薄くなり日に日に忘れられ妖怪は再び姿をなくしていった。そこに妖怪の絵描き屋と名乗る二人の男女があらわれ彼らは次々と妖怪に姿を与え、再び忘れられないよう描いた絵とその妖怪の記憶を本にしてある神社に祭った。
その本を妖語り(あやかしがたり)と言った。
「さあ、今日も始めるぞ、どんな話か楽しみだな」
いきなり話はじめたのはこの物語の主人公、狐神
「狐神くん、待ってよ。私とコンはまだ見る準備できてないもん」
そう言ったのはヒロインのかほ。コンというのは白狐で稲荷神社に祭られている神様だ。狐神とは特に仲がよく、妖怪にも詳しい
「我は準備できた」
コンは言った。
二人の準備ができたのを確認すると狐神は妖語りのページを開いた。
「おい、このテストの回答を教えろ」
少年は小声で言うとポケットから小さな竹を取り出した。すると竹から狐が出てきた。
「きゅきゅきゅー」
鳴き声とともに、テストの回答用紙が現れる。
「よくやった、管狐、これで百点はもらった」
この妖怪の名は管狐管の中に好んで住んでおり、持ち主の願いをなんでもかなえてくれる。
「おい、あの食べもん俺にも食わせろ」「あのゲームほしいんだけど」「管狐、宿題の回答教えろ」
少年はなんでも管狐に頼んだ。管狐に言えばなんでも叶う、手に入らないものはないそう思っていたある日、少年に好きな人ができた。少年は管狐に頼み服や鞄などを出させプレゼントしたが思うようにはいかなかった。
そうして少年は管狐にある命令をした
「管狐、俺はあの子がほしい。どんな方法でもいい。あの子を俺にくれ」
そういった少年は欲にまみれていた。少年はまさに悪そのものだった
管狐はそんな少年の欲望を食べて育っていていついか目は真っ赤に染まっていた。
「ぐるるるる・・・」
「どうした!早くするんだ!!」
その言葉に管狐は怒り、みるみる姿は大きくなり、爪は鋭くとがった。
「お、おい・・・はむかう気か?何をいまさら、く、くるなー!!?」
その言葉と同時に管狐は少年に襲い掛かった。
「・・・狐神くん・・・この話・・・」
静かにそして悲しそうな声でかほは口を開く。
「管狐は確かになんでも叶えてくれるが本来狐は人になつかぬもの、持ち主の心にけがされどうして願いをかなえているのかわからなくなってしまったのであろうな」
コンの話に今度は狐神が口を開く
「こいつはきっと人の願いを叶えるんじゃなく困った人を助けたかったんだろうな。それがいつしか人の手によって願いをかなえるものに変わってしまった・・・願いは想い、くろうして叶えるから嬉しいし苦労した記憶や毎日が大切な宝になるんだ・・・」
「うん!管狐に願わなくっても自分で叶えるから楽しいんだよね!」
かほは笑顔をつくって二人に笑ってみせた
「そうだな。そろそろやるか」
そういうと狐神はポケットからブレスレットを取出し左腕にはめた
「この話・・・見届けたり・・・」
そういうとブレスレットが光り妖語りのページはとじられた
「この話が何処かの世界のあなたに読み届けられますように」
そして数日
「今日も始まる妖語り!ねえねえ狐神くん今日はどんな話かな?」
かほはそう言って狐神の手を引っ張り妖語りの前に半ば強引に連れてきた。
「おいおい、ちょっとはやくないか?始めるの」
「いいからいいから」
そんな二人の会話をほほえましく見守るコン
「まあいいではないか。妖語り始まりだ」
「あー!!私が言いたかったのにい、コンのばかあ」
そんなこんなで妖語りのはじまりです
寒さの中、歩いているのは一人の少女
「寒いなあ、もうすぐ冬だよー」
そういってマフラーをした少女
学校の帰り道だった。街並みを歩き帰り道に肉まんを買い食べ歩いていると一人の少年が目にとまった。
「こんなに寒いのにあの人ジャンバーもマフラーもしないで大丈夫かなあ」
少女は心配に思いきがつくと声をかけていた。
「あの、大丈夫ですか?寒くない?」
「・・・」
声をかけられた少年はただ笑ってみせた。そんな笑顔に少女はドキドキした。
「あ、あの、これ、寒いですしよかったらどうぞ。」
そういうと少女は自分のマフラーをとって少年の首にかけた。
少年は不思議そうにマフラーを見つめた後また少女に笑ってみせた。
「・・・・・」
「えっ?」
少年は口を開き何かを言ったように感じたが聞き取れなかった。
気がつくと今まで目の前にいた少年の姿はなかった。
「あれ、あの人は・・・名前・・聞けなかった・・・あ、雪だ」
空からは雪がゆっくりと優しく降りそそいでいた。
「あ、家に帰らないと、お母さんが心配しちゃう・・・あ・・」
少女が歩きはじめようとしたとき地面に霜が張り付いているのに気が付いた
そこには凍った霜で文字が書かれていた
「・・・ありがとう・・・」
それは少年の感謝の言葉だった。
「うん。また会おうね。妖精さん」
「わあ、いいなあいいなあ、私もこんな恋がしたい。ね、狐神くん」
「なにいってんだかほ、この子が恋してるかはわからないだろ?」
狐神は言うがかほはそんな話をきいちゃいなかった。
「ねえコン、今のはどんな妖怪なの?」
かほの言葉にコンは口を開く
「おそらくジャックフロスト、冬の訪れを知らせる海外の妖怪だな。本来はイタズラ好きなのだが・・」
「ほへー、なんかよかった。今日はいい話で」
そういうとかほは笑顔だ
「そうだな、妖怪のすべてが悪いわけじゃないってことさ、よし、そろそろ・・・」
「あっ、待って!今日は私がやる!」
そういうとかほはポケットからブレスレットを取出し左腕にはめた。
「かほ、大丈夫か?」
心配そうに狐神はかほをみる
「大丈夫!いいからみてて」
かほのブレスレットが光りだす。
「この話・・・見届けました。」
こうして妖語りの本は閉じられた。
「この話がどこかの世界にいるあなたに届くといいな」
END